大人の事情

紗里菜

大人の事情

 陽だまりの中涼しい顔して街をゆく。


 数年先に日傘をささなかった後悔からしみができても構わないんだってやけをおこしてひたすら歩いてるだけだ。


 とりあえず大人なんだか子供なんだか自分でもわからない。


 そもそもあいつとは男友達でしかないのに動じている自分がわからない。


 すべてのことのおこりは退社後に同期からきいたあいつの有休の本当の理由。


 たとえるならばトルコとか呼ばれている風俗で遊んでいるってそんな話。


 「そうなんだぁっ」て普通にかえしたつもりだったのに、「ふざけんなっ」ていってやればって言われてしまった。


 「そんなこと言える立場じゃない」って夏の暑さのせいじゃない乾いた声で答えていたけど、それが正しいって何度考えても思う。


今更ぶりっ子ぶってわからないふりも男としてのあいつの性を否定するのも私にはできない。


ましてや私がかわりになんて冗談でも考えたくもないし。


 とりあえずあいつが理想としている安室奈美恵似の女性と新宿辺りでデートしてそれから大人の遊びをしている姿が浮かぶ妄想も夏の暑さでもっと朦朧として考えなくなればいい。


 今日は夏至。もっとも夜が短いのが救いかも知れないかもってあいつのことはなんとも思ってないし、大人の事情と涼しい顔してやりすごしたい。


 今日から夏が始まるから夏の恋に憧れて割り切れないだけだって自分にいいきかせたい。


たぶん、子供のようにあいつが楽しんでいるのが許せないだけでこれは恋じゃない。


やっぱり、邪魔にならない日陰で日傘をだしたついでに深呼吸して、大人の事情を自分に言い聞かせよう。


あいつのことなんてどうだっていい。



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大人の事情 紗里菜 @sarina03

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