幼なじみの優しい言葉!? わかりました。


 加護持ちの命を狙うガランとか言う男と会ってて良かった。と、嘘つくのが下手な馬鹿なガキで良かった。ガラン以外にも加護持ちを殺したい奴がいるのか? 現状で考えるとガランが俺たちのルートを先回りしてる可能性がある。いや、罠にかかったら儲けものと遊んでるだけか? それとも可能性があると分からせるために子供を使ったのか? 

 子供たちは幼なじみのために殺さなきゃいけなかった。女神に有効なスキルがあることは間違いない。ロウ爺に言われたことが本当なら水仙魔法も女神加護持ちに有利がつく。リーパーが現れた結界だって女神加護持ちはどうすることも出来ない。簡単に思いつくことにルーシーに預けるか、村の占領してる人たちを殺して村を奪い返すか、の二択だった。じゃあルーシーに預けた場合に、子供たちはどうやってルーシーを殺す? 答えは簡単だ。子供たちは女神の加護持ちを殺せるスキルがあった。これは最悪を想定した場合の話で、でもルーシーは強い。ちょっとスキルじゃダメージすら食らわない。それは加護持ちを殺したい奴らは知っているだろう。

 ルーシーが使ったスキルで、自分のスキルを他人に付与するようなそんな上位互換のエクストラスキルがあれば、スキルレベルを保有したまま加護持ちに有利なスキルを持たせたら可能になる。そんな夢のようなスキルがあればの話だが。だがここまでの夢物語的なスキルがないと、世界のバランスを担っている加護持ちを殺そうとは思わない。


「ライヤ、前に十人、十五、二十、三十七人。うん、三十七人いるよ。固まって、僕らを待ってるみたい」

「固まってるなら好都合、バラバラだと殺りにくい」



 ソフィアが数を確定した後、木々が生い茂ったら道からすぐに道がひらけた。ひらけたスペースに男、女、子供がさっきの子供たちみたい錆び付いた剣をもって待っていた。

 ソフィアが綱を引き馬車を止めると、俺は馬車から降りる。加護持ちを殺すスキルを持ってるかも知れないから、ソフィアはこの戦いに参加出来ない。相手を見回してみるとガランはいないようだが。


「おぉ、ちょうどいいところへ。村が襲われて逃げてきたんです」


 あっちから話を振ってきた。俺に言葉を投げかけて来たのは、白髪の老人だ。まだ腰が曲がっていないし、言葉もハキハキしている。片手で錆びた長剣を持っていることから、武闘派の村長と言われても納得する。

 子供たちを殺したことがバレていたら、すぐに剣を向けそうだが、それをしなかった。バレていないと見ていい。相手もソフィアのサーチを知っているだろう。国の中で起きたリーパーの件では結界のせいでサーチが十分に機能していなかったと思う。あの結界には加護持ちのスキルを制限する効果があったはずだ。効果がないならソフィアがガランを見逃してるはずがない。そして考えてみたらアイラはそんな中でよく生きてたな。考えがそれた……結界も無しに俺たちを見ることは自殺行為と言うことは相手も分かってる。


「それはそれは、さっき子供たちがいて、そのような事を言っていました。子供に聞いていたんですが、十五日? えっと、村を襲われたのは何十日前ですかね? さっき聞いたんですけど忘れちゃって。子供たちは凄くお腹が空いたと、積荷の食料をバクバク食べて、俺たちの分が無くなるかと思いましたよ」

「村が襲われたのは十五日ぐらい前です。忘れていませんよ、もうワシたちも腹も空いて空いて。なにか恵んでくださいますか? と、子供たちはどこにいるんですか?」


 白髪の老人はお腹をさすってお腹が空いたことをアピールすると、子供たち安否を気にし始めた。

 

「それなら心配しないでもいいですよ。俺は転移が使えるんです、ルーシーに……ルーシー・ラグレイシアに子供たちを預けてきました。知っていますか? 女神の加護持ちの」

「そりゃもう、ラグレイシア様のところにいるのなら安心です」


 村の人たちは白が……村長とハハハッと笑って子供たちが生きていることに安堵する。


「逃げてきたなら、あとは村を襲ったヤツらから村を奪い返せばいいんですね! 先に逃げていた子供たちには村の人たちはもう助からないと言った手前、俺は子供たちに謝らないといけないです。じゃ、ルーシーのところに全員送りますよ」

「いや、ワシら男どもはここに残って貴方様を手伝いましょう。女子供はラグレイシア様のところに送ってくだされ」


 村長は決意がこもった目をして言葉を並べた。俺も首を縦に振って了承した。


「わかりました。これだけ手伝いがあったら大丈夫ですね、村を一緒に救い出しましょう! そしたら回復していた方がいいですね。送る前に全員固まってください。俺のオーラは回復にも使えるんですよ」


 村の人たち俺の言うように固まった。俺は青白いオーラを両手に灯す、オーラを両手から空中に広げる。

 オーラが村の人たちをすぐさま飲み込みと「回復!」と俺の大声が響き渡って、ひらけたスペースは俺とソフィアと馬二頭だけになる。


 オーラが消える。すると、短い悲鳴と共にボタボタボタボタと人が雪崩のように降ってくる。


 ボタッと最後の一人の悲鳴が終わる頃に、その落ちてきた一人が立ち上がった。立ち上がった人物は首が横に曲がった村長で、手で首を戻し、手で顔を隠すように撫でると白髪は銀髪になり、シワシワの肌は綺麗になる。パッと服を手で撫でると黒のスーツになり、身長も伸びた。


「なんですか? 酷いじゃないですか、騙し討ちするなんて。加護持ちは助けてくれと言われたら助けるんじゃなかったのですか? 子供にも弱いと聞いていたんですけどね」


 ガランは目を細めて、俺に文句を垂れてきた。


 


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