幼なじみとアイス!? あ〜んして。
死体を燃やして一週間はだった。今日の朝気付いた事だが、川の魚が美味くなった。連日食っていたらさすがに飽きて、獣でも狩ろうとしていた時の事だ。タンバクな魚の身じゃなく、川魚から濃厚な脂の旨みが出ていた。ソフィアが魚を食べたら海が近いと言っていた。海が近いなら、もう少しでサーザルの街だ。
馬車で丘をのぼり、木々がひらけた。海の水平線が見えて、馬車からサーザルの街まで草原が広がっている。見下ろした街はここから細部にわたって見えた。
でも街が見えたことは見えたのだが、馬車で一時間はかかった。こんなに小さかったか? と街に対して思っていたが段々と近づくとその大きさが前と変わってなかった。俺が住んでいた、住処はないんだけど、俺の国のような門が半月のように囲っている、あとの半月は海側だ。その海側の港にはデカい船が四隻もあった。港で思い出したがサーザルの街では海の幸が人気がある。
門は聖騎士が守っていて、それも昔と変わってない。勇者の剣があるから警備は厳重と言うが、聖騎士は代わる代わる仕事と偽って遊びに来ているのが現状だ。聖騎士は国の最高戦力で休みは無い、こう言う抜け道が無いとやってられないんだろう。
門に入るとソフィアの顔だけで素通りだ。前の貴族街の時も思っていたが、それで良いのか聖騎士と思っていたら、ソフィアがネックレスを外して見せてきた。
「これがないと門を通った瞬間に女神のイカズチで死ぬんだって」
「なにそれ怖。だからソフィアは素通りできるのか? でも俺は持ってないぞ」
「衛兵が管理してる門はそういう機能はないんだけど、半径何メートルかな? 覚えてないや。これを持ってる人の傍だと入場の権利が与えられる。僕もくわしくないけど、そう聞いたよ。普通は紙に一時的に解錠のスキルを持たせるんだって」
それならギルドマスターだからじゃなく、貴族も聖騎士もそのペンダントを持っている。だからルーシーも門まで俺を送ってくれたのか。女神のイカズチってなんだよと、俺が女神のイチゲキを小馬鹿にしていると後ろからドンッ! パラパラと大きな音が鳴り響いた。後ろを見てみると、門の傍で馬車も人も真っ黒に焼けていた。俺は前を向いて、海の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
サーザルの街にもギルドがあって、ギルドの前でソフィアが降りたので、俺も降りた。ギルドの扉からロウ爺が姿を現す。
「えっ?」
驚く俺を他所にロウ爺はソフィアに頭を下げる。そして頭を上げると馬車の方まで行き、スっと馬を顔を触ると馬車が消えた。そしてまたソフィアに一礼すると、ロウ爺も消えた。
「転移があったら連れてきて貰えばよかったな」
「無理だよ、ロウ爺は未来が見えてるように動くの。だからこっちからの頼みはしないの。最初からロウ爺が転移したいと思ってたら、もう僕たちは三週間まえにサーザルの街へ着いてる。まぁ、ライヤはロウ爺から嫌われてるしね」
「なんで?」
「ロウ爺が嫌ってそうだったから、かな。嫌っていると言っても不思議な感じ、ライヤの存在自体が見たくないって感じかな」
曖昧な言葉で嫌っていると言われると、なんかへこむ。ソフィアの勘は当たるからな。見たくない……か。俺はそんなに気にしてないはずなのに、ズキリと心に深く傷がついたような気がした。
「久しぶりだね〜」
ソフィアが勇者の剣のまえで勇者のアイスを食っている。アイスはサクサク食感の手に持てる器に牛乳のアイスをトルネードに固定して食べるという画期的なアイスだ。勇者の剣のビスケットも付いている。肌寒いこの季節に牛にゅ……ソフトクリームを食べる女子の気持ちがわからない。
銅貨一枚で勇者の剣を引き抜けると商売している奴がいた。昔は怒られたのにな。でも俺も勇者の剣を引き抜く列に並ぶ。ソフィアは引き抜けるかもと俺を煽っていたが、銅貨一枚を犠牲に無事引き抜けることはなかった。クラスチェンジを行ったのに、勇者の資格はなかったようだ。今の勇者も昔は引き抜けなかったんだ、まだチャンスはある。勇者は男なら憧れを持つ職業だ。
夢にはまだ届かないとベンチに座った。ソフィアに「あ〜んして」と言われたので口を開ける。するとビスケットを駆使して俺の口の中へソフトクリームが入ってくる。肌寒い中でソフトクリームを食べるのが少しわかった。
「剣が! 勇者の剣が抜かれたぞ!」
誰かの声をもとに勇者の剣へ視線を飛ばす。ピンッと静かすぎる音が世界中で鳴った、そんな気がした。
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