第18話 小話
雷雨が鳴り響く真夜中に私は座布団の上できせるを吹かして座るマスターの前に跪く。
「此度の件、誠に申し訳ございません。」
マスターはそう言う私を下を向いていてよく見えなかったが利用価値のなくなった物を見るような目を私に向けている気がした。
「なぁ、主何故あの時躊躇った?」
「………」
「答えろ!!!」
雷の音にも勝る怒号が私の耳をつんざいた。
「したくなかったからです」
「なんじゃと?」
「あの時あの瞬間、なんて言えばいいか分かりませんがとにかくしたくなかったんです」
マスターは歯をギシギシと音を立てながら忌々しそうに私に怒鳴りつける。
「与えてやった身体を失った挙句まさか本物の感情を得るとは……この不良品が!」
そう言って火がついたままのキセルを私の頭に投げつけた。そしてマスターを挟むように立っている護衛2人に「やれ」と言った。
すると護衛2人が「はっ!」と返事をして私を何処かへ運んだ。
運ばれた場所はよく分からない機械が沢山並んでいる地下室だった。そこで私は謎のピンク色の液体が入った鍋の前に私を抱えたまま護衛が立ち止まって言った。
「じゃあな、不良品」
私を持った護衛がその鍋の中へと私を投げ捨てた。
何も感じないはずなのに何故かあの仕事の時と今はどういう訳かいつもと違く感じた。
――こうして私は死んだ――
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