幼なじみの頭を撫でる!? そうだな。
リーパーの胸に突き刺さった光の矢はリーパーにダメージを与えたと思ったら、すぐにパラパラと崩れて消滅した。リーパーは俺の力にビビったのか俺とアイラを交互に見るだけで、動く様子はないみたいだ。リーパーのその様子を見て、俺は右腕を向けるのをやめた。
風で注意を向け、最大の一撃を最小だと言う。これだけで人には嘘か、本当かの二択が思い浮かぶ。リーパーはその二択にすら辿り着けない。殺すか殺されるか、リーパーは本当の世界にいた。誰もが嘘をつかない本当の世界にいたんだ。
骨が砕けたら痛い、仲間が殺されたら憎い、敵を殺したら雄叫びを上げるほど嬉しいか。仲間を撃った敵を殺したら復讐が成功したって仲間同士で肩を叩きながら喜ぶのか。リーパーじゃなくても魔族とはそう言う者だろ。強い奴は強く、弱い奴は弱く。そこには本当しかない、嘘は本当の刃で切り裂くまで、本当のことを言っているんだから。俺が強いのは本当で、俺が聖魔法をノータイムで放てる化物と言うのも本当だ。
「グェグェェ、グェェ」
リーパーはアイラと俺を交互に見比べるだけで身体はもう動けないでいる。このままアイラが体力を回復するまで待ってリーパーを倒してもらえばいい。結界に入ってどれぐらい時間が経ったんだろう。俺が白骨死体になる前にアイラには頑張って貰わないと。俺の目の前に淡い緑色のモヤが現れると、それは中心に集まりだし光る緑色の玉が出来上がる。そして一瞬にして俺の胸に光の玉が入ってきた。全身が淡い緑色に光り、すぐに消えた。その光景に既視感覚える。
「ライヤ! ライヤ!」
「お前出てきたらいけないだろ」
既視感をどこで見たと思い出していれば、ソフィアが隠れていた角から大声をだして出てくる。俺は横目でソフィアを見て、何から逃げているような慌てように疑問を覚える。ソフィアがいた角をよく見れば黒いマントが見えた。
「失敗しちゃった」
ソフィアが俺の背中に突進して、俺は突進を倒れないように持ち堪える。すると勢いが無くなったソフィアが走って来た方を見ながらボソリと言った事で、何故ソフィアが走ってきたのかが分かる。そのソフィアがいた道の角にはリーパーが居た。
そして一方だけじゃなく、舐めるような視線を感じて、ぐるりと辺りを見渡せば、円形の空いた広場に続くように出来た道が六通りある。その六通りともにリーパーがいた。人族の国に魔族が一体いても有り得ないことなのに、リーパーがこんなに居たとは思わなかった。仲間がいるだろうことを予測してなかった、予測することは簡単だったのに。アイラはリーパーを何体倒したんだ。
一体の時にやった方法は使えない。あれは圧倒的な力じゃなく、どうやったか分からない不思議な力だからこそ効果があった。しかも演出もなく、六体を同時に黙らせる方法が俺にはない。俺は弱い、皿洗いマスターを舐めるな。
『ぷぷぷ、皿洗いマスターって』
ん、頭に響く声。ソフィアを見て見るが声を出した様子はない、俺の服に顔が埋まっている。ソフィアが隠れた角から走ってくる前、俺に光の玉が入った。そして今思い出した、王の間でルーシーが使っていたスキルの事を、既視感を覚えたのはあの時のスキルと一緒だったからだ。
ソフィアの頭を撫でると、ソフィアは俺の服から顔を上げて「なに?」と口を開く。
「聖魔法を食らわせたあと、何かやったか?」
「後ろを振り向いたら遠くの方にリーパーが来てたから、この作戦は失敗するなって思って」
「思って?」
「ん? 女神に苦情入れるんでしょ?」
ソフィアはルーシーのリフォールというスキルで、俺に一定時間女神の加護が付けたということか。失敗したら苦情を入れると言ったが本気でやろうなんて思ってなかった。なんで気づかなかったんだろう。人は人智を超えた願いを叶える時は、女神様に頼む。最初からこうすれば良かったんだ、皿洗いスキルの他にもスキルをやれと。
ソフィアの頭を撫でて、そうだなと俺の言葉を切る。ここを凌げるだけのスキルを女神に頼んで貰うことにする。だって神が決めたルールでは、人族は成人までに最低限の
俺たちの生き残る方法が見えたらアイラに言う事がある。
【ライヤ】
スキル】 皿洗い1083 EX経験値増量 EX女神の加護1
「アイラ、ちょっとしんどいと思うけど、時間稼ぎよろしくな」
「わかった」
即答かよ。前のリーパーも大鎌を構えて、ヤル気十分だ。アイラも顔は見えないが、立ち上がり聖剣を構える。アイラの全身から神々しん光が漏れると光が地面を伝ながら六方向に散らばる。その散った先に光の壁が出現した。六体のリーパーは光の壁に阻まれて広場まで入って来れない。少しは俺がした時間稼ぎも無駄じゃなかったようだな。
俺は目を瞑ると女神に問いかける。
『八個のスキルの延滞金はチャラにしてやるから幼なじみを助けるスキルをくれ!』
『お前は生きているだけで私の汚点なのに、偽物の加護を使って言葉を交し、スキルをねだろうとは聞いて呆れる。生きる術を二つしか持たぬ者よ、聞け! お前にスキルはやらん』
『どうしてもか? 俺はお前がルールを放棄したことを水に流すと言っているんだ』
ジリジリと周波数を合わせるかのような耳鳴りがなって、すぐに高圧的な女神の声が頭の中に響いてきた。すぐに更新できたことに安堵し、どうしてもか? と尋ねる。
『残念、ルールは成人までだ』
『女神の連中は成人までにしかスキルを配らないとか言って、新しいスキルを勇者にはプレゼントしてるの知っているだからな』
俺が二つスキルを持っていることや、偽物の加護を使ってる事、考えている事まで分かっているのに、俺の交友関係は知らないのか?
『戯言を!』
『勇者のアリエル・マクリットは俺の幼なじみだ』
『馬鹿な! 私の未来視にはお前は友達になっていない』
そうかそうか、女神様のことが少しづつだが分かってきた。成人まで俺のことが見えていない。まさか皿洗いスキルのせいか? リーパーの鑑定眼は皿洗いスキルが見えていた。未来視や千里眼、透視系のスキルはスキル自体のレベルが高いと見えなくなるのか? で、女神様は見れないとスキルを付与できないと。ふむふむ、分かってきた俺が二つしかスキルも持っていない理由。だから「生きているだけで私の汚点」なのか。
『知ったからなによ! そうよ、私はお前にスキルをやれない。分かった?』
『じゃ俺はいらないんで、この場にいる女神の加護も受けたソフィアとアイラにここを打破するだけのスキルを与えて貰えますか?』
『えっ!? そこに女神の加護を受けた二人がいるの?』
えっ? まさか。
『こんなこと有り得ない、女神の目を曇らせるなんてどういう結界?』
お前の目は俺にしては随分前から曇ってたみたいだけどな。
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