彼女。

 ぱりぱりになった皮膚を、不思議そうに眺めている。


「再生なんちゃら治療だってさ。焦げた皮膚は抜け落ちて、元通りらしい」


「かゆいの?」


「いや、何も感じない」


 彼女。うずうずしている。


「はがしていいよ」


「いいの?」


 彼女。かさぶたとかはすぐ剥がすタイプなのか。はじめて知ったかもしれない。

 彼女がいる。目の前に。

 そして、自分は死にかけていない。彼女のことも覚えている。不思議だった。

 自分は、死んだのかもしれない。


「いだだだ。そこは焦げてない。普通の皮膚」


「あ、ごめん」


 生きている。皮膚をつねられると、いたい。


「ここ。ここらへん。どうぞ」


 彼女が、おそるおそる、自分の皮膚をはがしている。なんか、たのしそうだった。それを見ていて、なぜか、自分も、楽しい気分になってきて。ちょっとだけ笑った。

 雪。

 やんでいる。

 窓の外の景色。

 積もった雪で白く染まって、綺麗だった。

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陰雪 β 春嵐 @aiot3110

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