〈他家紹介10〉〈宗派紹介10〉

〈他家紹介10〉

女直

 女真とも。10世紀ころから名前が見られるツングース系民族。17世紀になると満洲と改称する。元々満洲の松花江付近(現在のハルビン市周辺など満洲北部)からシベリア南西部スタノヴォイ山脈にかけて分布していたとされる。

 女直と呼ばれる前には粛慎(しゅくしん:みしはせと同一かは不明)、扶余(ふよ)、挹婁(ゆうろう:扶余から独立した。人尿洗顔の習俗があった)、勿吉(もっきつ:挹婁と同じく人尿洗顔の習俗があった)、靺鞨(まっかつ:挹婁・勿吉の末裔で人尿洗顔の習俗があった)という部族がいたらしい。その中の黒水靺鞨という一派が女直と自称した。

 その女直は渤海には従わず独立した部族であったが、契丹(遼)や高麗に朝貢していた。契丹の支配を受けて一部の女直が内陸部に移され、熟女真と称されるようになる。なお残った女直は生女真と呼ばれた。

 日本に関係する歴史としては刀伊の入寇の刀伊が女真族の一派とされる。

 10世紀ころに渤海が滅亡し、12世紀になると完顔氏(わんぎゃん氏:女真族完顔部部族長の家系)から阿骨打(あくだ)が現れ、女直の統一を成し遂げた後に契丹(遼)を滅ぼし、北宋を打倒し、燕京(北京)に首都を置いて繁栄するが、モンゴルに滅ぼされ、元に組み込まれ、女直は部族社会に後退した。

 元以降ははじめ遼東半島付近の建州女直と松花江付近の海西女直に、万暦帝時代に沿海州周辺の野人女直の3群に大別され、さらに部族ごとに分割統治されていた。明の時代になると各部族長に官位と印璽を与えることで間接統治を行い、各部族間で争わせていた。

 一方で高麗から変わった朝鮮は鴨緑江や豆満江流域の女直居住域に進出し、咸鏡道と平安道に組み込んだ。

 秀吉による朝鮮征伐により、女直に対する明の統制が緩むと建州女真のヌルハチが台頭し、建州・海西・野人の女直を統一する。ヌルハチの息子、ホンタイジは女直から満洲に改称し国号も金ではなく清と称した。また朝鮮に臣従を命じたが拒否されたため朝鮮を攻め属国とする。1644年には万里の長城を超えて明に侵入し、李自成の乱で滅びた明に変わって東アジアの巨人、大清帝国となる。


〈宗派紹介10〉

浄土宗

 鎌倉仏教の一つ。法然を宗祖とする一派。本尊は阿弥陀如来で専修念仏を中心とする教義で浄土専念宗とも。

 承安5年(1175年)、法然が山門を降りて東山で荒れ果てていた安養寺に吉水草庵を建てて浄土思想を広め始めた。多数の弟子が集まったものの、これは当然ながら山門(天台宗)や興福寺からすると気分の悪いことで、山門並びに興福寺から念仏宗への批判と念仏の禁止を朝廷に訴えた。

 朝廷は当初、朝廷内にも浄土宗の信者がいたため静観していたが、興福寺の坊主らはそれに反発し、摂関家に圧力をかけ、法然は譲歩して弟子の行空を破門としたので、興福寺も一旦は溜飲を下げた。しかし一月あまりで興福寺は再び浄土宗を禁止にするよう訴えるも、延暦寺ですら特に動きはなかったので有耶無耶に処理された。

 しかしその後、後鳥羽上皇が熊野御行している際に、法然門下の住蓮と安楽が催した念仏集会に後鳥羽院の女官が密かに参加した。後鳥羽院不在の御所に住蓮と安楽が招き入れられ、そのまま御所に泊め、さらに女官がそのまま出家するなど見られた。

 帰洛した後鳥羽上皇がそのことをしると、主のいない間にそんな勝手なことをされたので当然の如く怒りを買うことになる。専修念仏は禁止になり、勝手に御所に泊まった住蓮と安楽は当然ながら死罪となる。監督不行き届きを理由に法然や親鸞等弟子7名も僧籍を剥奪されて流罪になる。法然は土佐へ、親鸞は越後に流されることになる、承元の法難ではあるが、宗教弾圧と言うよりは不手際を働いたものを慣例を無視して死罪としたもの。

 流罪となった法然はしかし、支持者である円証(九条兼実)の庇護により讃岐への流罪に変更され、入洛も許された法然は帰洛後二ヶ月で死亡する。

 法然の死後、15年後に今度は嘉禄の法難と呼ばれる危機を迎える。これは浄土宗が広がることを苦々しく思った山門が僧兵を繰り出して法然の墓荒らしをしようと画策。いち早く異変を察知した浄土宗は墓を掘り返して荼毘に付した。遺骨は知恩院などに分け与えられている。

 そして親鸞の浄土真宗が別れ、浄土宗も四つに分裂する。浄土宗はその後も細かく分裂、統合しながら戦国時代を抜け、江戸時代になると知恩院を第一の本山、増上寺を大本山とする白旗派は家康の手厚い保護を受ける。

 明治時代を迎えると廃仏毀釈を受けて浄土宗は浄土宗として統合し、その後西山派が再び分裂しており、現在は浄土宗、西山浄土宗、浄土宗西山禅林寺派、浄土宗西山深草派が並立している。

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