第七十話 学校計画

横田城 阿曽沼孫四郎


 高辻様と葛屋が京に帰路につく。高辻様には四条様への手紙を預けている。


「さて地下人共は残ったわけだが兄上、如何する?」


「読み書きできる人材は貴重だからな。この遠野でも読み書きできぬ部下も居るし、教えて貰うようにするか」


人材育成だな。教育は大事なのと富国強兵には不可欠なので整備しよう。


「そのことでございますが父上、足利学校のようなものをこの遠野に作れぬでしょうか?」


「神童よ、あそこにいくにはある程度書を知らねばならんぞ」


「であればまずは一所に集めて読み書き計算と簡単な書を教えては如何でしょうか?」


 いままでも簡単な青空教室を行っていたが、せいぜい自分の名前が書ける程度になったに過ぎないのでこれでは高度な仕事ができないし、技術の発展も遅れる。


「まあ読み書きできるものが増えれば助かるのは確かだな」


「名前は如何する?」


「遠野学校で良いかと」


「対象は領民で良いか」


「そうですね、とりあえずそれで良いかと」


 父上がなるほどという顔をなさる一方で叔父上は少し渋い顔になる。


「概ね問題はないだろう。しかし学が得意なものばかりでもあるまい」


「はっ。当面は一通り読み書き計算ができるようにします。今後、学を更に修めるもの、武を修めるもの、手に職をつけるものに分けても良いかと存じます」


 叔父上は納得したように、


「なるほど。つぎに昼間は田畑を耕さねばならんが一体いつ学校にくるのか?」


 そういえばそうだ。現代とは違い子供も働かなければ食っていけない時代だ。農繁期に秋休みのある地域もあるし、盆暮れ正月と農繁期は休みにするのが良いかな。んーそういえば大学入試で第二部とか夜間とかあったが明かりの問題があるな。


「盆暮れ正月と農繁期は休みにするのが一つ、もう一つは昼間の作業が終わった後の夕刻よりということも考えましたが、こちらは明かりの油が必要ですので少し難しいかと」


 少しずつ量産を始めた油だが全国的に不足しているので高価な代物であり、明かりに使うなどというのは蝋燭ほどではないが贅沢である。


「盆暮れ正月と農繁期は休みとするのでよかろう。場所は鍋倉に移った時に合わせて作るようにするか」


 学制の整備はどうしようか。前世の学制はあれはかなり教育が浸透した結果のものだから参考にならない。詳しくないけど戦前の学制っぽいものを作るのがいいかな。


 続いて間もなく田植えが始まる卯月の終わり、普段は月初めに行われる評定を繰り上げて行う。


「そろそろ忙しくなってきたか。みな苗の育ちはどうか?」


 昨年俺の試した温床苗代を各集落毎に設けたことで、今までよりも苗の生育が良いようだ。


「順調そうで何よりだ」


 皆満足そうである。来年には完熟堆肥を一部で供給できるようになる予定だ。


「次に馬の育成はどうか?」


 松崎に話が振られる。


「はっ。なかなか順調でして今年は既に十頭ほど仔馬が生まれております。来年以降は身体の大きなものなどをより分けていく予定です」


「小さい馬は如何する」


「若様のような童の訓練用に回せば良いかと」


 小さいなら小さいなりに使い道はあるものだ。来年くらいから競馬できそうかな、二歳馬だし十町(1100m)くらいで走らせてみるのも面白そうだな。そういえば競馬って何歳馬から走らせるんだっけ?二歳か三歳か。


 馬が増えてくれれば各村に割り当てる馬が増やせるので農作業の効率も上がることが期待できるし戦になれば騎兵や輜重にも重宝するし。どんどん増やして欲しい。

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