第3話
中塚の体調は差し入れられた栄養ドリンクの甲斐あって快方に向かい、次の日の朝には寛解した。
金曜日に、不思議な体験をした中塚にとって、今日は初出勤日だ。整髪料をいつもより多めに塗り、スーツもビシッときめた。
中塚は車に乗り、新しい会社に向かった。車は20分ほどして停車した。ドアを開け、降りる中塚。
今回は無事に着いて良かった。やっぱり何かの勘違いだったんだ。目の前には大きなビル街が広がる。その中でも一際目立つビルの12階に会社は入っているのだ。
エントランスを抜け、エレベーターに乗り込んだ中塚は、初挨拶をどういったものにするか考えていた。最初の印象は大事だ。初挨拶を工夫して、うまくやろう。
そんなことを考えている内に、エレベーターは12階に到着した。堅牢な作りの「People who drink Delicious liquor」と記載があるドアを開けると、開放的なオフィスがお目見えした。オフィスに到着するや否や流暢な英語で挨拶した。
「皆さん初めまして、金曜日は体調を崩して出てこられなかった中塚です。ここ笑うところですよキリッ。今日から皆さんと共に楽しくお仕事できることを嬉しく思います。右も左も分からないところですがご指導よろしくお願いします。」
中塚は全て計算づくだった。冗談を交えることで余裕を醸し出したのだ。
そして、席を探し自席に着いた。
演説を終えた中塚はうまくいって満足していた。
ところが社員の反応は違った。どこからか、ひそひそ声が聞こえて来たのだ。
「休んだってなんだよ…バリバリいたじゃねーか…気味悪いやつだな」
なんかの聞き違いかな…?
中塚は不思議に思い、隣の胸の垂れ下がったくたびれババアに話しかけた。
「今日から改めてお世話になります。」
ババアは黄色い歯をむき出しにし、こう言った。
「今日からって金曜日もいたじゃん?中塚君に仕事のこと引き継いだはずなんだけど??それに仕事終わりいいこともしたじゃん?」
「え!?いいことって…冗談ですよね??」
「冗談なんて言うと思う!?私若い子相手にするの久々ですごい盛り上がっちゃったんだから。あらやだちょっと濡れてきたわ。」
そう言われて血の気が引いた記憶のない中塚は、真実を見出そうとした。まずは、机の中をひっくり返した。すると、引継書が出てきて、自分の筆跡のメモが残っていた。次に、メールの送信履歴を確認した。どうやらババアと逢瀬の連絡もとっていたようである。
中塚はきっての美女好きだったので、こんなババアとやるなんてと唇を噛み締めたのだった。
行動の意味 @jijinosunege
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