第百八十四話 城下の散策

鍋倉城 阿曽沼孫四郎


「う……ん、朝か」


「ん~、後5分~」


 びっくりして跳ね起きる。え、なんで雪が隣で寝ているんだ。酒を飲まされた後の記憶がない……なんか女神様に今後酒造を手伝ってくれるようなことを言われたようなきがする。ついでに二日酔い治してくれるとか言ってたが、なるほどスッキリだ。


「ん……」


 先程からほっぺたつんつんしてるけど一向に起きる気配がしない。しかし気持ちいいな。つんつんからほっぺさわさわに代わる。うんこれはずっと触っていられる。


「……ねえそろそろ起きていいかしら」


「いつから起きてた?」


「ツンツンし始めたところから」


 わりと最初じゃないか。まあ顔ツンツンしたら起きるよね普通。


「昨日は昨日で飲まされたと思ったら大の字になって寝ちゃうし。今朝はなんか寝ている間にいじられまくるし……はあ、もうお嫁に行けない」


「もう俺の奥さんじゃん」


「そうだった。っていつまで触っているつもり?」


「いやだった?」


「べつに……」


 しかしそろそろ朝の課業なので名残惜しいがほっぺサワサワはまた今度だ。


「あっ……」


「ん?どうした?」


「……なんでもないわ」


 ちょっと名残惜しそうな雪さんかわいいですね。


「そうそう、子作りに関してはある程度体力のつく十六になってからね」


「えー若様そんなに待てるの?」


「……待てるさ」


「間はなんなのかしらぁ?まあ私はいつでもOKだからね?」


 いや流石に数え七つに欲情はいくらなんでもありえないから。俺はペドじゃない。せめて高校生くらいの肉体になってくれないと。なんだか前世では二十歳前後が一番いいとか聞いたことあるけど、この時代であまり待たせるのも良くないからな。


「でも16ってなるとJKね。前世ではJK好きだった?」


「ノーコメントで」


「うひひ、いいわ。我慢できなくなったら言ってね」


 なんかもう尻に敷かれる未来が見えてますね。しかし今後側室などできると後継者問題が生じるわけだな。今後のことを考えれば家督相続の制度はきちんと作ったほうがいいかもしれないな。


 とりあえず頭をスッキリさせるために顔を洗って、敷き藁を替えたら朝駆けしてくるか。


「ねえ若様、どこいくの?」


「すこし白星で駆けてこようかと」


「ね、私も一緒していい?」


 ということで敷き藁を替え、刻んだ飼い葉を交換し、洗う。白星がスッキリしたところで袴姿に着替えてきた雪とともに跨る。


「ではどこに行きましょうか。お姫様?」


「うふふ、どこでもいいよ」


 どこでもいい、ってのが一番困るんだけどな。とりあえず遠野の市街をゆっくり歩いてその後横田城を往復するとしよう。


「だいぶ町ができてきたね」


「ああ。この大通りはまっすぐすぎるし道幅も広すぎると守綱叔父上には怒られたが、どうせこんなとこまで攻め入られる事態になればどうにもならん。それにこの突き当りには駅を設ける予定だからな」


 まだ蒸気機関はできていないが、原理はなんとか。俺の希望的観測によれば生きているうちには蒸気機関車も実用化できるだろう。


「そこの空き地はなににするの?」


 早瀬川の向こう、移転の進む畑中の街並みはがらんとし、一部で解体、そして縄をうって立ち入りを制限している。


「あれは酒蔵の予定地だ。まだ食う米や麦も事欠く状態だが、娯楽としてそして他所に売るための酒をそろそろ作っていかねばならない。紙だけでは金が足りん。」


 女神様にも期待されているからな。


「その時には雪にまた頼らないとな」


「ふふっ。しょうがないな~」


 そして白星を駆っていまは臨時の練兵場となっている横田城、そしてその脇にあるかつての浜田邸跡地に着く。


「何もなくなっちゃったね」


「さびしい?」


「ちょっとね」


 今の浜田邸は三の丸にあって、建材をそのまま使って移築しているがこの場所には思い出も多いからな。


「でも今のお城も好きよ。織豊様式ぽいし、それに若様もいるし」


 かわいいなこいつ。と思ったときには雪の顎を持って口づけしていた。


「ん……あは。こんな調子で16までホントに我慢できる?」


「……何とでもなるはずだ」


「浮気はだめよ?もちろん、商売女もね」


 側室が浮気になるかわからないけど気をつけないとな。売春宿は病気が怖いからはじめから使うつもりはない。多分大丈夫だ。

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