幼なじみとのキス!? 女神に苦情入れないとな。
結界は術者に解除して貰うか、殺すかして解除しないと結界内からは出られない。それが分かったいるからかソフィアと俺はキンッキンッと音のする方に歩いていく。猫寝亭の看板の真下に来た。ソフィアを見ると軽く目を瞑りながら首を振った。結界内に居たらもう助かってないだろうと言うように。猫寝亭の調理服を着た白骨の死体が店の前で倒れていた。
一回二回三回と深呼吸して客側の扉を開く。毎日大きな声を出す客にうんざりしていたが、ここまでこの店が静かなことは無い、新鮮だ。大量にあるのは白骨化している死体でカウンターから調理場を見ると二人の死体。机も壊れ、大量の白骨死体に囲まれた料理は美味しい香りを漂わせ、美味しそうだと感じた。
俺は近くにあった壊れた皿を手に取ると、ポケットに入れた。六年も働かせてくれたマルコスさんには感謝しかないけど、何故が不思議な感覚で、明日になれば何時もの生活に戻れるんじゃないかと、この夢物語に生きている俺はどこか他人事で。一切の感情も湧くことがなかった。ソフィアも何も言わなかった。
猫寝亭を後にした俺たちは猫寝亭の通りを抜けるとキンッキンッとした音が近くなっていくとソフィアは走り始めた。ソフィアが前を行っていて、この先には広く空けた広場がある。音がしているところに目星がついた俺は走っているソフィアに追いついて手を引っ張り、壁に身体をつけ、円形に空いた広場を壁から覗いた。ソフィアも俺を盾にして覗くと、すぐにキンッキンッとしている鉄を叩きあっているであろう音が分かる。
「アイラが戦ってる。相手はリーパー?」
アイラは青みがかった紫の髪を優雅に舞わせて美しさすら感じる体捌き、剣から体全体に淡い緑色の光が流れている、身体能力はさらに上がっているだろう。これがアイラのエクストラスキル、聖剣召喚と聖剣術。
ソフィアがリーパーと言った相手の顔は黒フードで全体が分からないが骸骨だと一部見ただけで分かる。そして黒マントで全身を隠し、地面から伸びる足がない。絵でしか見た事がないリーパーと一致している点が複数ある。魔族の死神リーパーで間違えないだろう。聖剣と撃ち合っているのが大鎌。両手とも骨しかないのによく大人一人分ぐらいの大きさの鎌を振れるな。
アイラの聖剣の代表的な効果はスキル封じだ、魔族からしたら嫌な相手だろうな。常時発動のスキルのみとなる。でもリーパーは生物は生命を吸うと言われている、結界内にいる生物から生命を奪うのか? 魔族はスキル取得時に相性がいいスキルの場合、効果が相性がいい効果として上書きされると聞いたことがある。そして白骨化していた死体。アイラがいるのに時間がかかり過ぎている。
「おがぁぁさぁぁん」
「だずげでぇぇぇええ」
「たすけてよぉぉおお」
リーパーの後ろに幼い子供がいる。大声で叫ぶ子供や、黙っている子供、助けを求めている子供。その全ての子供が泣いている。数えて見ると八人の子供がいることが分かる。リーパーはこの子たちの生命は吸わずにリーパーの盾として生かしているのか。アイラが死ぬまで子供たちの恐怖は終わらない、アイラが死んでも子供たちは助からない。子供サイズの白骨化した死体がこの広場には多すぎる。魔族でもリーパーは知能が低いはずだった、それなのに相当人族の心根を理解している感じがした。
こんだけの人を大量に殺したら知能が上がるのか? スキルの効果か? そんな事より子供たちを何とかしないとアイラが本気で戦えない。
「ソフィアはリーパーを倒せるか?」
「う〜ん、無理だね。アイラが本気出してないみたいだけど、それでもアイラと互角に打ち合うぐらいスキルを獲得している魔族だよ、姿を見せれば切り刻まれて終わるんじゃないかな。僕なら子供たちがいなくても勝負にならないよ」
ソフィアにここまで言わせるとは本当にリーパーは強いらしい。今朝の惨殺な一件はリーパーだろうと当たりをつける。今朝の死体は生命を吸われている感じじゃなく、まだ生命を吸うスキルも持っていなかったか、聖騎士が来て途中で逃げたか。そしてそんだけ強いなら皿洗いマスターの俺が眼中に無いのも分かる。
女神の加護を持っているアイラとソフィアは良いんだが、俺は生命を吸われていく一方だ。サクッとアイラに勝って貰いたいんだが、どんだけ戦っているだ。よくアイラは見ると肩で呼吸している、限界が近いんじゃないか。
その時、アイラが聖剣を地面に刺して、片膝を立てた。
「キェエキェエキェエキェエキェェェェエエエエエ」
リーパーはその姿に気を良くしたのか甲高い奇声を発し、アイラを見下ろす。後ろにいた子供は糸が外れたみたいに八人とも倒れ、リーパーはマントで子供たちを隠す。そしてアイラに見せるようにゆっくりマントを外す。すると八人の白骨化した死体があった。最初から生きてなかったのか。こっからはアイラの顔は見えないが、肩が震えているのが分かった。
「ソフィア、アイラを助ける。協力してくれるか?」
「いいね。それでこそライヤだよ」
協力してくれるか? と言う俺の言葉に即座にハイを言える人物を俺は幼なじみしか知らない。普通皿洗いマスターなんかに何が出来る! から始まるもんな。
「失敗したら女神に苦情入れないとな。これはアイラの回復させるための時間稼ぎだ。まだルーシーのスキルしか使えないんだよな。聖魔法の他に魔法はどんなのがある?」
「運が良かったね、風魔法だよ」
「あぁ相当に運が良い。俺が出た瞬間、軽く風魔法。そして風魔法打ったらソフィアが出せる精一杯の聖魔法が頼む」
「僕の聖魔法じゃ全力でも倒せないよ」
運のくだりは何が良いのか俺には分からなかったが、適当に合わせる。手順を説明すると聖魔法で倒せないと俺を見上げて心配そうに眉尻を下げた。十分だとソフィアに声をかけて、広場に出ていく。
「おいガイコツ! 俺がお前を殺してやるよ」
リーパーが俺を見て、気色悪い甲高い声で鳴く。アイラは振り向かないが肩を見ると震えが止まっていた。
「イッコ、サラアライ、イッコ、サラアライ、サラ、アアライ」
「ほう、お前は鑑定眼を持ってるのか? 喋るほどの知能があって知らないのか? そうかそうか、じゃあ教えてやるよ。人族は成人までに神様から最低でも10のスキルを貰う。で? そしたらもう分かるよな。お前の鑑定眼に皿洗いスキルしか見えないと言うことは」
9個はエクストラスキルと思うだろうな。俺が右腕をリーパーに向けるとそよ風が俺とアイラとリーパーに吹いた。
「ダカラ、ドウシタ」
「少しでも動いてみろ、聖魔法の餌食だぞ」
「アッアッアッ、セイマホウ、ハ、アノオンナ二、シカモテナイ」
まさかルーシーの事も知っているのか? リーパーは大鎌を構えた。すると。
夜が一瞬にして朝になったと思ったら天から光の矢が吸い込まれるようにリーパーの胸に向かって突き刺さる。
「グアァァァァァァァアアアア」
「この聖魔法は軽い準備運動だと思ってくれていい。次に動いたら消し炭な」
お前の敗因は中途半端に知能をつけちまった事だ。
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