第28話 (仮)遅すぎた春…彼女の気持ち

実家に帰るたびに

「○○さんの娘さん

今度、結婚するらしいよ」

白々しく

父と母が会話する

ずっと二人で暮らしていて

今日、その話しなきゃならなないの?

それを思うと

”あ~私に言いたいんだろうね”

すねた気持ちと一緒に

”心配かけてごめん”

とも思っている自分がいる


【続く】


帰り際

母は袋一杯のお菓子や保存のきく食材を私に手渡す

母の手を見て

歳を取ったな・・・と感じる

また来るし

そんなに遠くもないし

大袈裟だよ

この量は・・・

「ありがとう

じゃ、帰るね」

ドアノブに手をかけると

母は思い切ったような言い方で


【続く】


「一回、結婚してみたら?

色々、考えすぎなのよ」

なんだそりゃ

”一回”

結婚なんて何度もするものでもないでしょ?

別れる前提の結婚を進められているように聞こえ

私は苦笑いを浮かべ

「また来るね」

そう言って

家を出た

タクシーを拾い

行先を告げる

後部座席でスマホを鞄から出す


【続く】


”何してる?”

彼氏へメールする

どのくらい会えていないんだろう?

出張続きだったしな・・・

彼からの何気ないメールも

同僚や後輩と一緒だったから

直ぐには見れなくて

後から読んではいたけど

返す元気もなくて

彼女失格だな・・・

彼からの返信はない

もう寝ているのかな?

もしかして拗ねてる?


【続く】


無性に会いたくなった

行先の変更を告げ

彼の部屋へ

10分後

彼の部屋の前

合鍵を出す

静かにドアを開き

中に入った

足元で何かにつまづく

パンプス

”?”

直ぐには理解できなかった

でも次に

耳に入ってきた甘ったるい

ため息のような息づかい

現実を私に受け止めさせた


これは・・・浮気の真っ最中だ


【完】


【narusegoto】


『(仮)遅すぎた春』

の彼女バージョンです


彼が淋しさゆえに

他に目移りしてしまったことも知らずに

彼女は合鍵で部屋の中へ・・・


どうなるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

成瀬慶 140字小説 成瀬 慶 @naruse-k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