幼なじみは最強!? 俺もそう思う。


 俺は信じられない程の力をロウ爺に貰った。目の前の母女神が眉間に皺を寄せて、俺を敵として見ている。


 凄いなロウ爺。俺とは次元が違った。


 しかも丸眼鏡女神がどこに行った? まさかロウ爺が倒したのか? それぐらいの力はあるだろう。


「ランクアップの時にお会いした騎士様じゃないですか。娘が大変失礼しました」


 騎士様か、大切な者を守りきれなかったのにその役職は重すぎる。


 俺は母女神に聞くことにする。敵対の意思があるのかと。消えた丸眼鏡の女神は母女神とか関係がない事も考えられる。丸眼鏡の女神が消えて、母女神が出現している状況では、復讐の線が有力だが。


「戦うしかないようだな」

「何故ですか?」

「帰ってくれるのか?」


 丸眼鏡女神よりも最高神の方が望みがあるのか?


「はい、魔神の加護を持っている人族を殺したら帰りますけど」

「ビックリさせんなよ。俺が戦うことは変わらない」

「老人が貴方に力を贈っていました、それで私と貴方の実力差は無くなり、私でもどちらが勝つか見えないです」


 最高神はロウ爺に力を貰っていることを知っているのか? 最高神と変わらない力を俺に贈った? 正直意味が分からないが、アイラを守るために使わして貰う。



 肌寒い今日みたいな日だったな。俺が手に持っているパンを鳥にサラッと奪われたように幼なじみが死んだのは。思い出しても全然、不思議と夢だったんじゃないかと今でも思っている。


 そう、朝起きたら、ソフィアが「おはよう」と言ってくるような。


 でもそれはアイラと積み重ねた俺の一日一日が夢じゃないことを証明している。俺にはそれも大切な思い出だ。



 目の前に原初の剣が現れる。それを右手で持つ。


 ジャリと砂の感覚を足に感じ、足に力を込める。剣は空を描き、剣先は女神へ向ける。左手は剣先に添えるだけで、剣の震えが止まる。


「これは対等になったからこその提案なんだが、アイラは俺が命に代えても魔神側にはやらん。だから手を退け」

「いいえ、魔神側とか女神側とかじゃなく、魔神の加護を持っているということが問題なのです」


 なんでだ? スキルはスキルだろ。


「魔神といつでも繋がれるというのは女神側にとっては脅威なのですよ。長い年月をかけて魔神のオーラを浴びた娘は魔神の加護を得る」


 俺のオーラで小さい頃から守っていた。俺のオーラに包まれたら女神は見えなくなる。そして女神のスキルは見えないと付与できない。


 俺は街に転移しただけだ。待てよ、転移させたのはロウ爺だ。ロウ爺は、どこまで知っていたんだ。


「魔神の加護は魔神のスキルを幾らでも詰め込める。この女神の世界で魔神にとっては唯一無二の穢れのない器なんですよ」


 それでか。じゃあ女神も退くことは出来ないと。


 ガンガンと原初の剣にオーラを送る。この場所から消える感覚があり、母女神の目の前に転移した。


 剣で突きを繰り出すと、女神は驚いて身をよじる。剣の突き出した衝撃で、森が一直線上にくり抜かれ、山までも大きな穴が空いた。


「へぇー、避けるんだ」

「避けないと貴方のオーラで死にますので、避けれてもないですけどね」


 俺の動きが速くて、もう女神の方が追いついていない。


 女神の左肩から腕がなくなっていた。また転移で距離を取り、考える。なんで母女神は丸眼鏡女神のように左腕を回復させないんだ? 一突きで俺のオーラが至るところにある。そのオーラが原因か? 最高神で回復のスキルを持っていないのか? 女神はスキルでは回復してないような気がする。


 女神の結界が全て無くなれば魔神が復活するらしい。じゃあ女神も魔神と一緒だから女神の領域が無くなれば復活しない、回復しない。領域が無くならないと思っているから、回復スキルの需要性がない。回復スキルを持っていてもレベルを上げていないんじゃないか? 女神の領域という絶対安全な空間だから起こった驕り。


 俺のオーラは領域を塗りつぶせるんじゃないかと仮定すると、腕が回復しないことに納得出来る。考えが違えば、また考えればいい。


 そう、俺にはその力がある。



「神殺しだ」


 紫色に張った女神の結界も、青と白で俺のオーラが侵食していく。ここは俺の領域だ。


「これでお前は逃げられない」


 やっと本気になったのか、空中に剣を出したが、オーラで剣が泡と消える。


「最高神のお前が俺に何も出来ずに狩られることな意味があるんだ。俺とアイラにはもう手出し出来ないようにな。女神たちの牽制目的でお前を殺す」

「そうですね。貴方の言う通り、私を殺せば女神たちの牽制になるでしょう」


 左肩を抑えながら、俺を睨む女神。


「おいおい、お前さ。自分が狩られる番になったら、余裕顔を崩すのやめないか。俺たちを家畜みたいに思っていただろ」

「その通りです。家畜を殺して、何がいけないのですか!」



 剣を上段に持ってくる。そして下ろす。剣先がオーラによって伸び、女神の身体を頭から真っ二つにした。


「俺もそう思う」


 左手を握ると、白のオーラが真っ二つにした身体包む。さらにガンガンと左手にオーラを送り握ると、女神の身体が潰れていく。


 ガンガンと、ガンガンと、復活しましたじゃ話にならん。


 フッと、女神の身体が泡になって消えた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る