11 やりやがった②
「我が領空に戦艦が侵入! その数五隻! 母艦の周辺を小型戦闘艇が隊列をなして接近中です……!」
青白い顔をして肩で息をする兵士が告げた言葉にジタン王は目を剥く。勢いよく立ち上がった拍子に、徴兵対象年齢の引き下げをおこなう王令書が机から落ちた。
「いきなり戦艦だと。プロキオン帝国め」
まだ艦の所属まで口にしていなかった兵士は驚いていたが、ジタン王は帝国が動き出す予感を前から抱いていた。
「
そばにひかえるラッセンの鋭さにうなずきつつ、ジタン王は「連合軍に連絡を入れろ」と指示した。ラッセンはずけずけ物を言う性分はそのままにメキメキと腕を上げ、近衛兵長にまで昇進していた。
プロキオン帝国は国際連合に加わることを拒みつづける独裁国家だ。その指導者は世界の中枢となることを企み、連合の警告を無視して兵器開発を進めてきた。少しでも気に入らないことがあれば平気で周辺国に砲口を向ける輩で、連合も下手に手出しできない状況がつづいている。
国交は一切断絶している国だが、表向きとつけ加えておく。貿易も観光収入もなく、兵器開発を継続しておこなえる資金の出所が怪し過ぎるからだ。
そんな濃い霧に包まれた国に風穴をあけた存在が、ゼクストとミグだった。知能と両足の発達が遅れている幼子と、到底一般人とは思えない大柄な肉体を持つ男の組み合わせは見るからにわけありだった。ゼクストは最初、自らが帝国から来たことも隠していたが、ジタン王が根気強く友情と信頼を築くとぽつぽつと語りはじめた。
ゼクストはプロキオン帝国の軍人だった。それなりの地位に就いていたのだろう。そして彼はある日、なにかを知ってしまった。それは彼に祖国で築いてきたものの一切を捨てさせるほどの威力を持ち、そして間違いなくミグに関することだった。だがゼクストは幼子のこととなると強固な警戒心を見せた。
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