第4話 救いたい
『すまない。本当は、そんな事が言いたい訳じゃないんだ。……すまない』
わずかに開いた窓から聞こえた、その声は。
先程ソフィーを追い返した男の声だった。
「……きっと、何かあるんだろうな、あの人には」
どうにかして力になってあげたいが、また行っても同じように突き返されてしまうだろう。
「どうしたら、心を開いてくれるのかな」
そんな事を考えつつ箒に跨る。
「……分かった、毎日尋ねてみればいいのかも!うん、よし。そうしてみよう」
それからと言うもの、ソフィーはその男の家に通い続けた。
何度も突き返されるが、めげずに尋ね続けた。
——そんなある日。
「こんばんわ〜、魔法使いさん」
「……またあんたか。何しに来たんだ。早く帰ってくれって何回も……」
「……名前くらい、教えてもいいんじゃないですか。わたしは貴方の事、心配してるんです!貴方はきっと、何かに苦しんでる。そんな気がして」
「……あんたには、関係のない事だ。それにもう俺は、魔法なんて使いたくない」
「使いたくない?あの時は使ってたのに?」
「〜ッ!いい加減にしろ!早く帰ってくれ!」
そう言われ、バタンと扉が閉められる。
「……魔法使いさん」
扉の前でぽつりぽつりと呟く。
「私を助けてくれた日、聞こえちゃったんです。魔法使いさんが、『すまない、そんな事を言いたい訳じゃないんだ』って言っていたのを」
「……」
「きっと、何か理由があってわたしの事を遠ざけてるんじゃないですか?」
扉の向こうで、ハッと息を呑む音が聞こえてくる。
「わたしは魔物達なんかに負けません。他の人に守られるほど弱くもないです。……だから、だから、お話、聞かせてくれませんか。力になりたいんです」
返事を待っていると、ドアが開いて男性が姿を表した。
「……どうして、」
「……?」
「……何故、そこまでする?お前の事を散々遠ざけてきた俺に、何故そこまでするんだ」
「どうして……どうして、でしょうね。……確かに散々遠ざけたりしてちょっとイラッとはしましたよ?……でも、」
「……」
「でも、苦しんでる人がいるの、放っておけないんですよ。……みんなが幸せであるべきだと、思うんです」
「……話せば長くなる。家に入れ」
そう言って中に入っていく男性を見て、ソフィーは嬉しそうに返事をする。
「……!はいっ」
中に入れば、前と変わらない、男性の家だ。
「……こんなにしつこいのは、お前で2人目だ」
「2人?」
「そこに座ってろ、茶と菓子を持って来る」
「はぁい」
言われた通りにしていれば、男性はすぐに茶と菓子を持って現れた。
「わ!美味しそう……ええと……手作り?」
「んな訳あるか。売ってるやつだ」
「そっかぁ〜、いただきます」
「何で残念そうなんだ」
「いえ、別に」
「……話が逸れたな。戻そう」
魔物と冷淡な魔法使い 如月雪人 @Kisaragiyukito
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