第転話
「あんた──死んでるね」
その日もまた見知らぬ誰かを重くさせた。
能力を手に入れた日から眠くなくなった。それに、何をしても誰も何も言わなくなった。
今思えば、狂気に囚われてた。
他人の苦しむ姿を見て笑う私。好き放題に悪事を重ねる私。いつからこんな私になったのだろうか。
誰かに重りをかけている時にシャッター音が鳴った。そして、ある女が私に話しかけてきた。彼女はスマホを持ちながら話している。
そして、言い放った言葉が先程の言葉だ。
全くもって意味が分からなかった。
「あたしさー、霊感が強いんだー。だから、あんたのしてることが見えるんだよ」
私は死んでいる?
どういうことだろうか?
ヤケクソになった。本能的に家へと向かう。その間に通る人間どもに触れた。ただの八つ当たりだった。
家に戻った。
暗いので電気を付けようとしたのに電気がつかない。仕方なく暗闇の中を進むと、家のものが何もかもなくなったことがすぐに分かった。
「ねぇ、お姉さん。そんなに慌てて大丈夫?」
あの時の公園で話した幸薄な女の子だった。
「ねぇ、聞いて。急に知らない女が私のことを幽霊って言ってきたんだ。おかしくない?」
「おかしくないよ。だって、お姉さん、本当に幽霊だもん。私も幽霊だから分かるよ」
思わず「えっ」と言葉を落とした。
「私……あまりにも辛くて自殺したから。駅のホームで飛び降りたから」
頭の中が真っ白になっていく。
私は死んだの?
じゃあ、いつ死んだの?
あっ、階段から転げ落ちた時に死んだのか?
じゃあ、本当に私は……死んだの?
「ねぇ、お姉さん。大丈夫?」
涙腺が活発になっていた。
涙袋から溢れ出しダム決壊のようになっていた。思い出していく人生の記憶。家族で遊びにいった遊園地。友達と一緒の日々。楽しい学校生活。修学旅行。楽しいことがあんなにもこんなにも溢れていく。その度に失ったものも溢れていき、涙もその分溢れていく。
なのに床は……濡れなかった。
いつしか涙はため息に変わった。
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