幼なじみの正義!? 正しい。
ソフィアの言葉は俺にもダメージある言葉だった。学園にいる時に禁書庫に盗人が現れた。先生と他の生徒はアナウンスに従って逃げたんだけど、皿洗いマスターの俺は超がつくほどの馬鹿だった。俺たちで捕まえようと奮起すると、幼なじみの力を使い、俺が軽い怪我をして無事に盗人は捕まえた。その時にカオルに言われた言葉だった。
心にダメージを負った俺が復帰すると、ソフィアは馬車に乗っていた。そしてガキが頭を下げている。この状況を呆然と見ていると、草むらの影から続々と子供たちの姿が現れる。その大きさはまちまちだが前のガキよりかも年齢が低く幼く見えた。子供たちは女が三人、男が三人のソフィアが言った通り六人だ。
「私たちは村から逃げてきました。ここから北西に進むとある村です」
女では一番年齢が高いだろうなという女の子が口を開いた。北西というと川を越えないと行けない。その村の子供はなんでここに? という疑問が湧いた。逃げてきたが引っかかる。
「逃げてきた?」
「そうです、真っ暗のオーラ? というんですかね。その黒のオーラを全身から溢れ出した沢山の人たちが村を襲ったんです。炎のスキルで家を焼き、お父さんたちも抵抗してたんです。でも私たちはその状況で逃げてきたので、その後はわかりません」
「アイツら言ったんだ! 隠れた俺たちに向かって、銀貨を持ってくれば一人、金貨を持ってくれば全員解放してやるって」
女の子が言った言葉に頭を下げていたガキが続けた。俺は思ってしまった。村を襲ったヤツらはこのガキたちをわざと逃がしたと。
沢山の人たちが男だけとは限らない。お約束ならもう村の男も女もなぐさみ物になるだけで使い終わったらすぐに殺すだろう。奴隷は調教がいるし、村を襲った記憶が薄れるまでの調教はコストが掛かり過ぎる。貴族の令嬢なら分かるが、村一番可愛い子とカッコイイヤツは殺されるか生かされるか、ワンチャンスがあるぐらいだろう。
「死んでるよ」
「まだそんなのわかんないだろ!」
「わかるよ、女も男も子供だって、スキルという魔法が使えるんだよ? スキルがない世界なら女子供は生かされることもあるかもね。でもこの世界は違う」
ソフィアがガキに現実を突きつける。ガキの他の子供も殺されていることを考えていたのか涙を見せるが喚きはしなかった。
「ねぇライヤ」
「ダメだ」
俺の場所からはソフィアの顔はわからない。ソフィアは子供たちを見て、俺の名前を呼ぶ。俺はダメだと断りを入れて置いた。ソフィアは村を取り返したいみたいだ。でも村を取り返してなんになるって言うんだ、どうせ子供たちは大人がいないと生きていけない。そしたらルーシーに転移で子供たちを預けた方がいい。教会では親がいない子供の面倒をみてくれる。気になるのが村を襲ってきたヤツらの黒いオーラだ。もし魔族から力を借りているなら、強い可能性がある。正義の鉄槌を食らわせることでやぶさかでは無いが、ソフィアを守らないと行けなくなった場合、俺は子供たちよりも幼なじみと逃げることを優先すると思う。
俺は強くなった、でも強くても勝てるとは限らない。っとおかしなことに疑問を持つ。冒険の最中に子供に助けてと言われたら救けるのが普通だろう。
「おいガキ、村が襲われてどれぐらい経った?」
「……三日」
ガキは泣きながら言った。なんで俺たちに村が襲われてることを言ったんだ? まぁ、信じれる大人、良くしてくれた大人だったは分かる。沢山の人が村を襲って、それをどうにかしてくれる人は普通じゃない。
村が襲われたと子供たちに聞かされてから思いつくのは二通りある。まず子供たちを転移させてルーシーに預けること。次に正義感が強いソフィアと一緒に村へ殴り込みを掛ける。その二通りだ。どちらも加護持ちに深く入り込むことになる。
「お前らさぁ、加護持ちって知ってるか?」
「知らない」
「ガキ、頭を上げろ」
俺はソフィアを押しのけて馬車から降りると、知らないと言ったガキの首をガキの横にあった剣で切り落とした。その切られた首は笑っていた。呆然と見ている子供の首を剣で切っていく。
血の滴る剣を地面に刺した。
みぞおちからムカムカとしたやるせない感情が口からは出ることはなく、静かに胸辺りで停滞している。頭を上げなかったのは騙されるソフィアや俺を見て、笑いが止まらなかったからか。
ドクドクまだ脈を打つ首のない死体から三枚の金貨をとる、まだ全然暖かかった。そして地面の大袋を持って、馬車に乗る。
「ソフィア、すぐに駆け抜ける必要が出てきた」
「うん、ごめん」
ごめんと言った意味はそこまで考えが回らなかったということか? それならこんなに残念なことを考える俺がどうかしているだけで、ソフィアには考えて欲しくないなと思ってしまう。真っ先に正義が思いつく奴であって欲しいとそう思ってしまう。
すぐにソフィアは馬を出した。
「ソフィアは正しい」
ソフィアは正しい、そうやって俺はソフィアの背中を叩いた。
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