幼なじみと老人!? 勝てますか。
女神が去った後、俺はチャロをエリアーナの横に持って行き、並べた。並べられた二人は心臓の鼓動も動いていない、息もしてない。どうやら死んでる。
幼なじみが死んだら涙が出るかもしれないと思ってた昔の俺に言ってやりたい気持ちになる、涙は出ないと。
今回のことで分かったことは、俺のスキルは皿洗いスキルよりもくだらないということだ。俺は何も出来ていなかった。
「俺はなんのために力を持ったんだ」
そう言葉にした時に、ロウ爺が言っていたことを思い出した。
『 加護持ちから力を貰うという貴方様には大変望ましい力ですね。ですが水仙魔法を持った昔の友人がおりまして、こう言葉を残しました。
『俺はなんのために力を持ったんだ』と、貴方様は加護持ちを殺した時にはどういう言葉を残すのでしょうか? ね』
俺が関わると、加護持ちが死ぬと分かっていた? 女神が来ることを知っていた。
「なんだよそれ、なんなんだよ!」
パシンと自分の頬を殴る。俺はロウ爺に責任を押し付けて、逃げようとしている。怒ったふりが上手になったなと思いながら、頬の痛みを我慢する。
「なぁウンディーネ様よ、ウンディーネが戦ったらさっきの女神には勝てたかな」
悔しくて、悔しくて、どうしようもない。守りったかった者まで、目の前の手の届く範囲でそれでも守れなかった。俺が俺であるように、使えない奴はどうせ使えない。
「なぁウンディーネ様よ、悔しいよ。俺の幼なじみが、守りたかった人が、夢が、一瞬で消えてしまった。これが女神のやり方なのか、魔神のやり方なのか」
ボロボロと、ボロボロと、目がかすみ、両目から頬にかけて水が流れる。口がしょっぱくなり、目頭が熱く、水が温かいとかそんな考えまで過ぎる。
「ハハッ」
これが泣くということか、昔の俺よ。俺は幼なじみが死んで泣けたわ。泣き真似まで上手くなってしまった。これじゃソフィアの仕事取っちまうな。
「ああああ、あああああ!」
膝から崩れ落ち、あ……だけの声を出していた。何度も何度も握る拳には、血が滲み。その手の痛みだけが、俺を責めている気になって、少し救われた。
俺は何日間、王の間へ居たんだろうか。一生分の涙を流して、それが枯れると俺はギルドへ転移する。するとギルドの前でロウ爺が立っていた。アレックス、エリアーナ、チャロの死体を転移させてロウ爺目の前に置く。
「ロウ爺はこの未来が見えていたんですか?」
「私には未来視なんてスキルはございません。ですが、水仙魔法を持っている友人は女神に殺されたのです。もうお分かりですね、おいおい昔の友人と同じ結果をもたらすことは分かってました。女神が降りてきて、魔神族側へついたとおぼしき加護持ちは殺されたのでしょう」
そこを見てきたみたいにスラスラと言葉にしてくれるロウ爺。「貴方はどうなんですか?」とロウ爺は続ける。
「貴方が幼なじみを殺した。……まさか女神が殺したなとど言わないでくださいよ。貴方が関わったからチャロさんもソフィア様も死んだんです。貴方は女神が去った後に、なにを言いましたか? 貴方がなにを後悔したんですか?」
「その昔の友人と同じですよ」
「そうですか、そうですか。私は気分がいい。人族の街まで送ってあげましょう。どうせ、加護持ちとは会えないですよね。デテールの街は余生を暮らすには持ってこいですよ」
俺の景色が一変する。人族が行き交う、人族の街だ。ロウ爺は何者だ? 女神の結界があって、俺の転移じゃ中に入ることは無理だったのに。
「もし、もしも俺が死ぬ気で女神に戦いを挑んだら、勝てますか」
転移ですぐにでもどこかに行ってしまいそうなロウ爺に、もしもを聞いてみる。
「もしもですか、友人は女神に殺されたと言ったでしょう。それが答えです。貴方には想像も出来ないほどに努力して、スキルレベルも上がって、でもダメでした。最後の加護持ちが殺されたのを見た友人は、そのまま自分の剣で腹を切り、自殺しました」
その友人は加護持ちにあって、女神を呼んだのか。レベルはどれぐらいあったんだ?
「貴方と同じ、彼もEX経験値増量を持ってましたよ」
えっ、とロウ爺の顔を見ると、悔しそうな顔をしながら空間に溶けるように消えていった。
そんなに女神は強いのか。
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