第二話 傅役は浜田清之

横田城 阿曽沼孫四郎


 数え四歳になった正月祝いを終える。おたふく風邪とか水疱瘡はもらったが加護の通り死ぬことは無かった。苦しかったけど。そろそろこの時代の文字を読み書きできるようにしたい。


「ととさま、かかさま、お願いがございます」


「む、孫四郎、如何した?」


「某も四つになりました故、そろそろ手習いを始めたく存じます」


「な、なんと! まだ四つなのに手習いを所望するというのですか!」


「うむ、まさに神童というものであろうな。……では浜田三河守を呼んでくれ」


 この浜田とやらは城を出たとこに住んでいるので何かと頼みやすいらしい。


「浜田三河守清之、お呼びにより参上仕りました」


「忙しいところすまぬな。その方に頼みがあって呼んだ」


「いかなる事でございましょうか」


「うむ、孫四郎の傅役を頼みたくてな。よいか?」


「はっ!ははぁ!勿論にございます!この清之、身命を賭して孫四郎様を立派な武将にして見せまする」


「うむ。頼むぞ。孫四郎、そなたは今日より清之に付いて色々学ぶが良い」


「ととさま、ありがとうございます。清之、よろしく頼む」


「お任せくだされ。若様を立派な武将にして見せますぞ」


 そんなこんなで浜田清之に抱えられていく。


「孫四郎様はまだ四つ。馬に乗ったり刀を振るには早すぎます故、まずは読み書きから始めましょうぞ」


 現代教育を受けたから旧字体以外の漢字、かな文字は特に問題ない。一通り楷書でかな文字を書いたところ、清之は腰を抜かしおったわ。簡単な漢字も書いてやったら目を白黒させて、城に報告に行きおった。


「やはり神童であったか。もしや文殊菩薩様の使わしたものやもしれん。清之、他言無用にせよ」


「御意に」


 他言無用と云うことだが、人の口に戸は立てられぬというものでいつの間にか文殊菩薩の使いという噂が領内に広まったようだ。しかし文殊菩薩の使いではなく神様……なんていう神様なんだろうな。とりあえずこの世界を管理している神様っぽいものの使いにはなるのかな。


「ところで、清之よ。今は何年なのだ? してここは何という場所なのだ?」


「今は文亀元年です。ここは遠野の郷ともうすれば、かつて鎌倉幕府を開いた源頼朝公に与力した広綱様がこの地を与えられ、広綱様のお子である親綱様がこの横田の城をお建てになったのです」


 文亀……? 信長が生まれるのはいつだったか? 年号は覚えていないのでさっぱりだな。もっと日本史勉強して居れば良かったなぁ。


 しかし遠野か、カッパなどの妖怪がいた土地だな。遠野物語は一応読んで、一度足を運んだことがあるからほんの少しだけわかる。釜石は釜石鉱山の鉄を利用した近代製鉄所が本邦で初めて作られた地だな。大槌はしらん。趣味で日本の鉱山を調べていたのが幸いするかもしれんな。しらんけど。

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