幼なじみとモテ期!? ハーレム主人公。
俺は人族売り場があることはしょうがないと思っている。ここは魔族領で、人族の領域ではないんだと思い知らされた。俺は人族に対する感情が豊かな方じゃないから、そう思うんだろうか? とソフィアとチャロを見ていたが二人は用は済んだと人族売り場に振り向かないで歩き出した。
チャロを買ったことで、言葉がわかる人族たちの目に一筋の光が入った。でもすぐに店を後にするソフィアを見て、俺たちが店に来た時よりも絶望的な沈んだ顔になって目から光が消えていた。檻からの一言、しぼんだ声から「助けて」という言葉が、これほど耳に残ったのは初めてだ。
宿まで三人とも無言だった。二人部屋に入ると俺とソフィアはお面を外し、壁に掛ける。ソフィアはベットに腰を下ろし、両手で頬をパシンと叩いた。俺もソフィアの横に腰を下ろして笑って向かい入れる。
「ライヤ、僕はあの店を買い取れるぐらいのお金があるのに、見捨てたんだよ」
「そうだな」
「私は助かったけどね!」
「チャロは黙ってて」
俺がソフィアに相槌を打ったら、扉の前に立っているチャロが言葉の間に入り、ソフィアに冷たい声で黙れと言われて、チャロはシクシクとわざとらしい演技をして床に座った。
「俺にしてみたら他人事だが、ソフィアだって、チャロだって、あの助けての声を忘れるのは時間がかかる事だって俺は知っているつもりだ。それに金で解決出来ることは無くならない。また第二の人族売り場が出来るだけだ。この街だけであんなに繁盛している店が一店舗だけとは限らない。無駄なことに金を使わなくて良かったな」
俺の肩にピトッと身体を預けてくるソフィア。俺も最低なことを言っている自覚はあるけど、他人事の俺にしか言えない事だ。ソフィアが言うことはないだろうが、俺が先回りしてソフィアに正義感しか与えない。
シーンと静まり返った部屋で、肩から伝わるソフィアの温もりを感じて、俺の他人事の言葉が、真実だけを伝える言葉がどうしても人の温もりを感じない。俺の出した答えは、人が出す答えじゃないんだろう。
「ライヤごめんね。僕の正義感に付き合わせて」
「俺は幼なじみだろ。遠慮すんな」
それをソフィアは分かってくれるから、俺が合わせないでいられる。しかも感情を代弁してくれるという幼なじみだ。このぐらいの悪感情ぐらいは俺が被ろう。
ソフィアはスっと腕に手を置いて、俺との距離を少し開けた。一回二回と深呼吸するとゆっくり俺の方に振り向いた。俺もベットに片足を組んで上げて、ソフィアと向かい合う。
ソフィアはベットに膝立ちをして俺と目線を合わせると、俺の両肩に手を置いて、にじりにじり近づてくる。ソフィアは太陽の匂いと清潔感のある匂いが混ざりあった優しい匂いがする。それをダイレクトに感じる距離まで近づいた。
ゴクリと唾を飲み込んだ瞬間に、ソフィアが艶めかしく流し目で目を閉じる。途端に俺に主導権が移り、意識はソフィアのピンク色の唇に向かってしまう。唇に集中しすぎて手の先まで敏感になったように感じた。俺はソフィアに身体を抱き寄せて……。
「まてまて、私がいるんだぞ! 場所を考えろ。私はライヤの事は親友と思ってるが、アイラ、ルーシー、エリアーナ、アリエルはどうするんだ?」
チャロの言葉でソフィアの顔から目をそらし、距離を置いた。組んでいた足をベットと外へ置いやる。そしてチャロを見て。
「アイラ、ルーシー、エリアーナはまだわかるが、アリエルは男だぞ。しかも勇者だ」
「それがなにか関係があるのか? 好きになるのに性別は関係ないだろ? 職業がなにか関係があるのか?」
チャロは本気の言葉しか持っていない。それもそうかとチャロの言葉にいつも俺のちっぽけな考えを広げてくれる。アイラ、ルーシー、エリアーナ、アリエルが俺のことを好きは何かの間違えだろうけどな。
「ライヤのバカ。もうそのライヤが好き好きな四人のところ行ってしまえ!」
ソフィアの声が震えていた。俺は後ろへと顔を向けるとバフっとソフィアがベットにダイブしてベットが軋む。
なにか怒らしてしまったみたいだ。唇を奪えばよかったのか? 違うな、他に好きな人がいると言われて止めたことがソフィアは気に入らなかった、そんな具合だな。
「俺、ハーレム主人公なの!?」
二十歳になり、やっとモテ期が来たようです。
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