フリーターという名のニート

坂道 転

第1話

「普段何やってるの?」そう聞かれたら、「ニートです」と答える。実際は週3回くらいのペースでアルバイトに行っているが、大した収入もなければ、仕事の出来も悪いので、とても"フリーター"なんて言えなくて"ニート"と答える。自己肯定感はミジンコにも劣るだろう。

Googleで"ニート"と検索すると、トップに「十五歳から三十四歳までの、家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けていない者。」と出てくる。彼氏と同棲を始めた今、当てはまるのは年齢だけだ。

しかし、私は"ニート"だと言ってしまう。言っているうちになんとも言えない自虐感が若干快感で、それでいて"ニート"という響きもなんだか好きになってしまって、"ニート"と名乗ることが好きになってしまっているのだ。全くもっていいことではないのだが……

ただこれは、自分から名乗るからいいのであって、人から言われるのは納得いかない。バイトしているからフリーターだ!と声を大にして言いたくなる。不思議な話だ。

世の若者のおよそ半分は大学に進学する時代、2年浪人して心が腐った私は自己肯定感など皆無に等しい。大学に進学した同級生のインスタのストーリーを見ては忌々しさと劣等感を感じる。

そんなある時、バイト先で「普段は何やってるの?」お決まりの社交辞令の質問をされた。私はもちろん「ニートです」と答えた。「ここで働いてたらもうニートじゃないよ、フリーターだよ」そうフリーターの人に言われた。それから私は某求人サイトでも「無職」ではなく「フリーター」を選べるようになった。あの言葉は社交辞令じゃないと信じたい。

それからは、「フリーターという名のニートです」と名乗るようにしている。

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