アイディアを捨てる前に考えるべきこと

 ミステリにおける殺人事件、あるいは密室。


 それに類するものが各ジャンルにあると考えてみる。


 つまりジャンル小説として主眼となってくるアイディアだ。作品の顔となる要素であり、構想する上で真っ先に決めるべき部分。


 恋愛ものならヒーロー、ヒロインの造形、あるいはシチュエーションだろうか。


 伝奇、歴史ものなら、歴史的事実の新しい解釈。


 ホラーなら広い意味での怪物。


 サブジャンルまで視野に入れれば、より細分化できるだろう。


 とにかく、まずそこを考える。というより着想をそこにつなげる。


 ここではまず最低限、話として成立するアイディアが浮かべばそれでいい。重要なのは見せ方だ。


 ミステリーでたとえよう。


 ありふれた密室トリックなら最初に明かしてしまうのも手だ。倒叙形式にしてもいい。トリックを実行しようとしたところ何らかのイレギュラーが起こる。あるいは完璧に見えたトリックのどこかに綻びがあり探偵に見抜かれてしまう。そういう展開にもできる。


 あるいは、あまりにも偶然に頼り過ぎたトリック。その場合もやはり最初に犯人を明かしてしまう。そういう手もある。犯人を限定し、どうすれば犯行が可能だったかという方向で推理させる。つまり、真相以外の方法では犯行は不可能だったという風に設定する。どれだけ偶然に支えられていても、物理的に、それ以外の方法はあり得ないのだと。

 

 いずれもトリックだけ見れば不完全で弱い。しかし、見せ方次第でどうとでも活かせる。筋が通ってさえいればいいのだ。


 これと同じことが他のジャンルでも言えるかもしれない。


 魅力的じゃないヒーロー、ヒロイン。


 ぱっとしない新説。


 ちっとも怖くない怪物。


 そうしたものを活かす発想で物語を作ってもいいのかもしれない。捨てアイディアなどひとつもないのかもしれない。むしろ停滞したジャンル小説に新風を吹き込むチャンスとなるかもしれない。不恰好なアイディアなればこそ新しい演出を考える余地があるのかも。


 まずはジャンルの核となるアイディア。そして見せ方。最後にストーリー、キャラを整える。


 そんなことを意識してみるといいかもしれない。 

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ほろ酔い創作語り~思いつき創作論を断定口調で書いてみる~ 戸松秋茄子 @Tomatsu_A_Tick

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