09話.[なんでだろうね]

「美里」


 栄二との約束があるから露骨に表に出したりはしなかった。

 それにもう少しで一ヶ月というところなんだからこんなところで失敗するわけにもいかないというのもある。


「ごめん、少し遅れちゃった」

「いま来たところだから構わないわ」


 今日は栄二抜きでファミリーレストランに行って話をすることになっている。

 私から誘ったわけではない、彼女の方から唐突に誘ってきたのだ。

 ちなみにもう八月になっているけれど、関係は変わったのだろうか?

 とりあえずお店に着いたらドリンクバーを頼んだ。

 お金を払う以上はある程度は飲んでおかなければならないということで早速注ぎに行く。


「それで?」

「あ……栄二君とは仲良くできてる?」

「ええ、それなりにね」


 相変わらず触れてきてはくれないけれど。

 だからこっちから積極的にならないといけなくなっている。

 このままだとやっぱり駄目だということで終わりになりかねない。

 終わりになったら一緒にいることすらなくなりそうだから怖いのだ。


「あなたこそどうなの?」

「今度、お祭りに一緒に行くことになっているよ」

「そうなのね」


 お祭りかと内で呟く。

 栄二は行ってくれなさそうな気がする。

 一緒に花火を見たりすれば変わってくれるだろうか?


「そういえば最後は海に行ったそうね、なんで水着姿なんて見せたの?」


 これは純粋な疑問だった。

 切るなら敢えてそのタイミングじゃなくていい。

 栄二から聞いた限りではあっという間だったみたいだし余計に気になるというもの。


「……なんでだろうね」

「本当は気になっていたの?」

「……分からない、それでも悪く言ったりしたいとは思ってないよ」


 当たり前だ、もしそんな風に考えていたなら本格的に栄二を説得する。

 散々動いてもらっておいていざとなったら悪口を~なんて許せるわけがない。

 とはいえ、私も隠していたわけだから人のことは言えないと……。


「……ごめんって謝っていたって言っておいてくれないかな」

「分かったわ」

「うん、ありがとう」


 危ない、数分毎に試される場面がやってくる。

 偉そうに言う資格はないのにどうしても気になってしまう。

 だって露骨にアピールをしていたのだ。

 下手をすれば勘違いして告白をしてしまう子だっていたかもしれない。


「もう二度とあんなことをしない方がいいわ」

「うん……反省してる」

「ええ」


 あとは平和な会話に変えていった。

 あのまま続けてもお互いに気持ちよく過ごせないから仕方がない。

 それにいまから言ってもどうにもならないことだからと内で呟いて片付けた。

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