最終話 本能寺
お殿様
どうした、鈴
最近、夢に出てきます
何がだ
あの男の人達が
そうか
それ以上言うな
そのような事はないようにしたから
心配はない
それでも怖くて
わかった
ここから、離れたところに本能寺という
静かに過ごせるところがある
そこで、私としばらく過ごそう
部屋に帰っていなさい
はい
辰之進
は
明日から鈴と本能寺でしばらく静かに暮らす
いえ、それはいけませぬ
どうしてだ
この城は優秀な者に任せられますが
本能寺では、どこの国の刺客が襲ってこぬとも限りません
そうだな
それでは、少数ではありますが我が国の精鋭部隊を
待機させましょう
わかった
できるだけ
信長様と鈴様の邪魔にならないところで
待機しております
もちろん、何かありましたら
私が指揮をとりますので、ご安心ください
よし、頼むぞ
本能寺にて
どうだ、鈴
静かで落ち着くだろう
兵が少しばかりいるが隣の建物にいる
二人だけだぞ
ここで暮らせば辛い思いも忘れられる
はい
ありがとうございます
明智光秀の出陣にて
川畑
そろそろ、出陣するか
はい
信長様も大人げない
しかし、命令には従わないといけないだろう
おっしゃる通りです
でも、500名の兵では死にに行くようなものです
仕方ない、行くぞ
わかりました
全軍に告ぐ、ただいまより隣国に攻め入るのだ
は
覚悟はいいか
おおお
よし
鈴、散歩でもしようか
はい
本当に静かですね
何事もないくらい静かだ
この時が永遠に続くといいのだがな
明智様
もうすぐで、隣国との境になります
どうして
あれだけ尽くしておきながら
戦略を練って私が勝ち戦に導いたのは私ではないか
どれだけ、信長様を思っていたか
なぜだ、なぜだ、私にはわからぬ
このような仕打ちは考えられない
死にに行くのを待つばかりか
明智様
道が分かれておりますが
右側が隣国になります
どうされましたか
明智様
川畑
左に行くのだ
いえ、聞いた話によると
左は本能寺です
信長様と鈴様がお過ごしになっていると聞きました
知っておる
だから左に行くのだ
皆の物、聞け
敵は本能寺にあり
殿、それはいけませぬ
おやめ下さい
バサ
逆らうものは斬る
川畑、本能寺だ
は
タカッカ タカッカ タカッカ タカッカ
お殿様
馬が走る音が遠くから聞こえます
わかっておる
辰之進様
どこかの軍が攻めてくるようです
よし、信長様を全力で守るのだ
私は命を捨ててでも信長様を守りましょう
お殿様
大丈夫でしょうか
大丈夫だ
鈴
少数精鋭の軍がいる
はい
なんと、光秀ではないか
ははははは
私を裏切ったな
それはこちらが言う台詞だ
どれだけ、信長様に尽くしと思うか
よし、信長様
いや、信長に火の矢を放て
信長様
光秀は500の軍
我々は50にも満たないです
しかし、少数精鋭です
必ず守り切りますので
ご安心ください
わかった
ヒュー ヒュー ヒュー
信長様、火の矢が飛んでまいります
裏の方に竹林があります
裏門から逃げて下さい
正面は私が指揮します
早く鈴様と逃げて下さい
わかった
正面に辰之進がいる
辰之進に向かって火の矢を放て
ヒュー ヒュー ヒュー
カン キン キン
くう、防ぎきれないか
辰之進様
門の上から矢を放っていますので
斬り合うのが困難です
次々とやられていきます
なんとか、信長様をお守りするのだ
信長様、早く逃げて下さい
鈴
裏門から逃げるぞ
はい
うううう
辰之進様
これまでか・・・
信長様
どうか逃げ切ってください・・・
ハタ
辰之進様
辰之進様
ヒュー ヒュー ヒュー
ううう
次々に倒れていくぞ
うううう
鈴
ここだ
ははははは
光秀
ここから、逃げるだろうというのは容易に予想できたぞ
何、裏門も囲まれているか
鈴様も私の妻になればよかったものの
残念だが仕方ない
よし、信長をめがけて火の矢を放て
ヒュー ヒュー ヒュー
鈴
すぐに寺の中へ入るぞ
はい
はははは
寺の中で焼かれるといい
ヒュー ヒュー ヒュー
鈴
申し訳なかったな
いえ、お殿様とお会いできて幸せでした
パチ パチ パチ パチ
お殿様の足元に水をかけてしまいましたが
優しく許してくださいました
パチ パチ パチ ゴオ
いずれ、この寺も燃え尽きてしまう
しかし、鈴への想いは尽きない
初めて鈴を見た時のように
私の気持ちに火が点いたようだ
ボー パチ ガー パチ
ガタ ゴトゴト ガー
バキ バキ グオオ
はたして、この火のよう情熱を持ったお殿様を
ガー ゴト ボオオ ガーン ドーン
ドワアアン
癒してあげられることができたでしょうか
バチ バチ ガーン
ゴーン
十分だよ
鈴がいたからこそ
戦で辛くとも・・・
ガタガタガタガタ グオオオ
鈴
大丈夫か
熱くないか・・・・
ガガガ ゴトゴトゴト バチ
グオオオオ
お殿様こそ
ドーーン ボアオウウウ ゴトゴトゴトゴト
ガアーン
お願いがあります
なんだ
一度でいいですので
お殿様のことを
信長様と呼ばせてください
鈴
そうだったのか
鈴
お殿様
違う
お殿様
違う
信長様
ボオオオ バキ バキ バキ
ドーン
そうだ
熱くないか
鈴
ガキ ゴオオ ボワアア
バキ バキ ドーン
そこに縄がる
あれで手と手を結ぼう
そうすれば
いつまでも、一緒だ
バキ バキ バキ
信長様
熱くないでしょうか
やれやれ、火が迫ってくるな
鈴
もう少しそばに寄りなさい
火の手が迫ってくるぞ
パチ パチ パチ
バチ バチ
はい
私の手をしっかり握りなさい
熱くありません
信長様
バチバチ ゴオオ ボワアア
熱くありません
私もだ
バチ バチ バチ
熱くはありません
ドワアアン ガタガタガタ ドドーン
信長様
鈴
もっとそばに来てくれ
熱くありません・・・
バキ バキ バチ ドーン
ドガアン ドドド
ドドドド ガーン ガラ ガラ
ガラ ガラ ガラ ドガ ガラ ゴーン
もう一度、信長様の足元に水・・・
鈴、鈴、鈴
ドドーン ガラ ガラ ガラ
バチ バチ バチ
ボオオオ
ドガガガ
鈴
信長様
鈴、足元が冷たいぞ
申し訳ありません
よい よい
バキ ガラ ガラ ガラ
ボワワワ
ドドーン
完
本能寺の恋 虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori
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