第11話 酷い絵
「小坂さん、嘘だと言ってくださいよ、ねぇ、小坂さん…」
こんな事を冗談で言うはずがないということは分かっていたがそれでも俺は神にでもすがる思いで小坂さんに祈るように言ったがそれに対する答えは。
「嘘ではありません、全て事実です。」
それを聞いた瞬間、俺の描いた偽物の現実は次第に元の姿に戻っていく、見たくもないそれへと。
そして今まで見えてなかった光景が俺に襲いかかる、俺が二人を発見した時すでに死んでいてもおかしくない傷を負っていた事、周りに飛び散った赤い液体は血であった事など、見えてきた本当の現実が俺の心の崩壊をさらに加速させる。
やめろ、やめてくれ、俺が見た物はそんな酷い物じゃないもっと希望に満ちた二人がまだ生きている可能性のある光景だと俺は心の中で言い続ける、でも皮肉な事に描かれる現実はどんどんと酷くなる、二人についた傷がどんどんと描かれていく、切り傷だったり、刺し傷だったりと俺がやめろと言っても本来の姿に戻るまで描かれ続ける。
「あ、あぁ、違う、俺はそんな物を見ていない」
「い…み…ん………た…の…」
俺は頭を抱えながらひたすら完成した本物の現実を否定し続けた。途中、川崎さんのような声が聞こえたが俺の耳にはほとんど届かない。そんな風に絶望していても俺は何故か涙が一滴も出なかった、悲しみはあっても涙は出なかった、まるで体が泣くという行動を忘れたように
そして空気を読まない扉の音が沈黙の中鳴り響く。
「いやーすまない、待たせてしまって…。あれなんだこの空気」
この反応は当たり前だろう、入った瞬間頭を抱えて何かを呟き続ける俺と、俺に必死に何かを言い続けているこの異様な光景を見れば誰だって同じ反応をするだろう。
怠平さんに気付いたのか二人は俺の下を離れ怠平さんの方に行く。何かを話しているのは分かったがその音は全て絶望により途切れ途切れに聞こえてくる。話が終わると3人は俺の下に来た。
「一旦、たい…す…から…」
小坂さんがそう俺に告げる、聞こえた言葉から考えると一旦、退室する事を言ったのだろう。
「待ってください」
俺は3人が扉に向かっている時にある事を思い出して止めた。
「あの、怠平さん、今犯人の顔写真とか持っているんですよね」
「ん、あぁ、持ってるけど」
「それだけ、渡してから退室してくれませんか」
「まぁ、良いけど」
そして彼は鞄の中をごそごそと探してあるファイルを取り出した。
「はい、これがその資料だよ」
俺は2人を殺した奴に復讐をするために奴の情報を知ろうとしたが3人が出ていった後にその資料を見て更に心が壊れていく。
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