幼なじみの勘!? そんな感じ。


 海の匂いがする。磯の……高級な塩の匂いだ。周りは船以下は何も無い、どこまでも続く海。そして豪華な船だなと思う。このぐらい大きな船じゃないと魔族領には入れないのか? ソフィアが高い船を選んだのか? 人族の領域から魔族の領域に行けるのは金を持ってる貴族しかいけないとソフィアが馬車で言っていた。そういうものかと思ったが、ソフィアを連れて行かなかったら、こんなに早くは魔族領にいけなかった。金もなかったし、随分と俺は旅について甘く考えていたみたいだ。


「美味い! ライヤもどう?」

「ありがとう」


 俺は今、船上パーティーの真っ最中だ。海風に当たりながらソフィアが持ってきた皿から肉と野菜と乳製の固まった物を挟んだ柔らかいパンも取って食べた。

 あっという間に食べ終わり、凄く美味いと二枚目の肉と野さ……サンドイッチを皿から取る。太陽が真上にあり、鳥たちも船に追従する。鳥も世界を渡るのだろうか。鳥を眺めて、こんなに旅で満喫したら明日にでも死ぬんじゃないだろうかと思ってしまう。

 海を眺めて、もう三日だ。俺には珍しい光景で飽きることはなかった。客室も豪華だったが、一日中ボーッと海を眺める。ソフィアは船の中を探検している、昼のこの時間ぐらいに皿を持って現れる。美味しいと俺が腹を満たすと、探検に出かけるのだ。


「行ってくるね!」

「あぁ」


 落ち着きがないのも、個性ということか。二人っきりの旅も悪くない。もうそろそろ船が魔族領に到着する頃だろう。朝のアナウンスでは朝には到着すると言っていた。もう昼だぞ! と怒り出す客も見ていない、のんびりと気ままな旅だと客も分かっているのだろう。





 魔族領に着いた。船でアナウンスがあり、階段を使って降りる。港へ降りるとソフィアがうぅ〜と両手を上にあげて、俺を待っていた。降りたら降りるで船の上よりも地面が良いと感じる。一度行けば転移できる俺でも、もう一度乗ってみたいと船の魅力に取り憑かれた。


「この場所はどういうところなんだ??」

「ここはね、レリッコの街で魔族が人族に友好的な街だよ。知能が高い魔族しか街や国を作らないからね」


 ソフィアが言うには友好的な街らしい。昔から聞いていた魔族は見たら殺せだった。俺は危険が迫らないとそんなことはやらないが、人族よりも魔族の方が危険度は高いと思っている。


「へぇ、人族にも友好的な魔族がいるのか。ここにいるのは貴族のお金持ちしかいない。金を持ってるから狙われないと思ったが」

「友好的な魔族もいるけど、人族にも魔族は見たら殺せ! みたいな野蛮な人がいるじゃん。それと同じ数だけ魔族にもいると思った方がいい」

「それって……」

「だからエイリーナがいる魔族の国には、人族を見たら殺せ! って言う野蛮な奴が多いってことだよ」


 どこの国でも、奥に行けば奥に行くだけで、凝り固まった正義感が顔を出している物だ。種族が違うだけで何で争うんだろうか? 食べる物が違う、肌の色が違う、目の位置だって、相手には角が生えてるかも、羽が生えて空中を飛ぶことが出来るかもしれない。相手のことを尊重する頭がある、コミニュケーションが出来るなら簡単な事だけ思う。でもこの人族と魔族を作った奴に言いたい、何を間違えて魔族が人族を殺してスキルを奪う形にしたのか。

 昔から考えていたんだ、何で人族は魔族と勝てたのか。魔神が人族を守っていたと聞いた時は、そうかと納得がいった。魔族が人族を殺して力を得る、人族は魔神に守ってもらい力を得る。魔神は魔族から人族を守り、魔族も人族から守っていた。これが魔族、人族、魔神の俺が納得した構図だ。

 魔神を殺せば争いが起きることは明白、だったら争いを望んだ者がいた。


「ねぇ、なに考えてるの?」

「考えすぎて脱線してたっぽい」

「ふ〜ん、僕にも教えて」

「人族と魔族と魔神の関係について、かな」

「随分と難しい内容じゃないか? 魔神が入った昔話はよく出来ていた。僕たちは昔を知らないから考えたって答えは出ないよ」


 ソフィアには敵わない。俺たちは昔を知らないか、そりゃそうだ。


「でもライヤと繋がっている魔神? ウンディーネちゃんは僕たちを守ってくれてるような、そんな感じ」


 上手くは言えないけど、とソフィアはレリッコの街に走って行った。ソフィアの勘は当たるから、ウンディーネは俺たちを守ってくれているのだろう。それについてはお墨付きを貰ったと思っておこうかな。

 それとウンディーネちゃん? 俺と繋がっている魔神は女性なのか?


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