第5話 蛇と蛙
警察官とともにリビングを後にして家を出る為に、玄関に向かっていると、突然俺の隣にいた2人の警察官がほぼ同時に倒れた。
俺は何事かと思い警察官を見ると彼らは頭にナイフが刺さり、そこから血を流していた。
その光景に思わず声を出して叫んでしまう。
「あ、あ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
恐怖の余り腰が抜けてしまい立てなくなった、俺はそのままの体勢で後ずさる。
すると俺の目の前にナイフがどこかから突き刺さる。
「ひっ!?」
俺は思わず情けない声を出してしまった、そのナイフには紙が刺さっていてそれにはこう書かれていた。
[この家から出る事は許さないし、誰かを入れる事も許さない、これを守らなければ次はお前の番だ]
俺がこの文章を見た時片方の警察官が光の灯さない目で俺を見て弱々しい声でこう言った
「に…げ…ろ」
そう言った瞬間彼は死んだ、どうやらもう片方は即死だったようで何も反応がなかった。
彼の単純でとても分かりやすい言葉は一瞬だけ俺のパニックになっている思考を逃げるにまとめあげる。
(そうだ、逃げればいいんだ、この家から出られれば
きっと助かる)
だが、どんなに逃げるに思考が染まっていようと、死の恐怖はまるで綺麗な水の中に落とされたインクの様に逃げるという思考を塗り潰していく。
(でももし逃げられなかったら殺されるのかな?それはいやだ、いやだ死にたくない)
考えれば考えるほど、もしもの可能性が出てきて、死の恐怖は俺の思考を染め上げる。結局、逃げずに俺は留まった。
あれから数分が経過し、俺の心が恐怖で押しつぶされそうになった時、外から赤い光と聞き覚えのある音が聞こえてきた。
時は少し前に遡るが私こと川崎綾香はいつも通りパソコンを使って作業をしていると突然出動の知らせが入り直ぐに準備をしてパトカーに乗り込んで目的地に向かっていると運転席に座っている、同僚の小坂異形が私に話しかけてきた。
「なぁ、川崎」
「なに?」
「今回の仕事あの巷で起きている殺人事件ってことは知ってるよな?」
「ええ、それがどうかしたの」
彼はため息を吐いて私に言った。
「また、人と戦うことになるのかなと思って」
「もし今回の事件が報告通りインフェクターならそうなる可能性が高いわね」
彼はさっきよりも大きなため息を吐いて私に言った。
「争いは嫌だなぁ」
「仕方ないじゃない、これが私達の仕事だから」
「君はすごいなぁ、この仕事に慣れれるなんて」
「仕事だと思えば案外楽よ」
しばらく雑談をしていると目的地に到着した。目的地は普通のどこにでもある極一般的な一軒家だった。
だがそれは見た目だけであり空気は別世界と思える程に澱んでいる気がした。
それを感じた瞬間さっきまでの談笑の空気は消え失せた。
小坂が私の方を向いてこう言った。
「すぐに行こう」
小坂もこの澱んだ空気を感じたのかパトカーの中にいた時とは別人と思える程に真剣な表情だった。
私はその顔を見て頼もしいなと思いながら彼に「ええ」と返事をした。
私達はパトカーから降り、パトカーの音で集まった近隣住民を抜けて、規制線の中に入った。
家のドアの前で何やら頭を抱えている様子の別の部署の警察官が何人か話し合っていた。
私達はその警官達が気になったので話を聞きに行った。
「あの、どうしたんですか?」
私が彼らに尋ねるとその中にいた、中年の警察官がその質問に答えた。
「君は通報したのが警官なのは知っているよな?」
「はい」
「実はその通報した警官と連絡が取れなくてな、それに家の中はどこもカーテンやら何やらで、家の中を確認する手段が何一つもなくてな、どうすればいいか悩んでいたんだよ」
その話を聞き終えると、小坂がその警官に質問した。
「あの、犯人は何か要求しましたか?」
それを聞いたその警官は難しい顔をして質問に答える。
「その点も我々を悩ませる原因でな、犯人は我々の呼びかけに一切応じないんだよ」
この後も色々と案を出したがどれも危険があるため、全て却下となり、結局、話は進まなかった。
そして何も進展しないまま数分が経過すると、突然、家の中から、誰かの叫び声が私の耳に響いた。
この瞬間、ドアが変形し、人が通れる穴が現れる。それに驚いた者はおったがそれは少数であった。
そして小坂と私が家に入り、何かあったら呼ぶと伝えて、2人で家に入った。
玄関には涙で顔がぐちゃぐちゃになったワインのような赤黒い目をもつくすんだ茶髪の青年と、その青年にナイフを突きつけながらよく分からない宝石みたいなものを青年に近づける、灰色のパーカーのフードを被った人間、そして2人の仲間の死体があった。
警察が来てから数分が経過したが、未だ状況は変わらなかった。
俺は警察が来た時はやっと助かるんだという、安堵の気持ちでいっぱいだった、サイレンの赤い光が希望に見えた、でも未だに何も進展がないせいで俺はこのまま死んでしまうのではないかという、恐怖に駆られてしまう。
そんな時だった、突然何もない空間からおそらく犯人と思われる奴が現れてた、奴は灰色のパーカーを着てフードで顔を隠した状態で、俺の前にナイフを持って現れた。
そして奴は俺にナイフを向けて宝石のように光る何かを持ちながら俺に言う。
「動くな、そして喋るな」
と、でも俺はいきなりナイフを向けられて混乱したため奴の言葉が全く頭に入らなくて、ナイフが俺の方へゆっくりと向かってきた瞬間、条件反射なのだろうか。
「いや、いや、嫌だぁぁぁぁ!」
と泣きながら喉が潰れるような声量で叫んだ。
その瞬間ドアが変形して警官達が入ってきた、普通に考えて非現実的な事だが今の俺からしたらどうでもよく、ただ助かりたい気持ちでいっぱいだった。
俺は彼らに震えた声で泣きながら懇願した「助けて」と
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