幼なじみは美少女!? ……ん。
もうガランはこの旅ではちょっかいを出して来ないだろうと考えてた俺にソフィアが声をかけてくる。
「ねぇライヤ。ガランは一時は出ないと思うから村の人たちを埋葬したいんだけど、いいかな?」
「いいぞ」
「じゃあ、川辺へ」
ソフィアも、もう狙われないと思ったみたいで、村の人たちにせめてもの償いをしたいと言った。村の人たちは善人で操られただけとガランは言っていた。それならガランと殺した俺が悪いが、それでもソフィアは俺の殺したことの責任を半分持ってくれているんだろう、ありがたいことだ。責任を持たなくていいと言ったら怒られるんだろうな。
少し道を戻って子供たちの死体を持ってくる。そして川辺へ、村の人たちを馬車に積んで持っていく。大人も子供も合わせて四十三人いて、十回も馬車で川辺へと繰り返しで運んだ。もう日が傾いて、空がオレンジ色になっていた。
ソフィアは川辺へと積んだ死体を前に両手を向ける。そしてバチッバチッと両手から破裂音が鳴った。
「ファイヤーロール」
ソフィアが言葉にした瞬間に赤い炎が死体を覆う。少し香ばしい匂いがしてきて、俺は口を抑える。ソフィアは炎魔法も使える。炎魔法はこの旅で見せてもらった、
「スキルチェイン!」
炎魔法で出た赤い炎が青い炎になると、一瞬で死体も匂いも消え、川辺の石も溶け出した。その青い炎は役目が終わると自ら川へと入り、ジュウジュウと川の水を減らして消化した。
ソフィアは炎を見送ると、死体があった場所を向き、目をつぶって、両手を組みながら祈った。俺もソフィアの行動を倣う。
「さぁ、行こっか」
目を開けると、元気よく言葉を言い、振り返ったソフィアの目には一筋の涙が。人のために泣けるソフィアが凄いなと思ったし、人の為じゃなく、自分が仕出かしたことであっても、罪悪感はあっても、泣けないことがどうしようもなく他人事なんだなと思う。ソフィアが可笑しいのか、俺が可笑しいのかはここに二人しかいなく、この感情を持ったことがない奴が俺とソフィアに裁定をくだしたところで、ソイツが本当の他人事だ。でもこれだけは分かる。ここで涙を流した奴は美しいと。
「なんだよぉ」
「いや、なんでもない。ソフィアは美しい美少女だと思って」
「……そんなことは知ってる」
俺の視線に気づいたソフィア。美少女だと言った俺。ソフィアは鼻を鳴らし左手で目を擦る。涙の通ったラインが消えると、知っていると言葉にしながら馬車に向かって歩き出した。
色々あったなと、死体を燃やしたところから馬車で少し進み、夜になったので野営して、さっさと眠りについた。
「おっはよ〜」
鉛臭くなった藁をベットに寝ていると、昨日の憂鬱な雰囲気を吹き飛ばすようにソフィアが大きな声で朝の挨拶をしてきた。ガンガンと痛く鳴る頭を手で押えて起き上がる。ガタンゴトンと馬車は朝の陽射しを浴びながらもうすでに進んでいた。
いってぇぇ、と立ち上がり、ソフィアの横の操縦席に荷台から移る。
「よく寝れた?」
「ボチボチ」
俺は欠伸をし、虚ろな目でソフィアの言葉に返事を返す。涼しい風が頬を撫でる。気持ちいいと目をつぶる、と、肩に暖かな柔らかい感触があり、目を開ける。するとソフィアが俺との間を詰めてきていた。
「ねぇ、あの人の言う女神の話は本当かな」
「さぁな、俺たちには関係の無い事だ。それは俺と繋がっている神も俺と同じ考えだと思うよ」
「関係なくないよ。実際に本当に関係がない人たちが死んでるんだから」
加護持ちだから人のこともちゃんと考えられるのか、俺にはその余裕が羨ましいよ。そして正義な心は人の分まで背負おうとするから壊れるんだろうな。
「加護持ちが全て死んだらガランの目的は成し遂げられる。そして魔神という輩に人族は皆殺しにされる。これから加護持ちってだけで沢山の命を背負っていかないと行けなくなる」
「……ん」
「カッコつけるなよ、ソフィアは俺の感情を代弁するだけで精一杯だ、俺の心の負担を半分こするだけで精一杯だ。他人の心を背負って歩く方が無理がある。しかもだ、誰がソフィアを他人にやるかよ。お前が潰れたら誰が俺の傍で遊んでくれるんだ。加護持ちの前に、お前は俺の大事な幼なじみだ」
バッと、俺の方に誰かの視線が向いた気がしたが、俺は前を向いて、その視線に気づかない振りをした。
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