第6話 生還

「貴様!、その子から離れろ!」


 黒髪でツーブロのすらっとした体型の警察官が奴に怒鳴り威圧した。


 奴はチッと舌打ちをした後俺の服を掴んで後ろに飛ぶと奴の体がどんどん消えていき、奴の体が全て消えると、奴が掴んでいる俺の服も消え始める。


この間わずか1秒ぐらいで、このままいくと同じように俺も2、3秒後には消えてしまいそうだったでも、2、3秒で何か抵抗できるはずもなく、そのまま何の抵抗も出来ずに奴と同じように体が消えていった。


そして俺の視界が真っ黒に染まった時、突然、俺の体が前方へと吹き飛んだ。

俺はそのまま何故かスライムのように柔らかいドアにぶつかってそのまま尻もちをついた。

何が起こったのか分からず呆然とする俺に黒髪ポニーテールで吊り目の女性警官が声を掛ける


「大丈夫?どこか異常のある場所はある?」


 俺は彼女の声で我にかえり、自分の体を確認するとさっきまで消えていたはずの体があって困惑した。

そしてさっきまで俺の服を掴んでいた奴はどこにもいなかった。


「え、どういう事さっき消えたはずの服とかが何で…」


俺が困惑しているとさっきの女性警官がさっきと同じ質問をする

 

「で、体のどこかに異常はある?」


困惑しながら体の異常の有無を確認して特に異常がないことを伝える。

 

「特に…問題は…ありません」


 そう言うと彼女はほっとした表情をした、そしてツーブロの警察官にが彼女に言う。


「犯人はここから出られないはずだから、一旦、ここから出て状況を整理しよう」

「わかったわ」


 変形していたドアがいつの間にか元通りになっていて、またドアが変形して俺は頭に?が作られながら2人の警官の死体を持っている彼らにに連れられて地獄から出た。

 俺は外の空気を吸ったその瞬間、俺は膝が崩れ落ちて、また泣いた。


「良かったぁ゛ぁ゛ー今度こそ本当に死ぬと思ったぁぁー」


 そして俺と2人の警官の死体の周りに外にいた警官が集まって俺の方に来た警官たちは俺の身の心配をし、死体の周りに集まった警官たちからは悲しみの声や怒りの声が聞こえて来る。


「どうして、こんな目に…」

「絶対に犯人を逮捕してやる」


彼らはそのような事を言いながら遺体を袋に入れる。

少しして俺が落ち着くと、さっきのポニーテールの警官とツーブロの警官が俺に質問をしてくる。


「一体中で何があったかできる限りでいいから話してくれないか?」


 俺は中で起きた事を話した、その事を思い出すだけでもかなり辛く、話している途中で吐きそうになったが取り敢えず話せるだけの事は話した。

 するとツーブロの警官が俺にある事を問う。


「その話だと、君のご両親はまだ生きているのかい?」


俺はそれを聞いて何も言えなかった。

 俺は父さんと母さんの事を含めて全てをしっかりと話したはずなのに父さんと母さんについて聞かれた事に少し困惑した。


(何故だ?俺は見たまんまを話したはずなのに?)


 彼は待っている俺が二人について話すのをだが彼がいくら待っても俺は話せるはずがない、だって俺の記憶にはっきりと見えた光景は「倒れている」以外にないのだから。だがこれが本当の現実のはずなのにまだ頭の片隅にぼやけた絵のような信じたくない偽りの記憶がこびりついていた。


俺が困惑して黙り続けて1、2分経つとポニーテールの警官が彼と話し始めた。彼らが話し終わると彼は俺に問う。

 

「僕達は家に君のご両親を探しに行くからそのご両親が倒れていた場所はどこかな」


俺はこれを聞いてやっと、先生に問題を解くように言われて全く分からない時に起きる謎に気まずく感じるようなあの空気から解放されてあまり顔には出さなかったが内心めちゃくちゃ喜んだ。


「一階の階段近くにある部屋です」

「あそこか…協力感謝します」


 彼は外から部屋の位置を確認し、笑顔で感謝を述べた。

 そして彼らは玄関に入り、暗闇へと消えていく。


 彼らが家に入ってから数分経ち、俺が父さんと母さんの無事を祈っていると、突然俺の目の前に奴が現れた。

奴はあの時と同じように俺の胸ぐらを掴み後方へと飛び姿を消し始めた。俺は周りにいた警官に手を伸ばし助けを求める。

 

「誰か!助け」


だが助けを求める前に俺は彼らの前から消えた。俺が助けを求める前に気づいていた人もいたがいきなり現れた奴に動揺していたせいか遅れを取り何も出来なかったように見えた、だが仮にあの時動揺せず、動けてもあの早送りかと思えるようなスピードで攫っていくような人間に一体何が出来るだろうか。


 そして胸ぐらから手を離され俺は地面に落ちる。痛みを感じながら周りを見るさっきまでいた家の庭から何故か屋根裏部屋へと景色が変わった。すると奴が今の状況に困惑している俺に顔を近づけて中性的な声で話す。


「おい」


俺はその声で我に帰る。

蛇に睨まれたカエルのような怯えた情けない声で返す。


「な、何でしょうか」


奴は俺から顔を離すと目の前に光る宝石を置く、奴は一切の感情を感じられないような声で短絡的に説明する。


「お前はこれを触り続けろ、もし何か異常があれば言え。わかったか?」

「わ、わかりました!」


そして俺は彼に言われるがまま通り宝石を持った。




 私達は彼が言った部屋にたどり着き中に犯人がいる事を警戒しながらドアを開けた。ドアの先は地獄絵図だった、彼の両親と見られる遺体があったがそれにはかなりの損傷があった、胸部に複数の刺し傷があり、脚や腕には切り傷があった。

そして周りの家具に飛び散った血液がこの二人に起きた事の凄惨さを物語っていた。

 私は手を強く握りしめ犯人への怒りに震えた。


(どうしてここまで惨い事ができるの!)


私が犯人に怒りを募らせていると小坂が突然声を上げた


「な、なんだって!?」


そして小坂が慌てたように私に言う。

小坂があそこまで驚く姿は見た事がなかった。


「どうしたの?」

「外にいる奴からの連絡であの子が犯人と共に消えたらしい」


私はそれを聞いて驚く。


「嘘でしょ、あいつの能力の性質上外に出られるはずが…」

「嘆いていてもしょうがない、とりあえずこの遺体は外にいる奴に頼むとして僕らはあの子と犯人を探しに行こう」

「えぇ…、そうね」


私達はリビングを出て早急にリビングから出て、彼を探し始める。

この時、私達が奴の能力を甘く見ていなければ少年の人生は平凡だったかもしれない。



 

 

 

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