幼なじみからの注意!? ありがとう。
馬車なら一つの街を通り過ぎてもいいので、すごく楽だとチャロは言っていた。チャロは馬車無しで魔族の国の近くまで行ったのか? それなら戻るのがめんどくさかったのも分かるな。聖騎士団の転移陣は人族の領域にしか行けない。魔族領に人族の転移陣があったら、魔族がその転移陣から攻めてくるしな。
ただ魔族領は門がなかった。人族は門の地下に転移陣が設置されていた。魔族領では人族が金を払えば簡単に入れるから、転移陣を各街に設置しては危険なんだろう。
朝からルシャの街を出て、次の街に昼過ぎに着いた。で、また次の街へと街を出た。
スキップする街の名前はソフィアにも聞かなかった。いや、聞けなかった。
オレンジの色が空を覆い尽くした段階で街が見えてきた。
「次の街は」
「……ラクレシの街」
俺がボケっと街の名前を考えていると、隣からボソッと街の名前を言ってくる声が聞こえてくる。ソフィアの方を振り返って見るが、サッとソフィアは顔をそらした。
ラクレシの街か。馬車からでも見えるものがある。街の中に人族のようなの街や国にあるような門があった。
「なんだアレ」
「あれは闘技場ですわよ」
俺の今回のつぶやきにはソフィアは反応しなく、後ろのチャロが俺の言葉に返した。
「1対1で獣や人族、魔族や何か得体の知れない者まで戦っていましたわ。観客席にいる者は勝者を決めるゲームを金を賭けて行う。通称カジノ。人族の華々しい貴族がやるカジノとは違い、魔族のカジノは身分なんて関係ない、銅貨の一枚だって勝負できる、凄くシンプル」
「でもこれが魔族のカジノなら」
「そ、当たりがない勝負に全賭けしたの」
「お前の豪運がバッチリ発動しそうな勝負だと思うぞ」
チャロが二択を外したことはない。シンプルな賭け事だったらチャロが大勝するはずだ。
「私の豪運はお父様が持っていたんだけど、豪運と豪運を持つ人同士が運で勝負したらどうなると思う」
「戦闘じゃなくて、運だけの勝負なんだな。う〜ん、引き分けか、レベル差に左右されることはわかるんだけど」
「レベル差。良いところまでいったんじゃない。答えは1でもレベル差が着けば、少ない方の豪運スキルの恩恵は無くなる、が正解! あのカジノを運営してる方は私よりも豪運のレベルが高いんだと思いますわ」
俺がチャロから豪運スキルのことを聞いたのが、「お父様の豪運スキルのレベルを二超えましたわ!」と自慢していた時だ。父親は四で、チャロが六。俺とチャロがまだ六歳にもなってない時じゃなかったか? 最低でも十三年は立っていることになる、豪運スキルもレベルアップしているだろう。
女神の加護は俺の経験値増量のようにレベルアップしやすくなっている。人族が豪運スキルを百年持っても今のチャロの豪運のレベルに到達するのは無理だろう。
だが賭け事の場だったら、しかも魔族だったらそれが可能になる可能性がある。まぁ実際にチャロの豪運スキルを無効化したらしいし、可能だったんだろう。
賭け事の場だったらチャロみたいな豪運持ちの人族はターゲットになるだろし、チャロはスキルのおかげで助かったが、人族が散財して無一文になったら豪運スキルを殺して奪えばいい。人族の国も、魔族の国も一緒で金があれば何でも揃う。魔族領で見つけた豪運スキル持ちの人族は全て、ここラクレシの街に集められているんじゃないだろうか。宿を取ったら朝一番でこの街を出るんだ、そんなことを気にしてもしょうがない。
ラクレシの街に入れば、誰一人いなく、衛兵すらいない。綺麗な街だなとゴミは一つ落ちていなく、全ての建物は白一色だ。街に魅入っていると地鳴りのような歓声が闘技場の方から聞こえてくる。まさか全員カジノに行っているのか?
馬車から店を覗くと、店員は居るようだ。でも服がボロボロで触れたら破れそうだった。
「ラクレシの街は奴隷の街だよ」
俺がキョロキョロしてるのが気になったのか、ソフィアが奴隷の街だと言う。奴隷? カジノがあると言うなら依存者も出てくるだろう。金が無くなった後の末路か、チャロだってソフィアに買われたしな。
「あと、お面、着けといてね」
おぉ、忘れていた。手の届く範囲に置いてあるお面を荷台から腰の回転だけで持ってきて、お面を着ける。ソフィアは俺と話したくないオーラを全身から出しているのに、俺が忘れていた事を声で教えてくれる。
「ありがとう、ソフィア」
ソフィアの方を見ると、ぷいっと俺と同じ方向に向いていたが、耳が赤に染まっていた。
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