第2話 物欲に敗北
「みんな早く席に着けーホームルーム始めるぞー」
先生の一声で皆が席に着き始める。
そして先生の挨拶し、先生がプリントを配布したり配布したプリントについての説明とかをしている、ほとんど聞いてなかったがあるプリントの説明だけは耳に止まった。
「最近、この辺りで殺人事件が起きています、それを踏まえて今日から下校時間が5時30分になります。皆さん帰りは寄り道せずまっすぐ帰りましょう。そして次に…」
(朝、父さんが言ってた事かな、でもそんな奴に出会うなんてよっぽどないだろ。下校時間も俺にとっては関係ないしな)
俺はその話を聞き流し、今日の放課後どうするかをホームルーム中ずっと考えていた。そしてある程度の予定を練ったところでホームルームが終わり授業が始まる。
1限目 「泉、起きろー」
2限目 「泉、寝るなー」
3限目 「泉、眠いなら顔洗ってこい」
4限目 「泉!起きろ!泉!」
午前中の授業で聞いた先生の声はこの4つのみである。まさか4人全員から聞いた言葉がほぼ似たような内容だとはおもわなかった。だが授業全て寝たのに未だに眠気がある。
(眠くて食欲がない、昼飯、後にしてとりあえず寝るか)
そう考え、机に伏せようとした時。
「泉、お前いくら何でも4時間連続で寝るのはヤバいって、それにお前4時間目の数学怒られて初めて起きたし、一体どんな生活を送ったらこんな風になるのか」
瀧に嫌味っぽく言われた、そして瀧が俺に話しかけた現場を見たからか瀧のグループの陽キャ共が俺の周りに集まり出した。そこでもやはり俺が寝た事の話題ばかりだ。話を聞いてるのもバカバカしいのでゼンオタ達のもとへ行こうと席を立つと陽キャの1人に肩を掴まれてこう言われた。
「また、あのデブと陰キャのとこに行くのかw」
俺は実とゼンオタをバカにされてかなりイラッとした、正直顔面に1発ぶち込んでやりたい気分だがそいつに対して何かをする度胸は生憎俺にはない。
だから俺は心の中でそいつの事を罵倒しながらボコボコにして教室を後にした。
そしてあいつらと飯を食ういつもの場所へ向かった。いつもの場所とは一年の教室から少し離れた屋上への扉がある、階段の1番上の小さな踊り場だ。
「お前ら、ごめん少し遅れた」
「泉、来たんだ。てっきりまだ眠くて昼飯食べずに寝てるかと思ってた」
「某も」
「いや、お前ら何?エスパーか何か?」
「図星かよ」
「一体、何時間寝るつもりでござるか?」
二人は呆れた表情をしていた。俺は2人に俺の思考を読み取られていた事に驚きながら、弁当を食べ始めた。そしてゼンオタがパンを食べながらある提案をする。
「お主ら今日の帰りGUN GUN寄らないか?」
GUN GUNとはフィギュアやエアガン、ラジコンなどの男のロマンが置いてある場所である、そこに行こうとゼンオタが言い出したのだ。
「何で急に?」
「今日が魔法少女マジカルアンナのフィギュアの発売日だからでござる」
正直この情報にはクソ程興味が湧かないし、何より朝練った予定を崩したくないので、断ろうとしたが次の言葉で考えを改めることになる。
「泉殿がこれに興味を示さないのはわかるがこれだけではないぞ、なんと、泉殿が好きな戦車のティーガーIのフィギュアが発売されるんでござるよ」
さっきまで断ろうとしてたのに俺は朝練った予定なんて何処かに捨ててティーガーIという魔法の言葉に思考が支配された。
しかし一瞬、朝の父さんの話と先生の話が脳裏をよぎったが、そんな物すぐに忘れて己の物欲に従った。
「その話、乗った!」
声高々とと宣言してしまった。
「実もくる?」
俺はそう聞くと実は少し考える素振りを見せる。
「行くけど少し待ってくれない?」
「いいけど、なんか用事でもあるの?」
