呪いのばあちゃん

ツヨシ

第1話

子供の頃、近所に老婆が一人で住んでいた。

たまに会うが、会うとにっこりとあいさつをしてくれた。

子供心に穏やかで優しいおばあちゃんだと思っていた。

しかしお母さんはそのおばあちゃんのことを「呪いのおばあちゃん」と呼んでいた。

あんなに優しそうなのに。

そんなある日、おばあちゃんの隣の空き家に、一人の男が越してきた。

子供の僕が見てもすぐわかるほど怖そうなおじさんだったが、実際にその男は問題だった。

横暴で口が悪く、声もでかい。

近所中の人間がその男の理不尽さに悩まされたが、一番の被害者は隣に住んでいるおばあちゃんだった。

しょっちゅうおばあちゃんの家に押しかけて、でかい声で難癖をつけて怒鳴り散らしていたという。

そしてある日、お母さんが言った。

「あいつ、おばあちゃんを本気で怒らせたわ」

次の日、男は平らな道で転んで、左腕を骨折した。

さらに病院で階段から落ちて右足を骨折した。

それだけではなく、今度は病院に向かうタクシーが事故を起こし、首をひどく痛めてほぼ寝たきりになってしまった。

その間、一週間足らず。

お母さんが言った。

「おばあちゃんを怒らせるからよ」

お母さんがそう言った翌日、僕はおばあちゃんに会った。

僕を見るといつものように笑顔であいさつしてくれた。

その顔は、ただひたすらに優しかった。


       終

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呪いのばあちゃん ツヨシ @kunkunkonkon

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