幼なじみの自慢!? やっと。


 俺はウンディーネを見殺しにした。老人になってた事も影響している。1000年後も俺は生きていなければいけない。


 生命維持にオーラを使っていたから、壮絶すぎる女神との戦いに横槍を入れたら、俺は1000年持たずに死ぬだろう。女神が出てこず、スキルをモリモリ盛った人族が相手だけどな。ただウンディーネだけは人族に攻撃することはなかった。


「一年欲しい、そしたら戦わずに消えるから」


 そう勇者と約束を交わし、150年の旅をした俺とウンディーネとの二人旅は終わった。長かったし、楽しかった。俺が老人になるまで続いたんだ、前世よりも生きたしな。


 女神の加護を持った人と勇者。この戦いは本当にしょうもない。ただ女神の領域にいる女神よりも、魔神の領域にいる女神の方が信仰度を大きく上回ったことで戦いは起こった。


 勇者と加護持ちは女神側で、人族にはスキルの制限を決め与える。洗脳と人質や殺しも女神側はなんでもありで、魔神側を追いやった。最後にウンディーネが残ったが、一年後に消えて、魔神が生き返らないように結界を張って駆除は完了とした。


 そして人族が魔神の話をしているのが見つかったら、そく殺された。魔神側の人族も女神を恐れて、魔神を語ることをやめた。語ることをやめたら、でっち上げられた話しかなくなる。それが昔話の経緯。


 女神と魔神の微かに残るこの世界で俺はグラスール家の執事となった。グラスールは勇者と一緒に魔神を追い出した側の人族だが、イフリートという魔神がグラスールを殺したらしい。


 俺はウンディーネについて居たから、他の魔神とは接点がない。ウンディーネは魔神と会うのを嫌がっていた。見つかったら教会をつくらされると言って、魔神を避けて旅をしていた。


 それもソフィアらしい。



 何故魔神を追い出したグラスール家に執事として入ったのかは、ソフィアが生まれるからだ。まぁ、ロウ爺もやってたし。ソフィアにロウ爺と言われる日が来るのかな。それはとても楽しみだ。





「お前は誰だ! その凄まじいオーラはなんだ!」

「私ですか。長生きしているそこら辺のジジイですよ」


 俺は今、丸眼鏡の女神と相対す。


「やっとです、やっと」


【ロウジー】

スキル】 EX水仙魔法S(9999999)99999 EX経験値増量 女神の加護 魔神の加護


 女神が俺の身体を貫く。心臓が潰れた音が全身に行き渡ったらところで、女神の存在を消す。オーラで女神を包んだら存在ごと消えた。


 なんでロウ爺がここまで強くて、俺に託したんだろうとずっと思っていたが。


 あぁ、やっとわかった。ロウ爺は死と使命の中間に居たんだと。


 途方に暮れるほどに生きて、生きて、生きた。もうさっぱり忘れてしまった。喜んだ、笑った、泣いた、悔いた、怒った。それだけを幾つの感情をループしたんだろう。


 俺の身体じゃなくなった時から、忘れる準備はされてあったのだろう。


 絶望を俺に与えてくれた女神を殺す。それもやっぱり何処か他人事のように感じる。



 丸眼鏡女神を消して、すぐに降りてきた母女神。


 だから母女神と対面しても、ムカつくだけだ。でも俺は記憶を移しただけ、本物の怒りとは違う。


「久しぶりだな」

「あれ? 私は女神の領域から出たことがないんですけど、どこかで会いましたか?」


 思い出した、母女神は優しい声音から淡々と喋るんだ。


「そんなに実力差があるのに娘から、何故心臓を捧げたのですか?」

「俺もわかんねぇ」

「貴方だったら私を殺すことも出来たでしょう」

「最高神様にそんな褒めなれるなんて光栄ですね」


 俺は背筋を正し、綺麗にお辞儀する。これが執事の嗜みだ。


「いや、俺じゃお前を殺せなかった」

「そういう事ですか」


 母女神は眉間に皺を寄せる。そんな顔、初めて見るな。


「俺が戦うんじゃないから安心しろ。そこで死にそうになっている奴に戦わせる。お前に勝ったって俺じゃ意味無い」


 俺は死にそうなライヤの横へ行き、オーラを流す。母女神はそれを見守っている。


 俺の身体が星のように輝き、オーラになってライヤの身体に入っていく。





 真っ暗な世界で、ライヤがポツンといた。俺はライヤに近づき、肩に腕をかけて、後悔を言う。


「一つ、私は女神を倒せなかった」


 あと一歩だったんだ!


「一つ、私はアイラを助けられなかった」


 目の前でアイラが死ぬのは、もう俺の時で充分だ。


「一つ、貴方には未来を変えられる可能性があります」


 ここで終わらせる!


「ほら、立ちなさい。この水仙魔法の神秘を体現するのは、いつだって理不尽に抗おうとする諦めない想いです」


 早く、立て!


「お前は立てる。アイラが死んでもいいのか?」


 こう言うことしか言えねぇ俺にはなるなよ。


「あぁ、もちろんだ。俺も俺のことが嫌いだからな」


 俺が入ってきた出入口に向かってライヤの肩をポンポンと押す。お前も老人になって出直して来い。俺はシッカリと生きて、やっと幼なじみやウンディーネに自慢できるんだから。









 勇者の物語とかなら聖女様がこういう時に出てくるものだが、ロウ爺ってなんだよ。俺の場合は幼なじみや、アイラだろ。


 なんかちょっと力が湧いてきた気がする。


 地面を這い、腰を立てて、足で踏ん張る。


「第二ラウンドだ」




【ライヤ】

スキル】 EX水仙魔法S(10000000)1100 EX経験値増量 




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