幼なじみの姫様!? 許す。


 エリアーナはスルンと俺の手から離れると、俺から距離をとる。


「力を手に入れたから私に会いに来たのでしょう? 私を守るため? 随分と舐められた物ね。最近まで皿洗いを職業にしてたのでしょ。あぁ、昔言ってたわね、騎士になるのが夢だと」


 冷徹な目で俺を下に見るエリアーナ。


「私がライヤのおままごとに付き合えばいいの?」

「そうだ! やっと、お前たちと肩を並べる力を得たんだ。少しぐらい俺の夢に付き合ってくれよ」

「嫌よ」


 イライラオーラを存分に出して即答だった。


「まずライヤと私たちでは身分が違う、守られる必要がない。誰も貴方に言わなかったの? 必要ないって言うことを。貴方が皿洗いをしてる間に、私たちがどれだけ成長したと思っているの? ソフィアもソフィアよ。おままごとにやりたいなら、私を巻き込まないで」


 そうか、そうだよな。俺がここに来るまでにやったことって言ったら村を一つ潰したことだもんな。


「豪運が効かないカジノのトップはエリアーナということで、大丈夫か?」

「えぇそうよ。トップは私。ここでは私が絶対のルール」


 スキル絶対王政の力か、豪運も効かないはずだ。


「ここまで揃えば、馬鹿なライヤでも分かりますね。じゃあ、死んでください」

「え? 穏健派のリーダーが過激派みたいなことをしちゃダメだろ!」

「あぁ、ガラン様は過激派でライヤを殺したいのと、仲間にしたいの両方の理があるみたいですが。私がライヤを殺すのは過激派と穏健派というのは関係がなく、私の個人的なことなので勘違いしないで欲しいのですが」


 個人的なことか、なら良かった。


 とはならない。俺を殺すのが個人的なことなのか? 俺はエリアーナに聞いてみることにする。


「エリアーナに俺がなにかやったのか?」

「いいえ、なにも」


 なにもやってないなら、なんで殺されないといけないんだ? 俺はエリアーナが起きてから怒涛の展開で一切の情報も脳に入ってこない。


「ルーシーもエリアーナが俺のことを凄く心配していたと聞いた時は……」

「待ちなさい! 凄く心配していたとは、どのようにか聞きましたか?」


 俺の言葉を切ってエリアーナが待ちなさいと入ってきた。俺を下に見ていたエリアーナが、一瞬たじろいだ。凄く心配していたとしか聞いていないが、何かあるのか?


「あぁ聞いたぞ、あのエリアーナが俺を心配して」

「待って待って、それ以上は言わないで、ソフィアとチャロもいるんでしょ。それを知られたら、私が死ぬ。ライヤに知られていたことで死にそうなのに。ルーシーは殺しておくべきだったわね」


 エリアーナのなにをルーシーは知っているんだ。姫様なのに口が汚いのは昔からだ。なにもしてない俺が殺されるのも理不尽だし。


「エリアーナに会って、元気だってわかったし、俺もう帰るわ。ここに居たら殺されそうだし」

「ライヤが殺されるのは、私になにもしてないからだもん」

「え?」

「だから! ライヤがソフィアも良い雰囲気だったって、ガラン様から聞いたんだもん。騎士なんでしょ、お姫様が敵に捕まって目を開けなかったらキスして起こすでしょうが!」


 口が悪い他に、あともう一つエリアーナの問題点があったんだ。俺たち、幼なじみと会う前は、お姫様だから城から出たことがなかったんだと。彼女の遊び相手が本しかなかったそうだ。

 だからロマンチックにメルヘンチックな考えを恥ずかしげもなく披露することがある。


 助けた時にキスをしてくれないから、自分からしたのか。やっと謎が解けた。けど、おままごと、おままごとと言っていた人とは思えない豹変っぷりだ。


 俺は片膝をつき、頭を下げる。


「申し訳ございません、姫様。キスはしたことがないので……」


 いや、あるな。アリエルと何度もキスしたことがある。剣を習っていた時に、風呂場の時に、寝ている時に、アクシデントには多すぎるぐらいにキスをやりまくっていた。


『アリエル、悪い!』

『大丈夫、だよ』


 なにもない所で、なにかにぶつかって、俺が転けたのが全ての原因だったと思う。アリエルの唇から顔を離すと、アリエルの頬が蒸気して、吐息が生々しくて、喉をゴクリと鳴らしたものだ。


「女の子とはキスしたことがないので、やり方が分からなかったんです」

「じゃ、じゃいい! 許す!!!」


 王と同じ反応だ。許されたので、立ち上がった。





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