幼なじみと二人の時間!? 今日はここまでにしようか。
ソフィアの頭をポンポンと優しく叩いた。俺を支えることに必死になっているソフィアは顔を上げる。もう大丈夫と思ったのか両手を離し、一歩退いて距離をとる。
「女神になんのスキル貰ったの? カッコイイね!」
ソフィアの子供的なセンスにはカッコイイと映るのか。俺を全身を見てみる。モヤ? 蒸気のような白いオーラが身体中から立ちのぼって、一層濃い青白いオーラが両腕から出ていた。
スキルを持つとやり方が分かる。水仙魔法は魔法と言うが、戦い方は後衛よりも前衛を前提にしているらしい。効果はスキルを使ってみないと把握出来ない。
アイラがリーパーと距離をとった隙に、アイラに近寄り肩を叩く。と、アイラの頭がストンと下がり、力無く倒れそうになる。俺は急いでアイラを俺の身体に引き寄せて、お姫様抱っこをした。昨日ぶりに見たアイラの顔は目が閉じられ、右手に持った聖剣が光の粒子になり、散って消える。体力の限界以上に時間稼ぎをしてくれていたアイラに感謝すると、後ろを振り返り、ソフィアにアイラを預ける。
「頑張ったな。あとは俺に任せろ」
パリンパリンと道を塞いでいた六個の光の壁も無くなる。目の前のリーパーは俺の姿が変わったことに気づいて様子見していた。だから中途半端に知識を付けるべきじゃなかったな。
11、12、13、14と数秒事に水仙魔法のレベルが上がっていく。
すぐ俺に戦いを挑んでたら、ちょっと善戦できたかも知れないのに。
左手をパーと開いて手の力を抜く、そして顔の前で固定する。右手をグーと握り、腰の位置で構える。左足を半歩前へ、右足を地面と擦り合わせた。
俺はスキルが無くても、勇者アリエルと同じ修行を学園を卒業するまでやり切った男だ。今でも修行のキツさは思い出せる。
『ライヤ、まだ走り始めて五分だぞ。しょうがない……今日はここまでにしようか』
『型はいいよ。すきに振って。え? 三十分前に始めたばっかりだろ。しょうがない……今日はここまでにしようか』
『左手はこうやって、右手を腰の位置……ん? いや、今日は説明も終わってないんだけど。はぁ、しょうがない……今日はここまでにしようか』
金髪の美少年勇者アリエルに貰った力はちゃんと俺の中にある。ありがとうアリエル。
ふぅ、息を吸い、止める。右拳に力を込めれば込めるほど、青白いオーラが大きくなっていき、俺はこの場から動かずに右拳を前にやる。するとグウォンとオーラが波打ち、それが終わるとシーンと静けさが襲う。
ピチピチと俺の右拳からリーパーの方向に地面が割れると重力が横に動いたようにリーパーは後ろに向き飛んでいった。衝撃波だけでリーパーを吹っ飛んだのだった。家も何軒、何十軒吹き飛んだのか分からない。七つ目の道が出来たようだった。
俺は構えを解いた。吹き飛ばされたリーパーも起き上がって、グルっと俺と幼なじみ二人を七体のリーパーが囲む。右手でズボンのポケットをまさぐると皿の欠片を取り出し、その欠片を左手で撫でる。するとあっという間に一枚の新品な皿が出来上がった。皿洗いスキル100レベルで手に入れた俺の得意技だ。俺は無から有を創り出すことが出来る、皿のみ。これで食っていけると思っていたが、無から有を創り出すのは人前では使ったらダメだと勇者アリエルから言われた。アリエルが言うならそうなんだろうと皿を壊した時や、暇つぶしの時にしか使っていないかった。皿を左手で殴って壊し、また皿の欠片を撫でる。その繰り返し。
俺の目の前の地面に皿の破片が積もっていくだけの時間。リーパーは俺の意図が見えずに前に出ることを躊躇ってるように感じた。リーパーの誰かが前に出れば、一斉に前に出るというカタツムリみたいな動きで俺に近寄ってくる。
俺は皿を叩き壊したところでやめ、右手の皿の欠片を一本の剣にするイメージで。アイラのようなカッコイイ聖剣。
俺の全身から溢れる白のオーラが地面の欠片を青と白の粒子に変換させた。そして右手を中心に青と白の粒子が聖剣を形作る。青と白の聖剣。両腕の濃い青のオーラがその聖剣に移った。
「俺は勇者から剣術を習ってるんだ。本気出したら凄いんだからな。ソフィア! 頭を下げろ!」
一振の回転斬り。
ソフィアが頭を下げた瞬間に、回りを斬った。それは青いオーラが刃のように鋭くなり、聖剣の剣先を永遠まで長くする。俺が振り終わったら、リーパー達がそんなもんかと甲高い声を上げる。
そしてまず家が、結界が、青いオーラに包まれて消え失せる。リーパーは消えた後ろの家を見ると、骸骨なのに俺にはゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。すぐに青いオーラに包まれる。
「「「「「「グギギ、グギェ、ギ!!!」」」」」」
「コロシテ、ヤル、コロシテ、シテ、ヤル!! ヤル!!! ヤ……」
青いオーラに包まれたリーパーは苦しそうに段々透明になる。アイラが戦ってた奴が一番殺した人数が多いのか、壊れた魔道具のオモチャみたいでも、死ぬ寸前まで人の言葉で殺してやると言いながら消えていった。
「勇者の剣術を習得した俺に攻撃スキルが加われば、お前らなんて殺し合いのステージにもいけないかな」
思い出すのはアリエルと修行した時間。
『俺の剣術はスキルじゃないんだよ、攻撃はスキルに頼ることになるけど、ちゃんとした……ねぇ、聞いてる? 聞いてよ! ねぇ、ライヤ』
よし、終わった。
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