第結話
『悪霊ニュース : 金縛りを起こす妖怪』
そんな見出しで書かれたオカルト掲示板の書き込み。単なる物好き達の集いでもネットの拡散力は凄まじかった。
その書き込みには妖怪が能力で人々を傷つける様子がはっきり映ったGIFが載せられていた。
その存在が映ることすら珍しいのに、私ははっきりと映りこんでいた。さらに、悪意の業を行っていた。これが世間に広まらないはずがない。
小指には赤い糸が絡まっていなかった。けど、他の指には見えない糸が絡まっていた。
その糸に気づいたのはちょうど今だった。
もっとはやく気づきたかった。
透明な糸が1本切れた。
親の子を思う優しさが空回り、幽霊の私を偽物と決めつけ悪霊退散を願う。そこにはもう
透明な糸が6本切れた。
友達は恐怖を感じたのか私を避けるような意志を持った。断ち切れなかった糸をそれを機に断ち切ったのだ。
透明な糸が何千も切れた。
クラスメイトを初めとした私と関わった人々の思いはすぐに切れていった。
透明な糸が何万も切れた。
私に憐れみを向けた人々は、憐れみから憎悪などの気持ちに変えていった。
糸が切れるとその糸の先にいる人の様子が頭に浮かぶ。その様子は全て私の胸をチクっと刺していく。
糸が切れると体が軽くなる。私は知らずのうちに誰かからの愛を受けて重くなっていたみたいだ。
誰かに能力をかけていた私は、まさか自分自身にも能力がかかっていたなんて思いもしなかった。
体にかかっていた重りがなくなる。
重りがなくなっていくにつれて私は空に向かって飛んでいく。重量が逆さまになったみたいだ。
「お姉さん。私も遅れて成仏するから、またあの世で会おうね」
幸薄少女に手を伸ばすが、彼女は手を取ることはしなかった。
もう空の上を飛んでいる。
小さくなっていく家々の姿がとても虚しく思える。
悲しいな。
もっとはやくに【愛の石】が私にもかかっていたことを知りたかった。そしたら大切な人々に見捨てられるような、こんな最後は迎えることはなかったのに。
あんなにも重かったあの駅の日。
その時は苛立ちが沸騰しかけていたが今なら嬉しく思う。無念の気持ちが空に散り散りとなっていく。
ああ──
はあ──
あああ──
ため息だけが吐き出される。
私は無念の念とともに空に──消えた。
【愛の石】の ふるなる @nal198
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