最終話 やっぱりレアドロップしない男

 俺は、クリムを探す旅に出ることにした。


 クリム・エアハートの指名手配は、ルダニムが不問とし、解除されている。しかし、未だにクリムは行方をくらませていた。


 しかし、妹のグレース・エアハートのもとに手紙が来たのだ。


「宛先とか、行き先のヒントはなかったか?」


 グレースのレストランで、事情を聞く。


「ないわね。兄はあたしたちに危害が及ばないように、最低限の情報しかくれていないわ」


「ランバートには、なにか報告がありましたか?」


 俺に関する話題が書かれていたか、サピィがグレースに尋ねた。


「なにも。書きなぐっている感じだから、かなり焦っているみたい」


「まったく、どこをほっつき歩いているのやら」


 ルダニムの新しい女王となったゾーイが、メロンソーダを飲む。


「とにもかくにも、このメロンソーダというものはうまいな」


 人間の食い物など口に合わないと思っていたが、ゾーイはお忍びでこの店をよく尋ねていた。


「案外、あなたたちに会いに来ているだけだったりして」


「ちげえねえ! ガハハ!」


 獣人族のミューエが茶化すと、女ドワーフのメグがヒザをバシバシ叩く。


「うむ。仲間がいるのはいいことだ」


 ヴァイパーの長・ゼンが、ケチャップパスタを一本ずつズルズルとすする。戦闘で仲間を大量に失ったヴァイパー族が言うと、感慨深い。


「それにしても、アンタはやっぱり甘いものなのね」


 俺の食いっぷりを見て、女騎士フェリシアが頬杖をつく。


「食い納めかもしれんからな」


 俺はこの店の名物、バケツプリンを頬張る。


「あたしたちは、お前たちとは反対方向を探しに行くぞー。回復役二人だから、市にはしないだろ」


 トウコは、俺たちの探索には同行しない。フェリシアも、トウコについていく。


「ありがとう。助かる」


「修行が目的だから、いいんだぞー。じゃあ、あたしたちは行くから。ごちそうさまー」


 ハンバーグでベタベタになった口を拭き、先にトウコは出発した。


「じゃあ、しっかりね。もうシーデーはいないんだから」


「ああ。シーデーは、よくやってくれたよ」


 フェリシアも、コーヒーを飲み干して出ていく。


「お嬢、最後までお役に立てなくて、申し訳ございません」


 虚弱公キョジャクコウとの戦いで、シーデーは戦闘能力の大半を失った。

 フォート族の技術が残る要塞都市ルダニムで治療を受けていたが、もう戦うことはできないらしい。パーツの問題ではなく、稼働年齢や神経伝達レベルの衰えが著しいという。やはり最終形態になったために、ムリをしすぎたのだ。コナツの手でオーバーホールしても、各パーツの劣化は避けられなかったのである。


「お疲れ様でした。シーデー。ルダニムの技術・戦闘指導をなさるそうで。あなたはもう、戦わなくていいのです」


 なにより、サピィがシーデーの同行を拒否したのだ。もう彼を、戦わせなくないと。


「虚弱公との戦いは、想像を超えていました。すべて終わったのです。あなたは、休むべきでしょう」


「ありがたき幸せ」


「ルダニムでも、お元気で」


「お嬢も」


「では、行ってきます」


 店を出た俺たちは、最後にコナツへあいさつをする。


「コナツ。必ずクリムを連れて帰るからな」


「おう。まあ転送ポータルはあるから、いつでも帰ってこられるだろ」


「そうだが」


 あいつはおそらく、ポータルのないエリアに向かった可能性が高い。ここまで探しても、情報が入ってこなかった。かなり遠くへ向かったと見える。


 どうしてクリムは消えたのか。死んだわけではない。


 真実を確かめに行く必要はある。


「新しい装備だ。といっても、かなり弱体化したが」


 コナツから、装備を受け取った。たしかに、虚弱公に壊された装備に比べると、かなり弱い。

 それでも、コナツの腕で限りなく最強に近いところまで復元してくれていた。


「ありがとう。コナツは頼りになる」


 相変わらず、俺はレアドロップをしない。そのせいで、素材が集まらなかったのだ。


「とんでもねえ。サピィちゃんのフィーンド・ジュエルのおかげさ。これがなかったら、オレもレアアイテムを作ろうなんて発想は浮かばなかったぜ」


「サピィに感謝だな」


「気をつけてな。サピィちゃんを泣かせるんじゃねえぞ」


「どうして、そんな話になるんだよ?」


「へへ。じゃあ、カカァが呼んでるから」


「おう。奥さんと元気で」




 俺たちは、街の外に出る。


「サピィ、シーデーのパーツだけを組んで、バイクを作ったのか」


「はい。長旅になります。馬よりはバイクかと」


 ジュエルを動力源としたバイクに、サピィはまたがった。


「行きましょう、ランバート」


「クリムを探しに行こう」


 俺がサイドカーに乗ると、サピィがエンジンを吹かす。

 

(完)

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レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する殴りウィザード】として覚醒! 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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