第12話 葛藤の末に

これは光秀様


鈴様


今日はどうなされたのでしょうか


いえ、鈴様はいつも信長様のおそばにいらっしゃるのでしょうか


はい


共にされない時がありますか


いつも、一緒にいるわけではありません


わかりました


そろそろ、信長様のところに行かなければいけませんので


わかりました


今日も花を持って参りました


いつも、有難うございます


明日から毎日お会いしに参ります


しかし・・・


それでも、私の想いが通じるまで参ります


わかりました




信長様


どうした、辰之進


最近の事ですが何故か明智様が

毎日のように城に見えられています


なに


いつも花を持って来られ

鈴様に差し上げているようです


わかった

光秀をただちに呼べ





信長様、いかがなされましたでしょうか


光秀、隣の国を攻めろ


なぜでしょうか

あの国を攻めても何の得にもなりませぬ


私の命令が聞けぬのか


いえ、わかりました


光秀が総大将だ


とんでもありません

信長様がいて今までの戦は勝ってきておりました

私はただの参謀にしかすぎません


かまわん


どの位の規模の兵でいけばいいのですか


お前なら500もあれば十分であろう


とんでもありません

たったの500で、勝てるはずがありません


それなら、お前一人で行ってもよいぞ


何故、そのような事をおっしゃるのですか

私一人で戦えるはずがありません


弓矢の代わりに得意の花でも投げてやればよかろう


わかりました




鈴を呼べ



どうしましたか

信長様


光秀とは二度と会うな

わかったか


わかりました


鈴は私のそばにいるだけでよい


はい




何故だ、何故だ、何故なんだ

あれほど信長様に尽くしてきたのに

私に死を与えるとは

私が信長様に何をした




明智様


川畑どうした


最近、明智様が元気がないように見受けられます


気のせいだ

そういえば、近くに隣の国へ戦へ行くことになった


あそこの国と戦って何の得もないではありませんか


そうだろう

川畑

私が信長様に何をしたというのか

しかも、500の兵で出陣するようにとのことだ


我々に死ねということではないでしょうか


もう一度、信長様にお願いに行く



城の中にて



あそこに、鈴様がいるではないか

相変わらず美しい

どうして、私の妻になってもらえないのか

信長様も来た

隠れろ


鈴、最近は光秀は城に来るのか


いえ、あれから

一度も見えられません


鈴は光秀のことをどう思っている


優しいお方だと思っています

きれいな花を持ってきてくださって

うれしいです


私と光秀とどちらを想っているか


それは

もちろん、お殿様です


実は私も花を持ってきたのだ

受け取ってくれるか


はい

何よりうれしいです

お殿様のことを、いつも想いながら食事を作っています


そうか

私も鈴を忘れたことは一度もない




そうだったのか

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