異世界来たのに、強くなれない?

「………、……きて、起きてください!!」

「うぅ…うるさいなぁ」


 身体を揺さぶって誰が起こそうとしてくる。


「あと、10分……いや、5分だけでも……」

「はぁ、死にたいならそのままでもいい……」


 いいです。と言おうとした所で声の主は、はっと息を飲む。そして、すぐ側から……


「ガオオォォォォ!!!!!」


 けたたましく獣の咆哮ほうこうが上がった。


 俺はその咆哮で強制的に意識を覚醒させられる。飛び起き周りの様子を見渡そうとする。そして、最初に目に飛び込んで来たのは動物や獣ではなく、鋭く研ぎ澄まされた獣の爪だった。


「ぐはっ…………」


 俺はお腹に激しい痛みもらいながら後方に飛ばされ背中を硬い何かにぶつけ、覚醒したばかりの意識をなくした。しかし、それは獣の攻撃ではなく、人間による蹴りをもらったということはもう一度目覚めてから初めて知った。




「ねぇ、この人ほんとに生きてるの?」

「だ、大丈夫でしょ。あんなんで死ぬはずないって……多分」

「多分ってないによ!?ついにお姉ちゃんは人殺しに!?」


 人の枕元で姉妹喧嘩か??喧嘩をするのも見るのも嫌いだ。だから、今すぐ辞めて欲しい。それに……


「勝手に、俺を死んだことにしないでくれ」

「「あ、生きてた」」


 なんだよ、その反応は。もう、俺が助かる事を諦めてたみたいなじゃないか?

 目を開けて、そんなツッコミを心中でする。そばにいたのは、俺と同い年くらいの女の子が2人。1人は、随分と控えめのお胸。もう1人は大きいとは言えないし、小さいとも言えない、何とも言えない、サイズのものお持ちのようで………ってなにを考えていいるんだ俺は……

 ま、まぁ、いいや。そんな事よりも


「ここはどこにだ?」


 見たことない場所だった、いや、当たり前か。ここは異世界なんだろうからな。ログハウスのような、全体的に木を使っている建物だ。釘や鉄の類のものは使っていなさそうに見える。


「ここは、私たちが暮らしてる小さな集落よ。そして、この部屋は私の部屋。この集落に外から人が来るなんて今までなかったから、客室や宿ってないのよね」

「なるほど、このベットはあんたのものか、通りでいい匂いがするわけだな」

「嗅ぐなへんたい」


 ジト目で睨まれてしまった。まぁ、今のは俺が悪いから文句は言えないな。


「なぁ、この集落ってどんなところなんだ?」

「そうね、簡単に言ったら限界集落ってやつね」


 そんな、不穏な言葉から始まった説明によると、


「もともと人の少ない所だったのよ、でも今は、それ以上に人が減ってるわ……」


 とても寂しそうな顔で、そう語る。

 昔、あるいは少し前に、何か大切なものを失くしてしまったという事が容易に想像出来てしまう。そんな表情だった。

 しかし、すぐにもとの表情に戻り続きを始める。


「最近は、魔物達が活発で凶暴になってきてね。ここもいつまで持つかどうか……、半径約200kmには、人の住んでいるようものは見つからなかった、それ以上は行った事ないから分からない。私達は、逃げる事が出来ない。正確には、逃げる場所がないの」


 半径約200km圏内に他の集落がないなんて……

 一体どこからきて、どうやってここに集落を建てたんだ?


「昔の事は分からないのよ、なんにも記録がない、それにお年寄りの人達ですら知らないって言ってる」


 昔の事は分からないか……、いや、それ以上にここはすぐに崩壊してもおかしくない状況にある。俺はあの天使ちゃんと約束した。


 だから、この集落は俺が何とかしてみせる。



「他にか聞きたい事はある?ないなら、私から質問したいんだけど、あんなどこから来たの?」


 聞かれると思ったよ。何せ近くに人は居ないと言っていた、じゃあ俺はどこから来たのか知りたいだろうな。

 でも、悪いが……


「すまない、俺もよく分かってない」

「はぁ?どう言うこと??あんた、記憶喪失なの??それともそこら辺の土から生えて来たとかじゃないよね???」

「俺は植物ではないんだが?」


 天使ちゃんと別れてからの記憶がないんだよなぁ、最後の記憶は、青白い光に包まれて眩しい、という事だけだ。

 まあでも、目的の集落にはたどり着いてる訳だし、あまり気にすることでもないのかもな。


「はぁ、まぁなんでもいいから、男なんだしモンスターと戦える力くらいはもっててくれたら助かるけど……」

「あまり俺に期待しない方がいいぞ?自分でいうのもなんだけど、体力の自信の無さだけは自信があるからな!」

「そんなとこで自信持たれても困るんだけど」


 ふふっ、なんて可愛く笑い出した。

 なんか、笑い方が天使ちゃんに似てるな。女の子ってみんなこんな感じなのかな?

