幼なじみと散歩!? 感謝されたよ。


 魔族領では人族の領域みたいに近道は出来ない。知能が低い人族と魔族が出るからだ。だから街を巡って魔族の国に行くしかない。野宿は絶対に避けねばならない、朝なら反撃もできるが、夜はキツい。

 それは魔族でも同じらしく、レリッコの街から馬車で六時間ぐらいしたら街が発見できた。国まではこの道のりが続くだろう。


「ライヤ、ルシャの街だよ。ここで一泊しよう。仮面は付けてね」

「あぁ」





 ルシャの街に着くと、宿を取った。馬車も宿に置いて、俺はソフィアとブラブラと散策を行う。本当に人族の街と変わらない。表の屋台も焼き鳥か、トカゲ焼きの違いだろう。

 ソフィアの顔以上の真っ青なカエルの串刺しの屋台に魔族が列をなして並んでいた。そんなに美味いのだろうか? 匂いは美味しそうだ、焼くと色が抜けてコンガリとキツネ色になる。興味はそそられるが、毒があるんじゃなかろうかと手が伸びない。


 ソフィアに聞いたら魔族の食べ物には人族には毒な食べ物が多いらしい。でも真っ青なカエルは毒がないとも言っていた。


「助けて」

「ギャルギゲルゲロ」

「だすげでえぇ」

「ギェギィゲロウ」

「たすけてよぉ」


 人族が店先の前で並べられているのを発見した。店の中を眺めてみるとケースに入った人族が大量に展示してあった。俺はまた店先に出してある人族を見る。大人子供関係なしで、男女も関係なし、ただ服は着ている。しかも言葉が分かる人族もいる、知能が低い人族だけではないことが衝撃的だった。この店は繁盛しているのか、魔族が出たり入ったりしてて、そのループは途切れることは無い。

 店から出る魔族は全員透明な袋を持っていて、袋の中には箱が見える。その箱の大きさは大人の顔が三個入るかなというぐらい。

 人族のケースの下には何かのタグがあり、よく見てみるとスキルの名前があって、値段がついてあった。一つ一つのケースに違うスキルの名前があり、持っている数や、スキルのレア度で値段が決まっているようだ。


「へぇ、魔族は人族を丸々一人食わなくてもスキルを獲得出来るのか」

「魔族は人族を殺した時にスキルを奪えるんだよ。食べるか食べないかじゃない」

「じゃあ魔族が出てきた時に持っていた袋は? どういうことなんだ?」

「普通に食べるんだよ。スキルを買ってもらって、余った肉を売る」


 あぁ、普通に食べるのか。人族を殺してスキルを獲得、余った肉を売る、ボロ儲けじゃん。だから魔族に捕まる人族がいるから、女神は目で見ないとスキルをプレゼントしないのか。タグを見ればわかるのが、知能が低い人族の中でも良いスキルが割とある、でも言葉がわかる人族の方が良いスキルも多いが、スキルの数が多い。俺は少しだけ世界の真実を知った気になれた。


「あんたら人族でしょ! 助けなさいよ!」


 女の人が檻を揺らし、俺に聴こえるように大声を出した。女はロングヘアの茶髪を存分に爆発させ、横の知能が低い人族のように腰を丸め、そして汚かった。

 仮面をしてたらお偉いさんとわかるのに、よく助けを求めれるなと思ったが、ここに居ても最終的に死ぬだけなので女の人は賭けに出たんだろう。それか仮面のことを知らないか。俺が魔族だったら店員に言って躾をちゃんとしろと怒鳴るところだが、この女の人は運がいい、俺は人族だ。店員に言うのは勘弁してやる。


「で、お前はなんで捕まってんの?」


 チラリとお面から素顔を晒し、またお面を付ける。


「なんでライヤが? じゃあそのちっこいのはソフィア! ソフィアねぇお願いします。私を買って!」

「いや」


 ソフィアはお面越しでも嫌悪感しかなく、俺の手を握ってスタスタスタと人族売り場から去ろうとする。が、檻から手を伸ばした女から捕えられる。

 タグのスキル欄には皿洗い1、大食らい1、皮剥き1、そよ風魔法1、袋詰め1、体操1、棒術1、服従1、主の恩恵1と書かれていた。値段が子供でも買えるぐらいの値段だ。


「お前の豪運はどこいったんだ?」

「魔族のカジノで勝負していた時なんだけど、賭け事で当たりがない勝負に全賭けしちゃって、なにかの間違いと思って自分まで賭けたら、あっという間、檻に入れられて店の前で売られ始めたのよ」

「だからアイラしか国を守ってなかったのか。カジノってお前、聖騎士団に入ったんじゃないのか?」

「ライヤ聞きなさい! 私は聖騎士団団長よ!」


 聞きなさいから腰を伸ばして、狭い檻の中で偉そうに胸を張る。俺は脳内でデデンと効果音が鳴った。そして女の人は頭をぶつけていた。


「団長なら檻を壊して逃げればいいじゃん」

「バカねライヤ。私は武器がないと普通の運が良いだけの女の子よ」


 ソフィアがはぁ、とため息を出して店に入った。店から出てきたら右手に鍵を、左手にはリードを持っていた。

 鍵で檻を開けると、女の人にペットのようにリードを付けた。


「このチャロ・ラックレイを手放したことを後悔したらいいわ」


 チャロは檻から出られたのが嬉しいのか、店に向かって後悔しろと言った。


「店員には感謝されたよ」


 ソフィアがチャロのことを鼻で笑った。




【チャロ・ラックレイ】

スキル】 EX豪運 EX最武術 EX隠蔽体質 EX女神の加護


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