幼なじみと神様!? 力を貸せ。
俺を馬鹿にしてた奴が神から助言を貰ったら手を貸せってか。加護持ちを殺せということか? それなら俺は絶対に手を貸さない。
人族が神から領域を奪ったというのが本当なら可哀想だと思うが、俺からしたら他人事だ。人に興味がないというのも当たってる。だが人は他人のことにはどうでもいいと思うんじゃないのか? 占いを答えみたいな心理分析だな。最後の言葉は引っ掛かりを思える。
「水仙魔法は神の力?」
「そうですよ! 優しく清らかな心を持った水人の神、ウンディーネ様の力だと神は仰いました!」
ガランは左右に手を広げ、大声で俺の疑問は解消してくれた。水人の神ウンディーネ? 聞いたことがない。いや、違う。女神がこの世界に降りてきたのか? でもどうして?
「魔神で名前を持っている方は最高神です。そんなに居ないんですよ? 最高神の力を持っているなら、そのスキルから人族の憎しみが溢れてくるんじゃないですか?」
スキルから憎しみが? 溢れてくる? 何を言ってるんだコイツは。俺は知っている女神の最高神は母女神だった。俺は生まれた時から二つのスキルを持って、すぐに皿洗いスキルのレベルは女神の透視系スキルのレベルを追い越してしまって、女神から俺が見えなくなったと思っていた。だからスキルが貰えなかったと……俺の皿洗いスキルが水仙魔法の隠れ蓑だとしたら、女神から俺を守っていた?
「まさか」
鼻で笑うと俺はボソリと口に出した。
俺の皿洗いスキルのクラスアップしたのが母女神なんだし、考えすぎか? クラスアップした時も俺を助けるためじゃなく、加護持ちを助けるためにしょうがなくやったと思う。奇跡的な状況だった、加護持ちがいなかったら俺は死んでいたと思う。クラスアップする以外に水仙魔法へ至る道が存在してたということか? そんなことはあるはずない。
人族が神から領域を奪ったというのも、実際は女神が神から領域を奪ったという見方もできる。女神は魔神が邪魔だった? それは何故? 俺に神の力を持たせた理由があるか?
「俺に力を授けた理由があるのか?」
「それはウンディーネ様に聞かないとわかりません。でも神の力は神に繋がっています。少からず貴方様は神に影響されています」
神に繋がっている? そうか、あながちガランの言った事は間違いではなかったんだな。水人の神ウンディーネが人族を憎んでいたらその感情が神を通して俺に流れてくるのか。俺は人族に興味がないというのは、何故かウンディーネのせいにしたくなかった。これも神と繋がっている影響かも知れない。
これも聞いたからそう思うだけだと思う。本当かはわかんねぇのにな。
両の手で聖剣を持つ。風が冷たく、息をする。右足の爪先の違和感を地面に擦り合わせて、無かったことにした。今日は腹の具合をちょうどいい。水仙魔法のオーラも身体から出ている。
ガランが言っていることが本当なら、水人の神様よ。人族が憎いか? じゃあ、俺には力なんか貸さなくていい。
「コイツの言っていることが嘘、本当かは関係なく、ムカつくなら俺に力を貸せ」
ボソリと呟く。すると水仙魔法のオーラが全身を覆う炎かと見間違えるように、止めどなく溢れ出た。水人の神様も俺とウマが合うらしい。
俺はガランに言葉を投げかけることにする。
「水人の神様のお告げだ。死ね」
ガランは俺を睨むと言葉も無しに右足を出し、左足を出す、繰り返し。俺の両の手は剣へ、下段に構えた。
すぐに接近してくるガランは右の拳を構えて、俺に向けて撃ってくる。聖剣はどうしても赤くオーラの纏う拳に負けて、吹っ飛ばされる。
地面に足がつくと、地面を引きずる。引きずりながら、ガランの追い討ちとばかりに拳を連続して撃ってくる。なんで俺が吹っ飛ばされるのか不思議でならない。最高神の神の力なら名無しの魔神の力なんて……あ、オーラを剣に纏わせてなかった。こういう戦闘は初めてだからな。すぐに青いオーラを剣に纏わせる。
ガランの右拳を青のオーラを纏った聖剣で弾いた。弾いただけなのにガキンッ! とも鳴らずにガランの右腕が吹き飛んだ。するとガランが足を止めて、距離を取った。
「私のこの神は攻撃力と防御力に定評がある魔神なんですけどね。弾いただけで右腕を失うほどの力とは。さすがは最高神の力といったところでしょうか」
俺は顔には出さないが俺も驚いていた。
「魔神のネームレスでは相手になりませんね。勉強になりました。次にやる時は名持ちの神同士で殺し合いをやりましょうか。仲間になってくれるなら別ですけど」
「逃がすと思ってんの?」
俺は水平に剣を振る。青いオーラがガランを捉えて、首を切った。水仙魔法の全体魔法。
「恐い恐い、ここに居たら命がいくらあっても足りないですね。ごきげんよう」
だが首を切ったはずなのにガランは口を開く。ごきげんようと言って地面に倒れた。俺がガランに近付いてみると、ガランはガランじゃなく、肌が皺だらけの村長だった。
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