第百四十三話 女神様との再会
「ん?外が暗い。って!あれ?」
よく見ると見知った顔がある。
「女神様……。ということは俺は熱でも出しているのか?」
「久しぶりね。だいぶ大きくなったじゃない。うんうん、顔も体も少しごつくなってきて私好みじゃなくなったけど元気そうで何よりね。それと別にあんたは熱出してないわよ」
女神様の好みの顔だったらどうなってたのだろう。
「まあ、好みの顔でも私には権限がないから何もできないんだけどね」
俺の思考を読んだかのように、女神様が苦笑いしながらつぶやく。
「ところで熱も出てないのに、なぜ女神様とお会いできてるのでしょう?」
「それはねぇ、あんたが雪って子の手を握りながら寝たからよ」
なんで手を握ったくらいで会えるのだ?
「検知器が誤認してしまうようなのよね。おかげであんたの世界とこの空間が接続されたって訳」
検知器?なんだ、神様の世界には対象者を調べる機械でもあるのか?
「魂の波長を読み取るの。で、あんたが発熱したときの波長に少し近くなったから機械が誤認したってわけよ」
魂の波長?なんだ波のような現象なのか?
「ま、そんなことより折角久しぶりに会ったんだし何か聞いておきたいこととか、願い事とか無い?」
「んーそうだな。例えば雪に病気で死なない加護って着けて貰えるのか?」
「それは無理ね。私の権限を越えるわ」
にべもない。そもそもこの女神の権限ってのは何なんだろう。
「神世も世知辛いのよ。権限解放されるには転生者がなにか大きな功績を成し遂げないといけないの」
「閉伊郡の統一くらいでは無理か?」
「そうね。もう少しないと実績にならないわね」
どれくらいのことなら実績になるのだろう。お供えなんかも必要なのだろうか。
しばし考えていると女神様が声をかけてくる。
「まあそんなに難しく考えてもあんたがどうこうできる問題じゃないわ。それに雪って子が目を覚ましたわよ。いってやんなさい」
◇
浜田邸 浜田雪
「う……ん」
身体が重い。まだ熱が出ているようだ。体温計はないけどたぶん結構な高熱だろう。まぶたを開けると部屋が明るい。それにしても右手が本当に重い。まるで押さえつけられているような。ゆっくり顔を右に向けると、若様が寝息を立てている。
「って、え?なんで?若様?」
頭がぼんやりしているからか、状況がいまいち飲み込めない。
「もしかしてまだ夢の中なのかな……」
夢だとしてもこうやって添い寝してくれるのは嬉しいし、手を握ってくれてるのは心地良い。
「え、って手握られてるじゃない。……はぁ、もうなんで不意打ちしてくるのよ」
まだ力が入らないようで、若様に握られた手が放せない。
「それはそうと、喉が渇いたな」
丁度足音と父様母様の声が聞こえてくる。きっと様子を見に来てくれたのだろう。
スッと戸板が開けられる。
「おお、目を覚ましたか」
「あらあら、若様も寝ちゃったのね」
母様が私の右手に視線を遣りながら微笑む。思わず顔がほてるのがわかる。多分風邪のせいだ。若様の手をムニムニしているとようやく若様が目を覚ます。
「ん……、雪起きて大丈夫なのか?」
若様が大きく伸びをすると、私の手から重さがなくなり、少し寂しくなる。
「ふぁあ、お、清之は味噌汁持ってきてくれたのか。丁度良い、雪、飲めるか?」
「ふふ、まだ本調子じゃないようなので、若様に食べさせて頂くと治りも良いんじゃ無いかしらぁ」
母様が若様を煽る。若様もそれもそうかとかつぶやいてナチュラルに食べさせようとしてこないで。父様もニコニコしてないでなんとか言ってくれたらいいのに。
「あ、飲みやすい」
わたわたする私の口に業を煮やした若様が味噌汁を匙で流し込んでくれる。ほどよく冷めてるのといつもより薄めの味噌で飲みやすい。
「薄めた味噌汁が良いと聞いたのでな」
食べ終わると少し身体が軽くなったが、また眠くなってしまったため若様に手を握って貰いまた眠りについた。
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