第3話 時空魔法

「ルイさんはこんな場所で何をしていたのですか?」

「あ、スライム討伐をしようと思っていまして......」


 事実を言おうか迷ったが、結局は冒険者だということをバレてしまうと思い、本当のことを話した。すると案の定、申し訳なさそうな顔をして謝ってくる。


「本当にごめんなさい」

「スライムなんて探せばどこにでもいると思いますので気にしないでください」


 エルさんはホッとした顔をして、すぐさま表情を変えて言った。


「では、スライムを手伝わせてください」

「え、本当に大丈夫ですよ! そこまで気を使ってもらわなくて」


 エルさんが故意的に嫌がらせをしてきたわけではないのは、話していてわかる。それに冒険者が一人で戦っているなんて珍しい。だから俺を助けてくれたんだと思う。それなのに手伝ってもらうなんて申し訳ない。


「ですが.......」


 断りを入れたら、先程よりシュンとした顔でこちらを見てきた。


(こんな顔をされたら困るけど......)


 俺的には手伝ってもらうなんておこがましいが、俺の考えとエルさんの考えは違う。もしここで断ってしまうと、エルさんに罪悪感が残ってしまうかもしれない。だったら今回限りで手伝ってもらえばいいかと思い答える。


「でしたら、お願いしてもいいですか?」

「はい!」


 すると先ほどなんて思わせないほど笑顔になって答えた。


「では行きましょうか!」


 俺はそう言って、スライムを探しに森林の探索を始める。俺の後ろをついてくるようにエルさんも歩き、数分が経ったところで話しかけてきた。


「ルイさんはどんな職業なんですか?」

「ヒーラーですよ」


 別に隠すつもりもなかったので、事実を答えた。すると少し哀れみの顔でこちらを見てきて言う。


「そうですか......。それは何と言いますか。でもヒーラーならなんで冒険者になっているのですか? 言葉が悪くなってしまいますが、冒険者には向かない職業だと思うのですが」

「冒険者になりたいと思ったからですよ。向き不向きはありますが、俺はヒーラーが冒険者には向かないとは思いませんので」


 するとエルさんは頭を下げて謝ってきた。


「そうですよね。本当にごめんなさい。私の固定概念だったかもしれません」

「いいですよ。世間から見たらヒーラーは最弱職業ですからね」


 誰だってヒーラーって聞いたら、冒険者には向かないと言うと思う。なんせ最弱職業であるって認知されているから。でもエルさんは謝ってくれた。それはエルさんが俺ときちんと向き合ってくれて答えてくれたってことだ。だったら俺もその誠意に応えなくてはいけないと思った。


 そこからお互い無言状態が続きながらスライムを探した。案外時間がかかること無く、数体生息しているスライムを見つけることができたので、エルさんに言う。


「では、俺が危険な状況になったら助けてもらってもよろしいですか?」

「はい。分かりました」


 時空魔法で討伐することもできるが、現状仲間がいない以上一人で冒険者をやらなくてはいけない。今後のことを考えながらスライム討伐を始めた。


 まず一匹目のスライムは、スライムの核を切り裂いて倒し、それを見たスライムがこちらに攻撃を仕掛けて来た時、俺は時空魔法でスライムを消滅させた。


(よかった)


 実際やってみるまで、不安であったけど使うことができた。そこから同じ順序で全てのスライムを討伐した。


 俺がエルさんのところに戻ると驚いた顔でこちらを見てきた。そしていきなり肩を掴まれて質問してくる。


「スライムが消えたのはどういうことですか!」


(そう言えば、エルさんはヒーラーが時空魔法を使えること知らないんだった)


 昨日前世の知識を取り戻したばかりのため、時空魔法を使えるのを知っているかと思っていた。


「えっと、まずは落ち着いてください。きちんと説明しますから」


 俺が言うのと同時に、エルさんが一旦距離を取ってくれる。


 俺のミスとはいえ、時空魔法を見られてしまった。本当なら時空魔法のことは説明するべきではないと思う。


 なんせまだこの世界で、ヒーラーが時空魔法を使えるなんて知られていないのだから。でも見られてしまった以上、後に戻ることもできないし、エルさんが誰かに言いふらすとも思えなかったので事実を話し始めた。

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