幼なじみの失態!? 許せない。
ソフィアは俺から視線を外すと、エリアーナに振り返った。
「キスはライヤからってみんなで決めたよね。エリアーナはその誓いを守らなかった! ライヤが裏切ったことよりも、エリアーナがライヤにキスしたことが一番許せない」
「ソフィアはまだ学生気分ね。成人してもう八年も経っているのよ。好きな人とキスするのに誓いなんて守るはずないでしょ」
誓いとかあったのか。ソフィアは俺とキスをしようとしたことは良いのか? それよりもソフィアはなんで俺が裏切ったことよりもエリアーナが俺にキスをしたことの方が重いのかが俺には分からなかった。
俺のことをエリアーナは好きな人と言った。でもエリアーナは好き嫌いのことでは考えを曲げない。
「エリアーナ! 裏切り者の俺だけど、もう一度お前らの輪に加えさせてくれ。俺をお前らの脅威をから守らしてくれねぇかな」
「しつこいわね、私はライヤが好きよ。これから先もずっと、でも私が感情的に判断をくだしたことが一度でもあるかしら」
昔からの幼なじみなんだ、感情的に判断をくだしたことは一度たりともない。
「水仙魔法は欲しかった、そしてライヤにも会いたかった。おままごとをしに来た元幼なじみなんて会ってもいいことはなかったわ。ライヤの言葉を聞いて、ルーシーが秘密をバラしていないと分かったし。どうせ、「凄く心配していた」だけでしょう。さっさと人族の国へ帰りなさい」
「なんで分かったんだ?」
「なんで? そんなの言うわけないでしょ」
へぇ、とニヤニヤ顔で俺とエリアーナとの会話に入ってくるソフィア。
「僕はその一度を見たことがあるけどね。僕は見てないけど、二度目をルーシーが見たって言っていたな」
周りの温度が急に下がったように感じて、エリアーナを見るとソフィアを睨みつけていた。
「なにを見たの」
「言ってもいいのかな、しかもライヤがいる前で。ルーシーはエリアーナの為に黙ってたみたいだけど、僕は本当に言っちゃうよ。あのエリアーナが王に……」
「言わなくてもいい! ソフィアは知っているみたいね。ルーシーしかり、ソフィアしかり、どうやって私の人生の失態を見たのよ。周りには気を配ったはずなのに」
「あの時のエリアーナは周りに気を配れないほどの精神状態だったからね」
苦虫を噛み潰したようにソフィアから目を離したエリアーナ。俺はそんな時にどこにいたんだ。
「エリアーナに、そんなことが会ったとは知らなかった」
「そりゃそうだよ。エリアーナがそんな奇行に走ったのは全部ライヤのせいだもん」
エリアーナから、シュンと何かがソフィアに向かって投げられた。ソフィアにあげていた俺のオーラがソフィアの前に壁になって現れた。
その壁に果物ナイフ程の剣が刺さった。その剣はチェーンでエリアーナと繋がってる。
「ライヤのオーラは僕も守ってくれるのか」
エリアーナがチッと舌打ちを鳴らして、チェーンを引くと、剣もエリアーナの所へ戻り、その剣もすぐに消えた。
「仕留め損なったわ。次に私のことを喋ったら本当に殺すわよ」
「怖い怖い。けどエリアーナ、僕は許してないって言ったよね」
「キ、キスぐらい、ソフィアもしたらいいでしょ」
はぁ、とため息は吐いたエリアーナ。
「おままごとに付き合ってあげるわよ、これならソフィアも文句ないでしょ」
ふんっ、とソフィアは顔をそらして後ろに下がった。エリアーナの言葉に何も返さなかったのは、俺のおままごとを通すためにエリアーナと張り合ったのか? いや、張り合う程の物があったのに俺を立てる為に退いてくれたのか。ソフィアには感謝してもしきれない。
俺は首を回し、後ろにいるソフィアに感謝を伝えることにする。
「ソフィアあり……がとう……」
ソフィアが腕で胸を貫かれていた。その有り得ない光景に頭が情報を受け付けない。それを仕出かした人物には見覚えがあって、赤ジャージを着て、丸メガネをかけている。赤ジャージは俺を見ながら口を開ける。
「降りてきて正解だった。加護持ちが続々と消えて行くから何かと思えば、貴方、魔神族のスキル所有者だったのね。
加護持ちが、魔神族側に着いちゃダメでしょ。良かった、今回のは始末書で済みそう。加護持ちが魔神族側に寝返った為、処分しましたと、ね」
俺の目の前にいるのはピクリとも動かなくなったソフィアと、ソフィアの胸を腕で貫いている女神だった。
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