幼なじみの面影!? どうか。
女神を倒したんだ。早くアイラのところへ。
「いっ、たいな〜。まさかここまでやるなんてね」
そんなに簡単に殺されないって分かってたよ。後ろに振り返り剣を振るが、今回の女神は右腕で剣をガードしていた。腕でガードしているのに、かすり傷すら付かない。
赤ジャージではなく、白のワンピースに姿を変えて。それが女神の戦闘服か? 鳥みたいな白の羽が女神の背中からついている。気色が悪い。
「もう貴方の攻撃は効きませんよ」
そう最大の力を剣に注ぎ続けているが、女神の右腕のガードはピクリとも動いていない。オーラも滝のように流れて一撃必殺みたいな感じなのに見掛け倒し感が否めない。
オーラの力で女神の次の動きを察知した。スローモーションの世界で女神を右手を下げる。そしてそのまま俺の腹を貫いた。
俺の限界の先の動きを女神は、さも当然のようにやってのけた。
そして女神は貫いた右手を引き抜く。その右手には血もついていなかった。
オーラも女神の動きにやっと追いつき、俺の顔にオーラが集まると、女神は俺の顔面を殴る。オーラはパンッと弾けて、威力は抑えたのか腹みたいに貫かれることは無かった。
グルングルンと空と地面を無数に見て、頭、足、腹と地面に当たる。それでも止まらなく、木々を何十本と倒して止まった。
ボロボロになった身体で立ち上がると、身体は腹が貫かれた事にやっと気づいたのか、血が吹き出すほどに溢れ出ていた。俺は感覚が麻痺しているのか痛みは感じなく、少し身体が軽いと呑気なことを思っていた。
貫かれた腹はオーラが何とかしてくれても、明日を生きることは出来ないだろうなと楽観的に考える。
俺がここまで生きて来たのは、アイラを守る為だったような気がしないでもない。ギルドにはアイラは俺も親子だという証明書もある。成人して、彼氏が出来て、結婚するまでは働かなくて良いぐらいの金はギルドに預けている。
豪遊しても成人ぐらいだったら、賄える金だ。まぁ、アイラはシッカリしているし、大丈夫だろ。
ちくしょう。明日もずっとずっとアイラと一緒にいたかった。それはもう叶わない。
一つだけはハッキリとしている事がある。女神を道ずれにしないとアイラの明日がないと。
死んでも死なない奴を相手に人族が勝てんのかよ。
神を信じない俺が神頼みをする。
「魔神様、どうか……どうか、目の前の女神だけは殺せる力をください」
そう、俺は世界最強の力とか、便利なスキルとか、勇者になりたいとか、そんな叶わない願いを言う気は無い。
「どうか……」
力が抜ける感覚がある。よろける身体を倒れないように剣を地面に刺した。
あぁ、そうか。俺には時間もねぇんだ。
「どうか、もってくれ。女神が倒れるまでは」
神に願っても、一つまでとは、神を信じていない俺とってはどうでもいい。神頼みと言っても、ただの俺の決意だ。
フー、フーと二度の呼吸のあとに、剣を地面から引き抜き、走る。
遠い遠い近い女神に剣を水平に振る。その剣線は女神の首を狙っていたが、ニヤリと女神が笑うと、女神は何もしなかった。
そのまま女神の首に剣が当たり、精一杯の力を加える。雄叫びも腹から盛大に出した。俺の決意の剣だ。
スっとオーラが消え、身体に力が入らなくなり、足から落ち、身体ごと倒れる。
「女神が本気を出したら、人族なんでこんなもんですよ」
上から目線で、そう言う女神の首には傷もついていなかった。
あぁ、こうなるんじゃないかと思っていた。首を切る事は叶わずに、制限時間もいっぱいになり、上から目線で落胆される。
そんな気はしていた。だんだんと視界も暗くなっていく。
でも……でも……動け! 動けよ! 俺が女神を倒さないと、アイラの明日が来ないじゃないか。
真っ暗な世界で、ロウ爺がやってきた。なんでロウ爺? 俺が見てきたロウ爺はスーツ姿で洗練された所作が綺麗な老人だった。だかそんなロウ爺が肩を組んできた。
「一つ、私は女神を倒せなかった」
なんだ?
「一つ、私はアイラを助けられなかった」
なんだ! なんだ!
「一つ、貴方には未来を変えられる可能性があります」
未来を変えられる可能性?
「ほら、立ちなさい。この水仙魔法の神秘を体現するのは、いつだって理不尽に抗おうとする諦めない想いです」
もう立てないよ。
「お前は立てる。アイラが死んでもいいのか?」
ロウ爺、俺はアイラで俺の気を引こうとするお前のことが嫌いだよ。
「あぁ、もちろんだ。俺も俺のことが嫌いだからな」
ロウ爺は俺の肩を叩いて、光り輝く場所に向かって押す。
勇者の物語とかなら聖女様がこういう時に出てくるものだが、ロウ爺ってなんだよ。俺の場合は幼なじみや、アイラだろ。
なんかちょっと力が湧いてきた気がする。
地面を這い、腰を立てて、足で踏ん張る。
「第二ラウンドだ」
【ライヤ】
スキル】 EX水仙魔法S(41681)1100 EX経験値増量
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