「実は放課後、先生に実験器具を運ぶの頼まれたからさ」
俺だったらおそらく適当な理由をつけて断る事を実がやる事に俺は感心した。
「え、お前ちゃんと引き受けるのか、偉っ!」
「某なら絶対に適当な理由つけて断るでござるな」
俺とゼンオタの考えが全く一緒だったので案外俺らの思考回路は似てるのかもなと嬉しくも悲しくもない複雑な感情を持った。
「わかった、校門前で二人で待っているわ」
「ありがとう」
5、6限目と時間はあっという間に過ぎていきいよいよ待ちに待った時間が来た。皆が部活に勤しむ時間だが俺達はどこにも所属していない謂わば帰宅部だ。
俺とゼンオタは実が来るのを待った、正直早く行きたすぎて体が勝手に自転車を漕いでしまいそうな気分だった。5分ほどで実が来て俺達はGUN GUNに向かった。
そして道中他愛もない話をしているといつの間にかGUN GUNについていた。その周りは通学路と違って建物が多く、車通りも多い場所で俺からすればちょっとした都会だ。
そして3人はそれぞれ目的の場所へ。
実はエアガン売り場
ゼンオタはフィギュア売り場
俺はフィギュアだがゼンオタとは別の位置にある場所へ、そこには魅力的な戦車や戦艦、戦闘機のフィギュアが多数置いてあり、それを見ている時間はまさに至福であった。
だがここに来た本来の目的は新発売のティーガーIのフィギュアである。例の物を見つけ、そのフォルムにうっとりしてしまいつい6、7分ほど魅入ってしまったが早速買おうと思い値段を見た。だけどその値段はとても一般の高校生が買えるようなものではなかった。
(ま、それもそうか、新発売だしそれに大きさからまぁ、キツそうだとは思ったけど、はぁ)
買う事は断念し2人の様子を見に行った。
実の方はとても興奮しているのか鼻息を荒くしながらこう言った。
「見てよ泉、この銃はね89式小銃って言ってね陸上自衛隊の主力小銃でね………」
まぁ、この後はたくさん蘊蓄を聞かされたよ。
まぁ、でもこっちはまだ会話してて楽しいから良かったが一方ゼンオタはの方はと言うと。
「泉殿、見てくれよこの衣装、それにこれ着せ替えもできるし後、顔も変えれるし、それにそれに……」
同様にまた蘊蓄を聞かされたが、銃の話ならまだしも俺の全く知らないアニメのキャラクターの話を聞かされたのでかなり疲れた。
こうして2人の蘊蓄を長々と聞いているとあっという間に日は沈む。流石に帰らないと親がうるさいと思い、2人に帰る事を伝えた。2人はまだ見ていたいらしく俺だけ先に帰った。
そして店を出てしばらく自転車を漕いでいると、急に悪寒が走った、ふと後ろを振り向くと、数10メートル後ろに暗くてよく見えないが誰かいた。
すると次の瞬間、さっきまで数10メートル離れた位置にいた誰かが突然消えた。不気味に思いながらも前を向くとナイフを持ったフードを被った顔のわからない誰かが自転車の籠の上に立っていた。
俺は焦りと動揺で自転車から転げ落ちてしまった。
(やばいやばい、取り敢えず急いでどこかに隠れて警察に通報しないと)
すぐに立ち上がり、転んだ怪我をものともせず俺は全速力で走り出した。振り返って奴がどうなったか確認すると俺の倒れた自転車あたりにいるはずの奴は消えていた。奴が消えた事が不気味に思い、どこにいるか分からない奴から逃げるためただひたすらに走った。
助けを求めようにも周りに見えるのはのは田んぼぐらいしか、別に建物がないわけではないがあるのは無人の工場ぐらいしかない。今の状況に混乱しながらひたすら足を動かしていると、今まで生きてきた中で感じた事のない悪寒を感じ、反射的に頭を下げた。
すると俺の頭上の空気をナイフが切り裂く。
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