10話.[意外と綺麗よね]

「人がたくさんいるわね」

「ああ、多いな」


 今回は美里と海に来ていた。

 七月最初と違って人が沢山いて荷物とかも見ておかなければならなさそうな感じだ。

 まあ各々自分のしたいことに集中しているところだから興味もないだろうが……。


「ちょ、ここで脱ぐのか?」

「え? ここでいいでしょう?」

「いやまあ……そうか」


 佐織にあんなことを言っておいてなんだが美里が脱いだらなんか注意されそうだ。

 で、目の前で水着姿になってくれたわけだが……。


「む、見なさいよ」

「……やべーだろ」

「ふふ、なにがやばいの?」


 ……最低な話だがやっぱり全く違うな。

 ことこの件に関しては不利どころの話ではないから遊びに行かせることにした。


「ここの海って意外と綺麗よね」

「俺の地元近くの海よりはすごい綺麗だな」

「いいわよね、これなら入ってもいいかという気持ちになるわよね」

「水に触れるのとか嫌がると思ったけど」

「そう? 私はプールも海も好きよ?」


 まあそりゃそんないいスタイルしていたら見せつけられるし気持ちいいか。


「あなたも上を脱いだらどう?」

「いや、見せられるような体じゃないからな」


 贅肉が多いというわけではないが美里の隣だとより貧相に見えると思う。

 成長しているのは身長だけ、中身は全くついていけていない。


「いいから脱ぎなさい」

「えぇ……」


 脱いでみたがなんか場違い感が半端なかった。

 なるべく端に端にと移動した結果、落ち着けるような場所に移動できたが。


「全然問題ないじゃない」

「そうか……? 筋肉とかないからさ」

「気にしなくていいわよ、私だってないわよ」

「いや、女子はなくていいだろ」


 まあいい、おどおどしていたら余計に情けなく見える。

 堂々としていれば普通レベルでも周りは気にしたりしない。


「美里、ありがとな」

「どうして?」

「何回も言っているように今回のこれは佐織が悪いわけじゃない。でも、あのままだったらまた過去と同じ繰り返しだったからさ」

「そういうことね、けれどお礼の言葉は別にいらないわ」


 彼女はこっちの手を掴んで珍しく笑いかけてきた。

 なんかじっと見ていたら「な、なによ?」と言われてなんでもないと返す。


「美里って意外と笑うよな」

「それは当たり前よ、私も人間なんだから」

「じゃあもっと教室でにこにこしたらどうだ?」

「いいのよ、あなたとか仲のいい子といるときだけでいいのよ」


 そういうものか? なんかもったいない気がするが。

 まあでも変に惚れられても困るからこれでいいか。

 美里の謎プレイによって不思議な関係になっているわけだができればこの関係を、この距離感を維持しておきたいからなと、彼女見つつ内でそう呟いたのだった。

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64作品目 Rinora @rianora_

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