 まぁ、可愛いからなんでもよしとしておこう。


「ねぇ、あんたのステータス見せてよ」


 ステータスか、確か、転生者や転送者そして送者の俺はなにかしらの補正がかかるとか言ってたな。つまり、この世界で俺は強者になれるということだ、多分。


「いいけど、ステータスってどうやって見るんだ??」

「それは、私が調べる事が出来ます……」


 と、さっきからベットの脇で話をじっと聞いていたもう一人の子が言った。


「じゃあ、お願いしてもいいかな?」

「は、はい!がんばりすッ!!」


 めっちゃ緊張してるみたいなだけど大丈夫かな?

 返事をした女の子は俺の手を取って、目を瞑る。なんだか祈っているみたいだと思った。


「……そう言えば自己紹介してなかったな、俺は永田一希かずき


 一希でいいよ。と付け加えておいた。


「私は、宮倉玲みやくられい。いま一希の手を握ってるのが妹のりんよ。私達は双子で、私がお姉ちゃんの方ね」


 なるほど、それで顔立ちや髪色がにてるのか。

 どっちも綺麗な髪色をしている。

 姉の玲は燃えるような赤色のショートカット、妹の鈴は赤と言うよりはもっと濃い色、緋色と表現した方がいいのかな、ロングヘアを白いリボンでサイドにまとめている。


 名前からしたら日本人とほとんど同じなのに、見た目が日本人離れしている。

 というか異世界なのに、日本語通用してる事に今更気づいた……


「まさか、ここが日本なんてことないよな…」

「何言ってるの?ここは日本よ」


 独り言だったが聞かれてしまったらしい。

 しかし、ここは日本なのか…そうか日本か……日本!?!?

 どういう事だ?異世界じゃないのか……

 いや、確かあの天使ちゃんはこう言っていたかも、


「その世界は君が今までいた世界をも模して作られた世界なんだよ」


 なら、日本があっても不思議では無いのか。

 まぁ、言葉を学ぶ必要がないのは助かるがな。



 しばらくして、と言っても数分もなかったが。


「ステータス、出ました」


 と、鈴が手を離して言った。

 ついに俺のステータスが!!送者の俺はステータスに、あるいはスキルに特殊なものがあるはずだ。きっとみんなも驚くようなものが!!


「えーと……」


 鈴が告げたステータスこうだった。


 ────────────────────

 レベル |1

 役職 │無職(ニート)

 持久力 │10

 筋力 │20

 技量 │25

 敏捷値 │50

 魔力 │30

 信仰力 |30

 防御力 |0


 スキル |リジェネ(HP&MP)

 スペル |

 固有スキル|蛇

 ────────────────────


「持久力以外はレベル1とは思えないステータスですけど、防御力0は………可哀想に」


 これじゃあ、そこらの犬にでも簡単にやられるぞ。と玲は笑わっていた。


「俺、そんな弱いのかよ……」


(´・ω・`)

 俺はまさにしょぼんと言いたくなるような心情だった

 なぁ、天使ちゃん俺強いんじゃないの??


「弱いなんて事はないと思いますよ。魔力と信仰力が高いので色々なスペルが使えます。30もあれば威力も期待出来ます!」

「でも、俺スペル持ってない……」


 適正があっても知らないなら意味がない、俺はほんとに弱いのかもしれない……


「ま、まぁ、私も少しだけ魔法が使えますから、教えてあげます。だから落ち込まないでください」

「…ありがとう」


 鈴は優しいな、それに比べて玲は、さっきからずっと俺をバカなして笑ってばかりだ。


「なぁ、固有スキルの『蛇』ってなんだ?」


 これは謎だな、ゲームをやっててもこんなの見た事ないから想像もつかない。それに強そうには思えない。


「それですね」

「何か知ってるのか?」


 この反応は、なにかを知ってるようだ。真剣な顔で考えている。

 やがて顔をあげて、


「全く心当たりありませんね」


 なんて、笑顔で言った。


「いや、知らんのかい!」


 今の間はなんだったんだよ、渾身のボケでも考えていたのか?そうだとしたら、酷いものを見たな。



「ま、レベルが上がればステータスも上がるだろうから、今は鍛えてみるのもいいかもね」


 レベル上げか、ゲームをしてる時もよくやってたな、こういうのは嫌いじゃないから頑張ったら俺もそこそこのステータスを得られるかもしれない。


「そうか、じゃあ俺はレベル上げるために頑張るかぁ」

「そうしなさい。今の君は、この集落で一番レベル低いしね」


 確か最低で、8歳の子がレベル10だっかな。玲はそう付け加えて、顔を逸らした。

 8歳児よりしたなのかよ俺は!?





 泣きそうだ。

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異世界からの贈物 緋桜 @Red_Tearstone

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