第4話 パーティメンバー


 一旦深呼吸をして話し始めた。


「俺もつい最近時を戻せる魔法や重力を操る魔法を使えることを知りました」

「え? 時空魔法ってこと?」


 エルさんの問いに頷くと、信じられないような顔でこちらを見てきた。


「じゃあスライムが消えたのってもしかして......」

「はい。エルさんの思っている通りであっていると思います。存在自体を消したってことです」


 俺が答えると、少し怯えた雰囲気を出していた。そりゃあ、スライムの存在を消したって聞いたら誰でも怖いと思う。なんせ存在していたものを消滅させる魔法を持っているのだから。


「じゃあ私も消せるってこと?」

「それは無理だと思いますよ」

「そ、そっか」


 するとホッとした顔に戻った。まあここで無理だと断言したほうが、この魔法を信頼してもらえると思う。でもここで断言してしまうと、なぜ知っているのかって思われてしまう。

 

 この話が続いたらボロを出してしまう恐れがある。そうなったら転生だとバレてしまう。それだけは絶対にダメだ。この世界で転生した人が居るとは限らない。それなのにこんな場所でバレたら、何をされるかわからない。それはエルさんでなくてもだ。


「なのでそこはあまり心配していただかなくて大丈夫です」

「うん、でもヒーラーがこんな魔法を使えるとは思いもしなかったよ」

 

 まあそうだろうな。逆にヒーラーが時空魔法を使えることを知っていれば、最弱職業なんて言われているわけがない。


「そうですね。そこで一つお願いがあるのですが、いいですか?」

「ん? なに?」

「このことは誰にも言わないでほしいです」

「うん。わかってる」


 するとあっさり了承してくれて驚いた。なんせこんなことを知ったら誰だって言いたくなるもんだと思う。だから今からどうやって口止めするか考えていたが、こんな簡単に了承してくれて、俺の身からしたら本当に助かる。


「それに誰にも言う人なんていないし」

「え?」


(誰にも言う人が居ない?)


「私、誰も知り合いがいないんだよね。だから一人で冒険しているんだ」

「.......。そうなんですね」


  それを聞いて俺は納得する。一人で冒険するのは自殺行為だけど、エルさんの実力を見る限り一人で冒険するのも納得できる。


「うん。だからルイくんが一人で戦っているところを見て、つい助けちゃって」

「あ~。そう言うことですか」

「それでなんだけど、もしよかったら一緒にパーティ組まない?」


 いきなりパーティを誘われてしまったため、呆然としてしまった。なんせ一人で冒険することしか考えていなかったし、エルさんも一人で冒険しているって言っていた以上、誘うとは思われなかった。


「やっぱダメだよね......。いきなり誘ってごめんね」


 そう言ってこの場を去っていこうとした。


「いいですよ」

「え?」


 すると先ほどとは一変して、ものすごく驚いた顔をしていた。


「だから良いですよ」

「な、なんで?」


 なんでって......。そんなの一緒に組みたいからに決まっているじゃん。周りがヒーラーって聞いたら誰もが断ると思っていたから、一人で冒険すると覚悟を決めていた。でもヒーラーと聞いて、尚も一緒に組みたいと言ってくれている人が居るなら組みたいと思うのは当然だと思う。


「逆になんで断るのですか」

「だって、あったばかりだし」

「そんなの関係ないですよ。逆にお願いします。一緒にパーティを組んでください」


 俺がそう言うと、エルさんは笑顔になりながら言った。


「はい。喜んで!」


 その後、一緒にギルドに戻って今回のクエスト報告をする。それと一緒にエルさんとパーティを組むことも伝えるとリリーさんが驚いた顔でこちらを見てきた。そしてリリーさんが胸を撫で下ろしながら


「良かったです。本当によかった」

「はい。本当によかったです」


 リリーさんが書類をもってきてくれて、正式にパーティ登録をしようとしたところで、ギルドにいる一人の男性に話しかけられる。


「こんな男より、俺とパーティを組まないか?」

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追放された最弱ヒーラーの成り上がり冒険録~ゲーム知識を利用して、世界最強のヒーラーになる!誰が最弱ヒーラーだって? 実は時空魔法を使えるって知っていた? 煙雨 @dai-612

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