第八十五話 地球平面説って日本にもあったのでしょうか
水車小屋 一郎
「一郎、何をやってるの?」
「ん?ああ姉さん。若様がクロノメーター欲しいと言ってたから、作れないかなと」
「くろの?なんでも時を計る絡繰りとか仰ってたわね」
等時性を得るためにはどうしたらいいかな。そういえば前世の爺さん家に大きな振り子の柱時計があったなぁ。短い振幅なら当時性は維持できるかな。
「爺さんもこの世界か別の世界かで転生しているんだろうか」
動かなくなった振り子時計をばらしておふくろにも怒られたな。
「そうか振り子時計か。とりあえず試作してみよう」
鉄は相変わらず不足しているので木を削って歯車を作っていく。
◇
水車小屋 弥太郎
「一郎はなにを作ってんだ?」
「あ、旦那様。なんでも時を計る絡繰りを作るって」
「なるほどな。まあ好きにやらせてやれ。あれは大事な絡繰りだ」
振り子時計も作ったことがある。ボール盤あったから数日でできたけど、木を手で削っていくわけだから何日もかかるだろう。こちらは農機具制作だけで手一杯なので時計制作は一郎に任せよう。
「時を計ることができるようになると、どうなるのでしょう?」
「全員同じ時刻をつかって動くので人や物を動かすときに便利なんだよ。もう一つは正確な時間がわかるようになると、場所を知ることができるようになるんだ」
小菊が全くわからないといった顔をする。
「この地が実は丸い球だと言ったら驚くかい?」
「えぇ!ま、丸いのですか?」
「山から海を見てみればわかるさ。そうだな……よし、善は急げだ、明日大槌に行こう」
「ええ!旦那様そんな急に!一郎はどうするのです?」
一郎にちらっと目をやるとなぜかサムズアップしている。
「絡繰り作りに熱中しているようだから放っておいても良いだろう。左近殿の部下もこの周囲を守ってくれているし」
「はぁ、わかりました。若様には一応お知らせして来てくださいませ」
ということで横田の居館に来たわけだ。
「ふむ、明日小菊と共に大槌に行きたいと」
「左様にございます」
「随分と急だな。まあそなたのことだ何か思惑があるのだろう。ついでに孫八郎の様子を見てきてくれ」
あっさりと許可がでたので胸をなで下ろす。
「で、そなたらはいつ祝言を挙げるのだ?」
突然の若様の言葉に一瞬思考が止まる。隣をみると小菊が項まで朱く染めている。子供のくせにちょい色っぽいな。というか俺たちのことを言ってるのか。
「若様何を仰るのです。小菊はまだ八つ。嫁入りには早すぎるでしょう」
「そうか?弥太郎は一五歳でそろそろ娶るべき歳であろう。もう何年もすれば小菊も裳着(成人の儀)を迎えるだろうしな。わざわざ二人していくと言うからてっきり新婚旅行か婚前旅行かと思ったぞ」
「なにを仰いますか。この時代がいくら早婚とはいえ、胸も膨らんで居らぬ女に欲情するようなロリコンではございません」
「なんだ、まだわからんだろう。二次性徴も来ておらぬし」
小菊がペタペタと自分の胸を触りうなだれる。
「だ、旦那様!お胸が大きい女が好みなのですか!?」
泣きそうな顔に沈んだ声で小菊が聞いてくる。
「う…まぁ…な…」
なんで子供にこんなカミングアウトしなきゃいけないんだよ!
「わ、若様!どうしたらお胸が大きくなるでしょうか?」
「ちょっおまっ!」
「うーむ…そうだな肉や魚をしっかり食ってしっかり身体を動かすと良いそうだ」
「ま、誠にございますか!?」
「明の書に書かれてあったからな」
「わぁ!本当ですか!ありがとうございます!」
そんな事書かれているわけねぇだろ。何でも明の書物と言えば通じると思ってんじゃねぇよ!
「とはいえ、全員が大きくなるわけでもないそうだから、大きくならずとも気を落とすでないぞ」
「よーし!大槌で一杯お魚食べてきますよ!さ、旦那様、早く参りましょう!」
小菊ももう聞いちゃいねぇな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます