対人シャッター

対人シャッター

　想像力のないあの人は、

　理不尽にこちらを責め立てる。

　そんな人との間には、

　常にシャッターを下ろしておこう。

　その人の声はシャッターにさえぎられ、

　言葉は曇って聞こえない。

　ああ、またなんか言ってるな。

　そう思っておけばいいのだ。

　ちょっと面倒くさいあの人は、

　ときどきおかしなことを言ってくる。

　そんな人との間には、

　シャッターを半分だけ下ろしておこう。

　上半分は、隠れていて。

　離れていると、なにを言っているのか分からない。

　まっとうなことを言っているときにだけ、

　近づき聞いてみればいい。

　たまに怖いあの人は、

　ちくりと的を射た指摘をしてくる。

　そんな人との間なら、

　シャッターは我慢して上げておこう。

　つい下ろしたくなるかもしれないが、

　その言葉は、自分の成長の糧になる。

　下ろしたくなる気持ちはぐっと抑え、

　腹をくくって、話を聞こう。

　尊敬しているあの人は、

　いつもためになる助言をしてくれる。

　そんな人との間なら、

　常にシャッターは上げておこう。

　むしろ、こちらから境界線を踏み越えて、

　隣に座って、じっくり話を聞いてみよう。

　おしゃべり好きなあの人は、

　ズバッとものを言ってくる。

　そんな人との間のシャッターを、

　下ろしておく必要はないだろう。

　だがしかし、

「わかったのでもういいです」と、

　無理にシャッターを下ろそうとするならば、

　手で押し上げてでも話の続きをしようとし、

　しばらく押し合うことになるだろう。

　面倒くさいなと、少し思う。

　だがそれもまた、一興だ。