幼なじみの言葉!? 意味わからないよね。





 もう馬車で二週間ぐらい経った。俺たちの行く所はサーザルの街で勇者の剣を見る観光客で生計を立ててる街だ。俺たちの国からもだが、各地からも勇者の剣みたさに人が来て多く賑わうのがサーザルの街。

 俺たちの国から修学旅行でサーザルの街へ行った時は、街を四つほど経由した。経由をしない方が近いんだが、宿で寝れるし、食料も自分たちで用意しなくてもいい、夜は危ない、安全にサーザルの街へ行くためには経由した方が良い。


 馬車に積まれていた食料は底をついたというか、ほとんどが馬の飯だった。だから俺たちは昼飯に野生の獣を狩って、夜飯に川魚をとって食べた。ソフィアのサーチスキルは敵と認識した者の位置をある程度把握出来るようで、釣りとか狩りが非常に楽だった。野生の獣には悪いが水仙魔法スキルの練習にはなった、自分たちの食べる分しか狩ってないが俺は感謝しながら食らった。全体魔法が木を切らずに成功するようになったのは二日前だったような気がする。


「盗賊は出るのかな?」

「ライヤは盗賊なんか信じてるの? 盗賊をするだけのスキルがあったら冒険者になった方がいいし、スキルがなくて盗賊をやってたら逆に商人からボコボコにされるよ」


 馬車で街から街へ行くには大抵は商人がつく、そして商人は強い。そしたら盗賊は夢物語の話だけになる。母さんの昔話ではよく登場したなと思い出した。


「おい、そこの馬車! 止まれ!」


 おぉ、盗賊だ! と声の方を見れば、男の子が一人。いや、奥の草むらの影に二人。「前に出てる子の他に子供が五人いるね」とソフィアがボソリと言った。え〜と、草むらの影に五人いる!

 俺が感覚を修正したところで、前に出た男の子が子供ほどある剣を鞘から引き抜いて見せた。その剣は錆び付いている。錆びた剣はときに最悪の剣になり得る。擦りでもしたならそこが腐るはじめると聞く、回復系のスキルがなかったら相手にはしたくない。でもこっちにはソフィアがいるし、しかも相手はまだ子供だ。言って聞かせてみるか。


「お前はなんでこの馬車を狙ったんだ」

「うるせぇ、二人ともがスキル持ってないからだ!」


 そうかそうか、このガキか、他に鑑定眼は持っている奴がいるのか。ソフィアは隠蔽を使ってる事を考えれば、8レベル以下でソフィアの隠蔽のスキル以下であるとわかる。


「お前な、お父さんお母さんから常識を教わってねぇのか? 人族は成人になれば10のスキルを持つんだよ。俺とソフィアは成人だ。よ〜く考えろよ。しかもスキルを持ってないと馬車には乗らないだろ、な?」


 エクストラスキルが十個あることが分かっただろう。そして鑑定眼を使った時にスキルが一つもなかったら、隠蔽スキルを知ってればそれが一番最初に考えられることだ。まぁ、強い盗賊でも危険を犯してまで俺たちの馬車が狙わないというだけの事だ。

 お兄さんがここまで噛み砕いて説明したのに全然剣を下ろそうとしないガキ。しかも俺が言ったことにハテナマークを散らかしたような顔をして首を少し傾けた。この前のリーパーよりも知能指数が低いガキに当たってしまったなと思いなおして、望みを聞こうと思う。


「お前らは金か? 食料か? なにを望む?」

「オイラは、め、め、メシと金をおいてけ!」


 ガキにうるせぇと怒鳴られた辺りからソフィアがずっと俺を見てた。俺はソフィアの目を見て、頷くと馬車の荷台に行き、食料と金貨を見繕っている。


「おい動くな!」

「動かねぇと置いてけないぞ? 悪いが馬車はまだ使うんでな。馬車は置いてけない」

「え!?」


 ガキは何でビックリしたのか。

 数分でソフィアの身体半分ぐらいの大袋を持って、ソフィアが荷台から前へ来る、馬車を降りるとガキの横に大袋を置いた。そして三枚の金貨をピンピンピンと親指で弾くと、ガキはそれにつられて剣を離して金貨を追った。

 ガキが三枚の金貨をとってソフィアを視界に収める頃には、剣はソフィアに握られていて、剣を取られたことに気づいたガキはあわあわと動揺していた。ソフィアが剣の刃を撫でるとしだいに剣が鏡のように色を映していく。俺までその奇跡の御業に見惚れていた。


「錆びた刀を使ってたら、視界が眩むって、意味わからないよね。でもバカが死ぬのはいい、だけどバカは一人じゃ死ねないってカオルが言ってた。お前はどれだけの人を殺したら死ぬんだろうな」


 返すよとソフィアは綺麗になった剣を地面に刺した。


 その通りだよ。



 その言葉はカオルが俺に言った言葉……。






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